日本の食料自給率向上には
☆ 自給率低下プロセス、回復には覚悟を ―――――― 2008/03/10
                           by 紋起さん

中国に進出する企業が悪いだとか、志が低い(売国的)ような投稿が多くあるが
企業のトップの一存で進出する、しないが決まっているかのごとき前提の話に
経済の実体を知らないとはいえ、マスコミに汚染されている度合いの酷さに愕
然としてしまった。

中国に進出したのは、日本の消費者が行なう商品選択が源になって、普遍的経
済原則にさえ述べられている通り、当然起こるべくして起こった結果でしかな
い。(本当は責められるべきだとは思わないが)責められるべきは消費者であっ
て、企業の経営者は生き残る為の必然の道を選んだだけのことである。

極めて古い経済原則に、デビッド・リカードが1810年頃に展開した「比較
生産費説」があるが、その通りに展開したのである。
Wikipediaを引用すれば、

┌──────────

たとえばワインと毛織物という商品があったとして、小国と大国がそれぞれど
ちらの商品も生産していたとする。

小国:労働者一人当たりでワイン2単位、毛織物4単位生産できるとする。
大国:労働者一人当たりでワイン10単位毛織物30単位生産できるとする。

小国はどちらの商品生産においても大国より生産性が低いということになる。

いいかえれば、大国は小国よりも毛織物およびワインの生産性が高いため絶対
優位となる。では小国は大国に対してどちらも競争力がないのであろうか。

ーーー答えはノーである。

小国はワイン生産において比較優位なのである。なぜかというと、小国ではワ
イン1単位と毛織物2単位が等価、大国はワイン1単位と毛織物3単位が等価
であるからだ。つまり、小国のほうがワインを割安に作れるのである。

したがって、小国がワイン造り、大国が毛織物造りに専念して貿易で交換する
と、双方豊かになれる。すなわち、比較優位な産業に特化することによって、
全体的なアウトプットは増大するため、自由貿易を前提した場合、両国ともに
消費を増大させることができることを示している。

└─────────(詳しくは Wikipediaの『比較優位』をお読み下さい)

日本はこの原理で豊かになってきたのである。

農業と工業の、労働時間当たりの産出量は日本でも大きく異なっている。農水
省の算定によれば、06年の農家の時給は256円だという。工業の平均を車
などの輸出企業の平均賃金とすれば、時給4千円ぐらいだと推されるので、約
16倍となる。

それに対して、農業が主で、工業が申し訳程度あるだけの国では、農業の時給
と工業の時給との比は、日本のそれよりももっと接近しているだろう。

こういう場合、日本では工業が比較優位であり、農業が比較劣位、その農業主
体の国では農業が比較優位、工業が比較劣位である。こういう場合、自由貿易
の体制の中では、日本が工業に専念し、農産物を輸入することが両国にとって
豊かになる道であり、国際的な分業が進んできた原理なのである。

したがって、自由貿易の中で、経済原理が示すとおりに、日本は工業に専念し
農業から工業に人が移動し、その結果日本全体が豊かになった。----現在でも
農業から工業に職種を変えると16倍の時給になり得る可能性がある。

この流れは決して政治の問題や企業の問題でなく、純然たる経済の問題であっ
た。----当然その流れを滑らかにする支援の立法などはあったと思われるが。

しかしながら現在においては、日本は対中国やアジア諸国と比べると、農業の
みならず、組立て産業も比較劣位になっており、このことが日本にあった工場
が中国に移転している原因となっている。

中国に移転した企業の経営者を批難する論を展開しておられる方がおられるが

もし移転しない場合は、欧米等の企業が中国に進出して、進出しない日本企業
は世界の市場から駆逐されていたであろう。そして、日本の国内市場にも海外
企業が製品を輸出してくるから、中国に進出しなかった日本企業は倒産するこ
とになる。

自由貿易を認める限り、人件費の安さ等から生じる中国の比較優位は、そこに
進出して活用する以外に防ぐ方法は少ない。唯一あるのは、

他国では作れない技術水準の高さだとか、スイスの時計のようなデザインだと
か、フランスやイタリアのようなブランドとか、特許に守られているだとかの
製品を持つことだが、残念ながら日本全体が食っていけるほどの規模でそのよ
うな優位な製品、ブランド、技術を持つ企業群は育っていないし、育つ気配も
薄い。

餃子をなぜ中国で製造するのか、との疑問も、工場の仕組みをみれば簡単であ
る。餃子を包む自動機械は確かに存在する。しかし、餃子の中味を準備したり
餃子の皮を製造し、それらを合体させて製造した餃子の蒸し工程、冷凍、パッ
ケージへの包装、箱詰め、などの工程全体を考えると、餃子に包み込む工程の
人数は5%ぐらいではなかろうか。

しかもその国の人件費が安ければ、包装資材(段ボールも包装フィルム)も安く
工場の間接費も安いので、トータルのコストは格段に安くなるだろうと思う。
餃子を皮で包む工程を機械化しても、コストには大きな影響ではない。従って
餃子生産を中国でやることに、私には何の不思議も感じない。

このプロセスを認識すれば、食糧自給率を現状より高めるためには、比較優位
の工業の仕事から、比較劣位の農業の仕事に人を動かせるようにする方策が必
要である。これは、経済原理の逆をやるのだから、やる人がまず貧しくなる訳
で、通常の環境下では進行するはずもない。

もし強制力が使えたとしても、先述のように時給レベルで16分の1の仕事に
転職して貰わねばならないのだから、随分大きな補償をしないと労働意欲すら
なくなるだろう。その補償は国内販売の食料の値段で回収する以外になかろう
から、食料の値段は暴騰といえる程上昇するだろう。

