日本の食料自給率向上には
☆ 驚異の野菜《工場》 ―――――――――――――― 2009/05/14
                         by 馬場伯明さん

食糧自給率の低下・食の安全性・他の産業の低迷などから、最近、雇用対策を
含め、農業見直し論議が盛んである。農業へ参入する企業も増えている。

先に、農業の集約化・大規模化でコストダウンを図り、流通を簡素化し市場に
直結させ利益が得られる農業経営にする。そのために国は農家を選択し集中的
な優先投資=補助)をすべき。そうしなければ世界に対抗できないと述べた。
『食料自給率80%』のために」

成功例の一つとして、長崎県諫早干拓農地で40ヘクタール(町歩)を超えるレ
タスや馬鈴薯の露地栽培等を展開する長崎県雲仙市のH氏=農業生産法人松山
ファーム・松山弘保代表)の積極的な農業経営を紹介した。

AERA(2009/05/18 No.22号)が「農業バブルがくる」という特集を組
み、植物(農業・野菜)工場に注目している。

現在、工場は全国に約50ヶ所あるという。そのトップ企業は製鉄メーカー系
のJFEライフ(野菜事業部)。前身は旧川崎製鉄の関係会社であった川鉄ライ
フの子会社の神戸企業である。

1984(昭和59)年、水島製鉄所・阪神製造所等の緑化事業をしていた神戸
企業が、兵庫県でカイワレ大根の水耕栽培事業を興した。それ以来、成功に至
るまでには長い苦闘の歴史があった。

1995年からレタスに特化し、関東へ進出し10余年。水耕栽培の研究と改
善を重ね、無農薬の新鮮なレタス800万パック/年の出荷を達成し、200
9年度には売上11億円を超える見込みであるという。

茨城県土浦市に水耕栽培のハイテク工場がある。レタスは巨大なプールに浮か
べたベッド(マット)の上で育つ。水温・室温・光量(太陽光・人口光)は完全に
制御・管理されている。プールで働く社員は、(いわば)レタスを育成するイン
ストラクターともいえる。

工場では、季節・寒暖・風雨などに左右されることなくレタスが生産される。
製鉄所で培われた(温)水処理・熱管理・空調・化学等のハイテク技術が野菜工
場の随所に活かされている。

露地栽培は、太陽・雨・土による自然農業であるが、この工場は24時間連続
稼動している。水耕栽培だから土壌劣化の問題もない。信じられないと思われ
るだろうが、なんと、驚異の年間28期作である。

年間28回転、生育から2週間以内で製品(レタス)を収穫・出荷する。この生
産効率の高さで露地野菜に対抗し、高い設備費(3〜4億円)にもかかわらず、
投資を回収し、黒字化している。

露地栽培では、収穫は年2〜3回である。野菜工場は露地野菜の農業事業者に
とってライバルとなる。露地の田舎派か、ハイテクの都会派か。あなたはどち
らを選択しますか。

AERAの特集の見開き2頁の上半分に、全長100mの流れるプールの巨大
な野菜(植物)工場の写真がある。JFEライフの茨城県土浦工場だ。

AERAが紹介する。
┌--------
野菜事業部営業部長の川崎海[わたる]氏(61才)はこう話す。「高コストをカ
バーし黒字化するには、生産性の高い大規模工場、効率化(生産・物流)、安定
的な販路の3点セットが必要。それを素早く揃えたことが(当社)成功の鍵」
└--------
意気軒昂な川崎氏である。

思えば三十数年前、川崎氏は川崎製鉄水島製鉄所の生産管理部門で、共に仕事
をした仲間(後輩)である。酒・スキーなどもいっしょ。徹マンの思い出も懐か
しい。彼は冷静沈着な雀士であり、私は(完全な)カモだったが。彼は10数年
前に鉄鋼製品の販売部門から川鉄ライフの野菜事業部に転じた。

鉄鋼から野菜への業務の転換は、彼にとり「コペルニクス的転回」ともいえる
事態であったが、その苦労が今、実を結んでいる。全国のイオンの店頭にJF
Eライフの新鮮・無農薬のプライベートブランドレタスが並ぶ。

店頭でレタスを手にとってほしい。それが野菜工場生まれの「ハイテク製品」
と知れば、何か不思議な気がすると思います。

ところで、連休中(2009/05/04)「検証・食糧自給率40%の危機」という番組
があった。(TV朝日・スーパーモーニング)

石破農水相がインタビューに応じた。(ただし、自民党内農林族の反対があり
合意事項ではないと言っていたが)
┌--------
質問1:国の安全保障上必要な食糧自給率向上は?
回答1:50%。できれば70%にしたい。

質問2:農家への所得保障は?
回答2:全農家への支給は反対。コストを下げ付加価値を上げる前向きな農家
へ投資する。(中小山間地農家:例外)
└--------
回答にはおおむね賛同できた。日本農業の持続的発展の道のりは険しい。野菜
(レタス等)の生産においても、露地栽培と野菜工場生産の両方式は、ともに切
磋琢磨し、一段階上の「品質・価格(コスト)・納期(市場・物流)・安全」を究
め、世界に勝ち抜いてほしい。

そのために政府は、日本の食料安全保障の観点から、食料自給率の向上や食の
安全等を確保する長期的な視野に立ち、先進的な農業事業者に対しあれこれ余
計な「クチ(講釈)」を出さず、「カネ(資金)」を十分に出してほしい。それが
最善の対策である。

                           = おわり =
この記事は、メールマガジン「頂門の一針」誌より転載させて頂きました。とても真面目で面白い、素晴らしい無料マガジンで す。購読される場合はここをクリックして下さい。(←新しいウインドウで開きます)
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