食料サミット、アメリカの主張は「バイオエタノール生産拡大は食糧価格上昇
の原因ではない」。ブラジルも同様の主張を行った。アメリカとブラジルは事
情が異なる。アメリカのバイオエタノールの主原料はトウモロコシ、ブラジル
はサトウキビ。

ブラジルは、生産過剰・価格低迷していたサトウキビの高付加価値化としてバ
イオエタノール生産に踏み切った背景がある。ブラジルの主張は理解できる。
原油価格高騰のお陰で収益性が上がっただけである。

但し、耕地面積拡大の為にアマゾンの森林を伐採しているので、環境問題の視
点ではマイナス面は大きい。そのブラジルも、アメリカの農業保護策に強硬に
抗議している。アメリカの農業補助金が世界の農業・農産物価格を不自然にし
ているのは明らかである。

アメリカの場合は、原油高騰でトウモロコシを原料とするバイオエタノールが
採算に乗ると判断するや、一気にバイオエタノール生産に切り替えた為、その
影響が大きい。

トウモロコシ生産のほうが儲かると判断したアメリカの農民は、小麦などの穀
物からトウモロコシ生産に切り替えたので、他穀物の供給減少が懸念され、穀
物全体の市場価格が上昇した。トウモロコシ生産量のわずか３％でも市場に与
える影響は大きい。

この１〜２年の潮流を見越し、投機家の資金が穀物の先物買いに走った為、穀
物価格が高騰した事は誰が見ても明らかである。しかも、この動きに拍車を掛
けたのがブッシュ大統領である。

過去、ブッシュ大統領は「アメリカ経済に悪影響」があるとして環境問題には
一切触れなかった。原油価格高騰に関しても傍観し続けてきた。つい先日、数
年前に環境問題・温暖化問題に関する専門家レポートがホワイト・ハウスに提
出されながら一切無視していた事が明らかになった。

ブッシュ大統領は、半年前ぐらいから、元副大統領ゴア氏の人気やアメリカ大
手企業の動き、アメリカの世論を逆風と感じたのだろう、やっと環境問題で口
を開き始めた。但し、強調したのはバイオエタノール生産拡大のキャンペーン
だけだ。この行動は投機家の先物買いに拍車を掛ける結果となった。

この数週間、原油価格も穀物価格も天井に張り付いている。そして食糧サミッ
ト、アメリカ以外の世界は、何らかの対策を模索し始めている。市場はどのよ
うに反応するか…。

アメリカのオイルメジャーは日々巨額の利益を上げている。価格高騰は自分の
責任ではない、と居直っている。穀物メジャーもボロ儲けしている筈、アメリ
カの穀物・農産物輸出額は大幅増加、当然農家の収益も大幅増加だろう。

更にアメリカ議会は農業補助金を採択した。アメリカの農民はバイオエタノー
ル生産に拍車を掛けることになるだろう。

確かにバイオエタノールに使われる穀物の量はまだ小さい。ブラジルの原料は
サトウキビの一部余剰部分で、穀物価格には直接関係ない。ーーー原油価格と
穀物価格が連動する市場メカニズム、そのメカニズムを構築してしまった投機
家、ファンドマネーを早く規制しないと世の中は益々泥沼化する。

小麦のアジア向け大供給国、オーストラリアの旱魃による影響は未だ癒えず、
今年の収穫も期待薄である。ミャンマーのサイクロン被災地、今年の米作は悲
惨なものになるだろう。田植えもできない状態である。この地帯はミャンマー
の米作の６５％を占める地帯。

被災状況は未だ分からない。被災地には未だ救援もなく、種籾までも食べられ
てしまっていると聞く。中国、四川大地震の影響はどれほどか…、アジアの穀
物生産には不安要因が多い。そして温暖化現象の影響は‘計り知れない未知’
の世界である。

穀物生産量の問題もあるが、今、重要な点は価格問題、急速なインフレ現象が
アジア各国の社会問題になっている。農産物価格上昇は農民にとっては良い事
だろう。

今まで、アジア・アフリカ諸国の多くの農民はアメリカ・ベースの農産物低価
格体系の中で、極限に近い貧しい生活を強いられていた。アメリカの農業政策
は、発展途上国の農民を貧困に追い込んだ元凶である。少なくとも低価格で縛
りつけ、貧困から脱却できないようにさせてきた。

そして今度は、農産物高値誘導で、世界各国で急速なインフレを招き、世界の
一般庶民を窮地に追い込んでいる。感情的にはそう思わざるを得ない。実際問
題、一番喜んでいるのはアメリカのオイル・穀物メジャーと農民だけだろう。
儲かり過ぎて気まずい風でもある。彼らに、世界の庶民の風がどのように吹く
ことか…。それにしても、投機家の姿が見えない…。

アメリカの　アメリカ人による　(一部)アメリカ人の為(のみ)の政策

ーーーアメリカの政治が変わるべき時が来ている。オバマ氏に‘変化’を期待
するアメリカ人も多いようだが…。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＝　おわり　＝
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　この記事は、ブログ「さまよえる団塊世代」より転載させて頂きました。

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