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―― 創刊号は300部
本講座の創刊号は平成9(1997)年9月6日。部数は300部だった。「まぐま
ぐ」から発行許可が出て、数日後に最初の号の配信作業をしたら、登録者数が
いきなり300人にも達していて驚いた事を今でも昨日の事のように覚えてい
る。
当時はメールマガジンが普及し始めた頃で、「まぐまぐ」が毎月のように「購
読者○百万人突破」などと表示する威勢の良い時代だった。初めてメールマガ
ジンなるものを知ったのは、そのわずか1、2週間前だったと思う。
これは面白い、現代日本の若者たちに語りかける恰好の手段になるのではない
か、と思って申し込んでみたのである。どれぐらい続けられるのか、とか、何
人ぐらいの読者を獲得できるのか、というような事はほとんど考えなかった。
やってみないと分からない、とにかくやれるところまでやってみよう、という
気持ちだった。
―― 子供たちの事を考えると
なぜ現代の若者に語りかけたいと思ったのか、定かに覚えてはいないが、今か
らその動機を再構成してみると、次のようにはなはだ勝手な魂胆であった。
私には二人の子供がいるが、当時はまだ長男が中学2年生、長女が小学4年生
だった。この子供たちが大きくなった時に、日本はどんな国になっているのだ
ろうか、とよく想像した。
もともと政治力も軍事力もないまま、今の経済力が失われて、米中二大国の狭
間で翻弄される一小国に転落してしまうのだろうか。さらには経済ばかりでな
く道徳や礼儀も忘れた野蛮な国になってしまうのだろうか、、、。
そんな斜陽の国で大人になると考えたら、無性に私の子供たちが可哀想になっ
た。多少の財産を残してやり、学歴をつけてやったとしても、そんな国に生き
る人生は悲哀に満ちたものではないか。
落ちぶれた母国なぞ見捨てて、アメリカのような新天地で生きるという生き方
もあるだろうが、4年間そこで暮らした私自身の経験からすれば、他人様の国
で少数民族として肩身狭く暮らす生活は、これまた別の悲哀に満ちたものであ
ろうと想像できた。
―― 自分勝手な魂胆
斜陽の一小国で大人になった子供たちは、こう思うのではないか。日本をこん
な惨めな国にしたのは、親の世代の責任だ、世界第2位の経済力という遺産を
食いつぶし、政治も外交も防衛すらも放置して、教育や文化、道徳を崩壊させ
た。
こんな風に言われたら、私は草場の陰でどのように子供たちに謝ったらよいの
だろう。また立派な文化的・経済的遺産を残してくれたご先祖様にも顔向けで
きない。
そう考えると、なんとかこの国が経済的繁栄を維持しつつ、政治力、防衛力、
外交力を回復し、健全な教育、道徳、文化を誇りうる国家になるよう力を尽く
さねばならない。
そのためには何をすれば良いか。国家百年の計は人にあり、という。子供たち
の世代に、一人でも多くの立派な日本人が育てば、一緒に力を合わせて国を継
承していけるだろう。
私の子供たちがどれだけ役立つかははなはだ心もとないが、少なくとも同世代
で立派な日本人が数多く育てば、国家は繁栄し、我が子供たちが幸福に暮らせ
る可能性はぐっと高まる。言わば、自分の子供のために他人様の子供をあてに
した、いかにも自分勝手な魂胆から本講座を始めることにしたのである。
―― 「国際人」でなく「国際派日本人」
次なる問題は、将来のわが国を支える立派な国民とはどのような人間だろうか
という事である。世界はまさにグローバル化の一途をたどっている。他国との
つながりの中で様々な問題が生じ、またその解決にも他国と力を合わせていか
なければならない。そうした中で日本の国益を守りうる人材が必要だ。
そういう活躍ができるのは、英語は流暢でも日本の事は何も知らず、また国益
の何たるかを考えようとしない無国籍な「国際人」であってはならない。
本講座を始めてからいただいたお便りの中で、次のようなものがあった。
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昨年夏に米国へ短期留学した際に、英語が上手く話せないことよりも、話す内
容、つまり、日本の事、国際問題、自分のアイデンティティについてしっかり
と自分の言葉で語ることができなかったことに大変ショックを受けました。
過去の歴史的事実について知らなさ過ぎる、今日本で世界で起こっていること