そして日本全体を考えると、農業に転職する人数のGDPの93%分だけ日本
のGDPは落ちる、すなわち貧しくなるのである。

仮に、食糧自給率の高かった1960年では、農業就業人数は1200万人で
あったので、同じ人数を投入した場合----不可能は承知の上で数字上のシミュ
レーション----には、一人当たりのGDPは約23%程低下するので、シンガ
ポールと同じ程度である25位ぐらいの一人当たりのGDPとなるだろう。

このように、食糧自給率を高めろの論はあるが、高めることによって日本全体
が貧乏になることを想定していないのが殆どである。

貧しくなることは覚悟の上だという方も、そうなれば軍備も粗末にせざるを得
ないし、世界に於ける交渉力は、もっと目も当てられない状況になることまで
想定していないのではなかろうか。

そして全体が平均して貧しくなる時は、貧しい人から先に貧しくなり始めるの
が通例である。すなわち、誰でもできる仕事しかできない人の給与はすごく低
下するし、職もなくなる。やれる人が少ない付加価値の高い仕事のできる人の
給与は下がらないだろう。つまるところ格差は非常に大きくなるに違いない。

私は、自給率を高めることに反対して述べているのではない。私は、以前から
主張しているように、食糧危機対応が今後の日本の極めて大きな課題であると
思っている。しかし、

自給率を高めることは、誰かが号令を掛ければ動き出すようなものではない。
「損をするのは嫌だ、得することは好きだ」という、普通の人の集まりである
社会では、逆の流れになるテーマだから制度の設計は極めて難しい。

もし、自由貿易の制度から脱退して鎖国をするのなら、食糧に大幅な補助金を
つけることも可能だが、GATTの加盟国であるかぎり不可能である。では、
GATTから脱退することを真剣に考えたら可能性があるのか。

鉱石、石油や天然ガス等がなしでは日本国は成り立たず、それらが国内で産出
しない以上、海外に商品を売って外貨を稼ぎ、不足の資源を買わねばならない
ので、自由貿易を脱退することはかなりの餓死者を出したりする選択だからあ
りえない道である。ということは、

大幅な補助金をつけたりせずに逆のプロセスを進まねばならないことになる。

どなたかの投稿で、小沢の提案する農家へのばら撒き補助金が命だと主張して
おられたが、今までの原理から見ても全く役に立つものではなく、自給率改善
は無理な話で、単なる人気取り政策にすぎない。

また OJIN 氏の提案される高価な農産物に特化する方法は、高価な農産物の市
場の小ささと、もしそういう市場が大きくなった時の、他国からの競合相手の
参入で、コスト的に安売りされて横取りされるのではなかろうか。日本の農業
でなければできないものは少ないので、そのような市場は限られた規模であろ
う。

食糧自給率を高め易くするためには、農業の生産性を高めることが一番重要な
要素となるものと思う。1960年から、日本において農業の生産性は高まっ
ている。約5倍になっているらしいが、これを更に高めることが必要である。
せめて工業の4分の1ぐらいにならないと、農産物の値上がりも大きすぎる。

したがって、今の4倍ぐらいの生産性向上が必要ではなかろうか。この面から
考えると、今の農地法が障害になっている点が大きい。

農業の生産性を高める方策について語れるほど詳しくはないので、蛇尾で終わ
ることをお許しいただきたいが、一つだけ重要な要素を指摘しておきたい。

それは、農地の所有権に関することである。

日本の農業の生産性の低さの原因の一つに、規模の小ささが厳然としてある。
また、経営形態が個人の規模から大きくなりにくい点も指摘されているが、そ
れらの根本に農地の所有の問題が深く絡んでいる。

今の農地保有には厳しい参入制限があり、また、相続が子供間で平等だから細
分化され、かつ固定化される傾向にある。地方での農家、それも兼業農家の土
地保有の目的は、道路だとかスーパーとか倉庫への売却だと指摘されている。

だから、休耕田で荒地にしても保持し続けるのだろう。
(神門義久著「日本の食と農−危機の本質」)

農地の保有や貸借に関する法の整備が必要だが、農家の既得権侵害になること
だから抵抗が大きく難しい。しかし、この問題がキーだと思うので、早急な着
手が望まれるところである。

                        = この稿おわり =
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
▽
転載元:せいろん談話室:あらためて食について
http://ez.st37.arena.ne.jp/cgi-bin/danwa/top_display.cgi

┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ 読後アンケート結果。 ┗━┛
◇ そうだこのとおり! ---------------------------------- 36人 (77%) ◇ 私は違う考えです ------------------------------------ 7人 (15%) ◇ よく分からない‥‥ ---------------------------------- 4人 ( 9%)
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ お寄せいただきましたご意見や感想。 ┗━┛
┌──────────「onestoさん」 食料自給率の件、ご意見その通りだと思います。 私の気がかりは、年間に1億人増加している地球人口です。今はまだ金があれ ば外国から輸入できるが、金があっても食料が入手できない時が来るのではな いかということです。 地球人口の増加、天変地異による食料の不足、戦争の勃発等を考えると、自分 で自分を守ることが必要ではないでしょうか。戦時中は庭に野菜などを植え、 飢えの足しにしたものでしたが・・・・ └──────────
本当にそうだこのとおり!‥‥と思われた方!「誰でもできる!1人1日1回の愛国活 動」は、ここをクリックして頂くことからはじまります!ーーークリックして頂くと票数がアップして、この問題を多くの 人々に知らせる事ができます!
    
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘ └→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
日本の食料自給率向上にはの目次に戻ります







SEO [PR] お金 ギフト  冷え対策 わけあり商品 動画無料レンタルサーバー ブログ SEO