日本の食料自給率向上には
☆ 食糧自給率80%のために(上) ――――――――― 2009/04/21
                         by 馬場伯明さん

本誌=頂門の一針に、加瀬英明氏の論が掲載されていた。「農業は国の基・豊
かな国土を生む」第1498号 2009/04/01。(以下「本論」とする)
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私は日本を蘇生させるために、農業政策を転換して(日本の)食糧(料)の自給率
【注】を(40%から)80%に引きあげることを提唱したい。
農業は日本にとって命の源である。
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ーーーと、大上段からの「提唱」である。

本論は、日本の農業が、工業などの発展・近代化の踏み台にされ荒廃したこと
を嘆きつつ、一方で、農業や農村が培った共生の精神や道徳律・和合する心を
評価している。ーーーこれに対し、「ごくありふれた意見」であり、「なぜそ
うなったのか、どうするのかという提言がない」という反論も予想される。

だが、私は、本論の「提唱」を真正面から受け止め、具体的に実現する道がな
いものか、探ってみたい――――。

まず、日本の農業はなぜ荒廃したのか。昔の農業国のままでは増加する人口を
賄うことは不可能であった。一般的には商工業等の発展に伴う経済の成長とい
う歴史の必然である。ーーー農業が意図的に犠牲にされた訳でもない。

しかし、現在、日本は先進国の中で、食料自給率が40%を割るという奇異な
国である。国防に匹敵する、「食料の安全保障」という国の重要な砦が壊れか
かっている。

だから、加瀬氏が提唱される「食料自給率80%」を、まず、国是(の一つ)、
つまり、国の基本戦略とするべきなのだ。これにより取るべき戦術が見えてく
る。ーーー以下、私見を述べる。(2015年度の国の目標は45%)

まず、第1に、関税制度を最大限利用し日本の農業を保護する。WTO農業交
渉においては、途上国などからの農産物の輸入要求についても、「公平な貿易
ルール」となるよう粘り強く交渉する。

「JA全青協」のWTO農業交渉について、配布ビラにあった悲痛な叫びに応
え、国是に立脚し決して妥協してはならない。----たとえ、商工業等にある悪
影響が及んでも。

この場合、農産物の「品質」レベルを堅持することが重要である。中国の農薬
残留野菜の輸入などは問題外である。

第2に、輸入価格と国内の生産コストの差額を「価格補償金」的な措置で埋め
輸出品には効果的な「輸出補助金」を投入し、国の責任で農業事業者を支援す
る。

ちなみに他の先進国の現状はどうか。アメリカは大規模農業で生産コストが安
く、食料自給率は128%。それでもなお、政府は輸出補助金により自国の農
業を守る。

イギリスの農家の収入は、その90%が政府支払金という。食料自給率は70
%、穀物は100%である。フランスの食糧自給率は122%、ドイツも84
%と、どの国も、国防とともに食料安全保障という国是をしっかり守る。

第3に、いちばん重要なことがある。それは、食料自給率80%を担うべき日
本の農業事業者の経営体質の強化・確立である。これがなければ、関税・WT
O・輸出補助金などで政府がいくら頑張っても意味がない。

日本の農業は、小規模から大規模までの農業事業者がほぼ農協に加入し、補助
金や農業構造改善事業などで、概ね同じ扱いと恩恵を受けてきた。政治家は、
国会議員から村会議員まで、狭い地域で農協や農業事業者を単なる票田として
捉える傾向があった。

商工業等の産業分野では、常に優勝劣敗。国内外において企業の買収・合併・
などが日常茶飯事のようにあり、熾烈な競争がなされてきた。本来、農業分野
も基本的に同じである。国内の農業事業の整理・統合・合併などを積極的に進
め、世界と戦える自立した農業事業に転換しなければならない。

ただ、前述したように、食料安保という国是を前提とするところが商工業等と
は異なる。

今、市役所や企業に勤務し、農協に加入している兼業農家等も補助金や優遇措
置等を得ている。だが、これらの措置は原則として廃止すべきであろう。

また、田畑を宅地として切り売りする都市近郊農家など、中途半端な「農家」
の優遇措置等も廃止し、遊休農地の宅地並み課税を徹底する。宅地が増えれば
地価も下がる。また、畑を形ばかりの「梅・栗畑」にするなどの脱法行為は認
めない。

とにかく、重要なことは専業農家=プロの農家、つまり、後継者を確定し、日
本の食料安保を担う覚悟と実力を持つ農業事業者に限り国等の経営資源(資金)
を集中投資するということである。

玉石混淆の雑多な農家を「ガラガラポン」とかき混ぜ、選別と集中を行い再編
成する。おそらく、次第に兼業農家等は専業農家に吸収合併され、兼業農家等
の働き手は専業農家の農業労働者になっていくであろう。

一流金型加工中小企業の社長が、市役所職員と兼業という例がないのと同じよ
うに、中途半端な農業では国是を達成できるはずがない。

また、江戸時代から戦前に至る人海戦術による地域集落共同での手作業農業は
今や懐かしい幻想である。高度な機械化による低コストの集約的な農業が求め
られる。

このようにして、世界と戦う日本農業、「食糧自給率80%」を目指す強い農
業事業者が誕生し、大きく成長するであろう。その途上でやむなく流れるかも
しれない兼業農家等の血=犠牲は決して無駄にはならない。

ーーー日本農業の未来につながる身近な事例を、次に紹介する。

                           = つづく =
この記事は、メールマガジン「頂門の一針」誌より転載させて頂きました。とても真面目で面白い、素晴らしい無料マガジンで す。購読される場合はここをクリックして下さい。(←新しいウインドウで開きます)
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