を『自分の』生きている世界のこととしてとらえ、自分の頭で考える、という
ことをしたい、と痛切に思いました。国際派日本人養成講座は、そんな私の想
いに応えてくれるものです。
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「英語の問題ではなく、話す内容の問題だ」との一節には、まさに我が意を得
たりの感を持つ。
―― 「わが国」との一体感を持った
また将来の日本を支える国民は、日本を「わが国」と呼ぶごく自然な一体感を
持ち、その共同体と自分自身の幸福とが深いところでは繋がっている、という
感覚を持った人間であろう。「この国」が駄目になったら別の国に移ればいい
さ、などと考えるような人間では、共同体全体の繁栄と幸福のために何かをし
ようと考えてはくれない。
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左翼系の教師の教育を受けて育った私は、自国に誇りを持つことができません
でした。しかし、日本は酷い国だとは思いつつも、どこか釈然としないものは
ありましが、国際派日本人養成講座を拝見してやっとハッキリしました。
日本人として誇りを持って良いんだな!と。しかし、だからといって奢らず、
謙虚な気持で生きていきたいと思います。私の周りにも以前の私のような人々
は沢山います。早く気付いて貰えるよう、微力ながらお手伝いできればと思い
ます。
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このお便りにみられるように、人間は自分の属する共同体を愛し、誇りを持つ
ことができれば幸せな気持ちになるのである。そこからさらに共同体に感謝し
自分もなにがしかのお返しをしたいという人間らしい利他心が生まれてくる。
こういう人が増えてくれば、共同体は繁栄し、その構成員も幸せになるチャン
スが増えるのである。左翼的な自虐史観教育により、多くの子供たちがこうい
う自然な愛国心・公共心を育てる機会を奪われているのは、重大な人権侵害だ
と思う。
以上をまとめれば、育てるべき次世代の国民とは、輻輳する国際社会の中で、
わが国固有の歴史伝統を根っことしてオリジナリティのある提案のできる人間
そしてその過程で他国との調和を図りつつ、自らの国全体の繁栄と幸福を「我
が事」として追求していける人間、である。そういう期待をこめて「国際人」
養成講座ではなく「国際派日本人」養成講座とした。
―― 国際派日本人に必要な良識と教養
したがって「国際派日本人」とは、子供たちや外国人に対して、自国の歴史や
文化を愛情を込めて語り(日本語やカタコト英語でも良いから!)、自らの仕事
やボランティア活動を通じて共同体の発展のために微力を尽くし、また選挙の
際には国家や国際社会の抱える諸問題に関して自分自身の考えのもとに一票を
投ずる人間である。
このような「国際派日本人」を養成するには、どのようなカリキュラムがふさ
わしいのだろう。国際政治は詳しいが、日本の歴史や文化は何も知らない、と
か、歴史はよく知っているが現代世界の諸問題には疎い、という象牙の塔の住
人であってはならない。もちろん各分野の専門家は必要だが、「立派な国民」
が持つべき共通の基盤としての良識と教養があるはずだ。
そのために、テーマは歴史、文化から現代社会まで、以下の六分野にわたって
幅広く取り上げる事とした。
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・地球史探訪‥‥我が国が近代世界の荒波をどう乗り越えてきたのか。「岩倉
使節団〜サムライ達の地球一周」「孫文と日本の志士達」など。
・人物探訪‥‥我が国を築き、支えてきた先人たちの足跡をたどる。「上杉鷹
山〜ケネディ大統領が尊敬した政治家」「二万人のユダヤ人を救った樋口少
将」など。
・国柄探訪‥‥我が国の歴史伝統、文化。「日本の民主主義は輸入品か?」
「復興への三万三千キロ〜昭和天皇の戦後ご巡幸」など。
・Common Sense‥‥外交、安全保障、国家、教育に関する国際常識。「国際連
合、三つの幻想」「学力崩壊が階級社会を招く」など。
・The Globe Now ‥‥国際社会の現状。「チベット・ホロコースト五十年」
「戦略なきマネー敗戦」など。
・Media Watch ‥‥偏向マスコミの実態。「自衛隊PKO〜世界の称賛、朝
