☆ 旭日旗がそのまま自衛艦旗として受け継がれた経緯 2008/04/14
by 伊勢雅臣さん
海上自衛隊の艦艇が掲げる旭日旗
=自衛艦旗)をご存じだろうか。
日の丸から16条の旭光が出てい
るデザインである。
各国の海軍軍艦は、それぞれの軍
艦旗を掲げるが、「自衛艦」は国
際的には日本海軍の軍艦であり、
自衛艦旗はその「軍艦旗」にあた
る。
軍艦は国土の延長とされ、軍艦旗を掲揚する艦艇に行き会った民間船は、自ら
の国旗を少し下げ、元の位置に戻す、という形で敬礼をするのが国際慣行であ
る。
実は、自衛艦旗は戦前の日本海軍の軍艦旗そのままのデザインなのである。海
軍が「海上自衛隊」、軍艦が「自衛艦」などと戦後の言い換えが進められた中
で、なぜそのシンボルである軍艦旗のデザインがそのまま護られたのか。
そこには、軍艦旗を護ろうとした人々の陰ながらの苦心があった。
昭和29年の自衛隊創設の際に、当時の反軍的世論を鑑みて軍艦旗のデザイン
も再考することとなり、米内穂豊画伯に図案作成の依頼が持ち込まれた。
画伯は悩み抜いた末、結論に至る。
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軍艦旗は、黄金分割による形状、日章の大きさ、位置光線の配合など実に素晴
らしいもので、これ以上の図案は考えようがない。それで、軍艦旗そのままの
寸法で1枚書き上げた。お気に召さなければご辞退いたします。画家としての
良心が許しませんので。
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“画伯の作品”は「創設する海自への影響」「国民感情」などを焦点に庁議に
かけられたが、保安庁長官は裁可した。
つまるところ、旗の持つ動かしがたいきらびやかさ、雄雄しさ、芸術性は、敗
戦で自信を失った関係者の心を揺さぶり、引いてはならぬ一線=誇りの存在を
気付かせたのではないか。
海軍魂の象徴・軍艦旗の消滅を惜しんだ海軍OBや芸術家、官僚らが期せずし
て心を一にし、阿吽[あうん]の呼吸の結果、軍艦旗を自衛艦旗として蘇生させ
たのではないか。
自衛艦旗を最終的に承認した吉田茂首相も「呼吸」を共にしたひとりに違いな
い。説明を聞いた首相はこう語っている。
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世界中でこの旗を知らぬ国はない。どこの海に在っても日本の艦だと一目瞭然
で誠に結構だ。海軍の良い伝統を受け継ぎ、海国日本の守りをしっかりやって
もらいたい。 [1]
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こうして日本海軍の旭日旗はそのまま海上自衛隊の自衛艦旗として引き継がれ
た。吉田首相の「海軍の良い伝統を受け継ぎ、海国日本の守りをしっかりやっ
てもらいたい」とは、多くの国民が共有する願いでもあろう。
= おわり =
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1.産経新聞 H20/04.03「【野口裕之の安全保障読本】軍艦旗救った画家の
良心」東京朝刊5頁
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