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インド事報・インド徒然 ―――――― by はぐれ雲さん
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☆ インド偽酒ビジネス・密造酒事件の見方 ――――― 2009/07/24
インドで起きた密造酒事件、100人を超す死者が出て話題になった。州政府
の法令で禁酒としているグジャラート州で起きた事件なので話題性があったの
だろう。
インドでは、偽酒で100人程度の死者が出ても普通なら報道されない。偽酒
自体、インド社会底辺の大きな問題である。
過去、死者数が数百人…、500人程度になるとニュースにはなったが、それ
でも一過性のニュースであった。殆どが結婚披露宴での事件が多かった。町の
広場に設営されたテントの結婚式場、電気は即席の発電機、披露宴式場の外は
暗い。
新郎新婦を祝福する者が参加するのは当然だが、飲食を楽しもうと、呼ばれて
いない者も自由に式場に流れ込み、ご馳走にあずかる。寛容の世界である。
テント内にはアルコール飲料は置いてないが、暗いテント裏では、誰かがアル
コール類を持ち込み、別の宴会が始まる。皆、ストレートで飲み合う。貧しい
人にとっては滅多に口にできないアルコール飲料、皆、我先にと競って飲む。
飲めるだけ飲もうとする。直ぐベロベロになる。急性アル中? 誰かが倒れて
も「飲み過ぎて倒れているのだろう」と思い込む。気にせず飲む。更に次々と
倒れるが、それでも気にせず飲み続ける。
「結婚披露宴という楽しい日」「滅多に経験できない旨い飲食が楽しめる日」
酔っ払って、楽しくて、そして…、暗くて、どうなっているのか判らなくなり
「勢い」で更に飲む。気が付いたら500人以上が死んでいた、というのが典
型的な例である。
年に数回、新聞で知る「インド独特」の珍事であった。ーーー最近はどうなっ
ているか判らないが…。
今回の事件は、禁酒州での密造酒事件、州内では違法行為に州がどのように対
応するのか注目されている。だが、禁酒州の密造酒問題などは大きな問題では
ない。
問題は偽酒ビジネス…インドの裏のややこしい問題「酒マフィア」問題。
「中央・地方政権」と「地方の役人・警察」と「偽酒業者」がつるんでいる。
何処の世も同じだろう。アルコール飲料問題は発展途上過程で起こる問題でも
ある。アメリカ、日本、中国、ロシアの過去・現実を見れば判る。現在、偽酒
による死者が一番多いのはロシア、次いで中国、次がインドだろう。
インド人は宗教的理由でアルコールを飲まない、と思っている日本人が多い。
確かに宗教的慣習で酒を飲まない人も多い。多くは女性である。だが、インド
の場合、アルコールの消費量が小さい理由は、貧しさ故に酒を買う金がない、
これが実態だろう。
余裕があれば酒を飲み、仲間とお祭り騒ぎをしたい…,当たり前の姿だろう。
兎も角、アルコール好きのインド人は多い。経済的に余裕が生まれつつあるイ
ンド、将来的に有望なアルコール飲料大市場として脚光を浴びつつある。10
%でも1億2万人、50%なら6億人の市場である。
インドの地酒、ココナッツかカシュナッツから造った「フェニー」という地酒
がある。火が点くほどアルコール濃度は高い。匂いは強烈。美味しいという人
はいるだろうが、人それぞれである。強すぎる…。
それ以外の酒は殆どイギリスが教えたアルコール飲料。ビール、ウォッカ、ラ
ム、ウィスキー、最近はワインも流行り始めている。400年の歴史がある。
今、インド産ビールの代表格キングフィッシャーは一本約100円、インド産
の高級ジン一本約360〜460円、インド産の高級ウィスキー一本約500
円…。40年ぐらい前の日本の庶民の酒場の値段に近い。
ウィスキーは、40年前のサントリーレッドと味も値段もほぼ同じである。輸
入品であるスコッチ、どういう訳かインドではジョニ黒が定番になっている。
値段は輸入税次第だが、4年ほど前は一本約3000円であった。
金持はジョニーウォーカー・青ラベルを自慢げに(見栄で)飾っている。インド
では最高級のウィスキーといえば青ラベルである。青ラベルの値段はない。
スコッチの偽物も多く出回っている。偽物の見分け方も色々あるが、蓋を開く
前に見極めなければならないので大変である。蓋を開けた後ではクレームでき
ない。
今回の偽酒、さて何を真似たアルコール飲料だか定かでないが、多分、ウィス
キー・ラム系だろう。中味はエタノールをベースに色々怪しげなものを混ぜて
造るものが多い。
エタノールは飲んでも死ぬことはない。インドのウォッカやジンは、エタノー
ルを使ったまがい物が多いと聞いた。毒性の強いメタノールをベースにすれば
飲めば即死し、直ぐバレてしまう。そんな事はしないだろう。
エタノールとメタノールを一定量混合すれば、燃料用アルコールになる。入手
も簡単だろう。多分この燃料用アルコールをベースに使ったに違いない。配合
を上手くすれば直ぐ酔うが死には至らない。値段は一本100円程度だろう。
ーーー配合を間違えれば死に至る。
「危険であるのを知っていて何故飲むのか?」そういう疑問を抱く人がいる。
理由は簡単、「危険を知らない人たちが多い」である。インド政府の数字を信
じれば、インド人の文盲率は約35%、電化率は60%強、40%弱の家庭に
は電気もなく、従いテレビもない。新聞も読まない。他の町の事件や事故など
知る由もない。
彼らにとって100円は大きい金、アルコール飲料など滅多に飲めない。ただ
で振る舞われたら、死ぬほど飲みたいだろう――――。
もう一つの問題は、偽酒製造者と役人・警察との癒着、犯人は罰金を払って直
ぐ釈放される。野放し状態に近い。儲けが罰金より多ければ、偽酒造りをやる
に決まっている。偽酒造りをする業者は、偽酒で人が死ぬとは思っていないだ
ろう。
「ノープロブレム」の世界である。多分、調合比率を間違ってしまったのだろ
う。正にインド的な不幸な事件である。
最近は、携帯電話がインドの田舎にも普及し始めている。情報量が増えれば、
偽酒の危険性を知り、注意するようになるだろうが、まだまだ時間がかかるよ
うだ。
= この稿おわり =
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この記事は、メールマガジン「頂門の一針」2009年7月24日発行第1617号に掲載して頂きました。「NHKらしく
ない蝮のNHK政治記者」として日本の高度経済成長期を見つめ、その後は外務大臣と厚生大臣の秘書官として国際化時代を
体験してきた渡部亮次郎氏が日刊で発行している無料の情報マガジンです。購読される場合はここをクリックして下さい。(←新しいウインドウで開きます)
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