日の懸念」「『従軍慰安婦』問題〜日韓友好に打ち込まれた楔」など。
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―― 中学生でも15分で読める文章を
上記の各分野で質の高い書籍や論文は数多くあるが、一般の大学生や若手社会
人など「普通の青年」たちが気軽に読めるようなものはそれほど多くはない。
分厚い本であったり、相当な予備知識を要求するものが多い。
しかし、国民の良識とは本来、長期の専門教育が必要なものではないはずだ。
義務教育を修了した程度の学力と、健全な精神があれば、誰でも身につけられ
るものでなければならない。
そのために本講座は、中学生にも理解できる平易な文章を目指し、かつ15分
程度で読める分量とした。幸いメールマガジンとはこれにぴったりのメディア
であった。だから、たまに中学生から感想メールをもらったり、本誌に読みが
なを振って小学校の歴史教材に使ったなどというお便りをいただくと本当に嬉
しい。
また、本講座で取り上げたテーマに興味を持ち、参考文献として挙げられてい
る書籍を読み出した、というお便りもしばしばいただくが、そういうところか
ら国民的教養をベースとした専門家が育っていってくれれば有り難い。
300号達成を機に、最近のお奨め図書リストを「JOG Booklist」としてホー
ムページにまとめたので参考にしていただければ幸いである。
―― 国際派日本人たちの息吹
こうして「国際派日本人養成講座」がスタートした。毎週毎週、悪戦苦闘しな
がら原稿用紙8枚ほどの記事を書き続け、いつの間にか300号。読者数は4
万人近く、ホームページのアクセスは毎週6、7千件、累計は87万件に達し
た。
毎週、何通か寄せられるお便りは何よりの励みとなる。「国際派日本人」とい
うタイトルのせいか、海外在住の日本人からのお便りをよくいただく。ひとた
び海外に出れば「日本とはどんな国か、日本人とはどんな民族か」と、必ず聞
かれる。
そこで初めて、自分の国の事をまったく知らなかったのだな、と気がつく。そ
ういうところに本講座を見つけると「干天の慈雨」という思いで読んでくれる
ようだ。たとえば、
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・アメリカに留学した女子高校生は、戦前の人種差別に苦しめられていた黒人
たちにとって、日本が希望の星だった事を紹介した号を英文レポートにまとめ
て、先生に誉められた。
・ロシア留学中の大学院生は、周囲のユダヤ人に、戦前の日本帝国のユダヤ人
保護政策を語って感謝された。
・カリフォルニアに留学中の学生は、知り合ったインドネシア人留学生が大戦
中同地で軍政司令官だった今村均大将のことを褒めていたのでびっくりしたが
本講座を読んでその理由が分かった。
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このようなお便りを数々いただくと、国際友好を深めるうえでも自国の歴史や
文化に関する教養は不可欠だとつくづく思う。そして、有り難い事に我が国の
歴史は、心動かされる逸話に充ち満ちている。
読者は、大学生から三、四十代の社会人が中心だが、時には小中学生や七十代
の年配の方からもお便りが寄せられる。「朝鮮殖産銀行の『一視同仁』経営」
という号では、戦前の朝鮮で教師をしていた父親の苦労を偲ぶことができたと
いう長文の感想をいただいた。
大東亜戦争に出征したお年寄りの方からは、本講座を、自分たちの思いを代弁
してくれるものとして孫に転送している、とのお礼をいただく。先入観を取り
払って、素直な心で歴史に接すれば、世代を超えた自然な共感が生まれる。二
通目に引用したお便りはその一例である。
国際社会を横糸とすれば、自国の歴史伝統は縦糸であり、その交点に現在の自
分がいる。祖国の歴史伝統に「日本人として誇りを持って」生き、現代の国際
社会の課題を「『自分の』生きている世界のこととしてとらえ、自分の頭で考
える」国際派日本人が、今や世界のあちこちですくすくと育ちつつある。
その息吹に耳を傾けていると、日本の新たなる夜明けは遠くないという気がし
てくる。
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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。