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インド事報・インド徒然 ―――――― by はぐれ雲さん
☆ ややこしいインド、名前で判るカースト=父名証明書 2009/03/06
日本企業がインドに投資する際、最初に当惑する問題が「父親の名前(父名)の
記載義務とその英文証明書」提出義務である。申請書作成に当たり、
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申請者と申請者の父親との関係を証明する書類=戸籍謄本)を以って‘父名証
明書’を英語で作成し、公証人の署名を取って提出すべし。
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と規定されている。パスポートのコピーでは不可である。パスポートには父名
が記載されていない。
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パスポート取得に際し戸籍謄本を提出し、日本の政府機関にチェックされて受
理されるので、パスポートのコピーでも良いのではないか?
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とインド政府に抗議したが、
「父親との関係が判らないから」という理由で駄目であった。

実際、インドの公的機関の諸記録や学籍登録・運転免許書等、父名の頭文字の
記載が義務付けられており、父名を記載しない証明書は発行されない。不法と
なる。

何故「父名」が必要なのか?ーーーこれにはインド独特の歴史的背景がある。

インド人の名前の付け方、地方、宗教、種族等により異なり多種多様である。
典型的なヒンズー教徒の名前は、最初に「個人名」、次の中間名に「父名」、
最後に副名として「家族名」等を付ける。最近は「父名」と「家族名」を頭文
字で「個人名」の前に表記するのが一般的となっている。

P.K.アナンドという名前の知人がいるが、アナンドが個人名、P(?)は父
名、K(クマール)は家族名、=クマール家のPさんの息子のアナンドさん、と
なる。これは単なる一例に過ぎない。


「個人名」と「副名」だけの者もいる。

「副名」には「家族名」が多く、「家族名」は祖先の出身地・故郷やカースト
名、さらに、カースト外の職業名等で命名されたケースが多い。「副名」には
「父名」や「家族が崇拝する神の名前」の場合もある。

名前の呼び方やスペルは地方により異なる。

従い、名前やスペルで出身地やカーストが判る。名前の順序も地方により異な
る。名前の順序だけでも出身地が判る。シーク教徒はシーク教徒全員が Singh
(シン)の名前を付けることになっている。

結婚後の女性、改名する者も、改名しない者もいる。兎に角、複雑である。

これには、長いインドの歴史が背景にある。

インド人は名前を見て、出身地、種族、職業、カースト等をある程度まで識別
できる。カースト制度を厳格に保つ為、頭の良いバラモン・統治者が考えだし
た「命名ルール」である。

江戸時代、日本の統治者は庶民に家名を付けさせず、武家との区別化を図った
が、バラモンは名前でカーストや出身地=種族を識別できるような命名ルール
を作った。ーーー2000年以上も続く慣習でもある。

しかも、地方=旧藩によってルールも言語も異なる。

現在、インドではカースト制は憲法で禁じられている。だが、命名に関する慣
習は依然として温存されている。名前で差別化する慣習も依然として残ってい
る。

ヒンズー教徒以外のインド人、イスラム教徒は名前で直ぐ判るし、キリスト教
徒の個人名は殆ど英語名であり、簡単に識別できる。

最近はヒンズー教徒の上層階級の中では、カーストや出身地が判らないような
名前にしている者が増えている。個人名と父名だけであれば、何が何だか判ら
ない。しかも、父名を頭文字だけで表記すれば、名前からは身分や出身地は読
み取れない。しかし、まだ極々一部のインテリ層がやっているだけである。

公的書類に父名記載を義務付ける規則は、身分証明をより確実にするインドの
文化・慣習に合わせた規則だが、見方を変えれば、名前で適格が不適格かを諮
るシステムでもある。

過去の人種差別=カースト制)の名残だろう。採用時などでは、差別化の為の
目安=篩い分けの基準)にしている企業も多い。

名前の付け方の問題は‘文化’の問題、‘宗教’の問題…、当分「父名記載義
務」は変わりそうにもない。ーーーややこしいインドの一面である。

                        = この稿おわり =
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