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インド事報・インド徒然 ―――――― by はぐれ雲さん
☆ 2009年丑年・牛と共生するインド ―――――― 2009/01/09
2009年は丑年、干支がある国では牛が注目される。牛といえばインド、牛
は神格化され大切にされている。だが、インド人と牛に関しては誤解も多い。

牛を大切にする人類の歴史は長い。

エジプト・ナイル文明では、牛は貴重な益獣であり、人間と共生していた。イ
ンドの牛神格化の慣習は、ナイル文明の影響を受けているという学者もいる。

「ヒンズー教が興る以前のインダス・ガンジス文明の時代にさかのぼる信仰」
という説もある。

牛が神格化された主因は、ヒンズー教の3大神である「シヴァ神」の乗り物が
「乳白色のコブのある牝牛」名前は「ナンディン」、この牛が神の使いとして
信仰され、神格化され、長い時を経て牛が全て神様扱いされるようになってし
まった。ーーー2千〜3千年の時の為せる業である。

「ナンディン」は「四足動物の守護神」「望みをかなえる神」「幸せの象徴」
となり、インドでは、臨終を迎えようとしている者に牛の尻尾を触れさせれば
牛が天国に導いてくれると信じられている。

日本で有名なのは大宰府天満宮。ーーー菅原道真の遺体を牛車で運ぼうとした
が、ある場所で牛が座り込んで動かない。お経を唱えたあと(?)にやっと牛が
動き始めた――――。

その後、その牛が座り込んだ場所に建てたのが大宰府天満宮。今でも「座り込
んだ牛の像」があるらしい。北野天神にも同様の牛の像があると聞いた。

「ナンディン」信仰の影響だろう。天国に導く牛である。

3年ほど前の調査では、インドにいる牛の数は2億8千万頭、今では3億頭ぐ
らいになっているだろう。2億頭が牛、1億頭が水牛、様々な種類の牛がいる
が、「白乳色のコブのある牝牛」は余り多くない。

都会の野良牛が有名だが、約70%は零細農民が飼っている。農民一世帯に、
2〜4頭、人間と牛が共同生活をしている。役牛として農作業に従事、運搬役
・牛車として使われる。牛乳は家族の貴重な栄養源であり、現金収入源でもあ
る。

牛糞は乾燥して燃料になる。これも貴重な現金収入源である。収集されなかっ
た糞は肥料・土壌改良剤、尿は畑の水分補給であり、天然消毒剤にもなってい
る。ーーー自然リサイクルの世界。

牛糞を焼いた後の灰は、時に薬に、時に鍋や釜を磨く材料になる。壁の材料に
もなる。

糞の原料は草、牛の胃で草が粉砕され胃液で消毒され、水分を飛ばせば良質の
粘土、若しくは漆喰の代わりとなる。骨はゼラチンの原料、残った骨は肥料と
なる。牛の角や蹄などは貴重な高級有機質肥料になる。皮は貴重な輸出産品。

インドは世界有数の革製品輸出国である。最近はナメシの技術・脱臭技術・縫
製技術も向上し、デザインも洗練され、繊維業界で注目されている。

牛の世話は男の子の役割、牧草を食べさせるため毎日草原に連れて行く。水浴
びをさせ、体を洗ってやる。糞の収集は女性の仕事、糞を収集して、捏ねて乾
燥牛糞を作る。数千年変わらぬ‘のんびりした村の風景’である。

殆どの日本人は、インド人は牛肉を食べないと思っている。

革製品を大量に輸出しているインド、皮だけを使って肉を捨てているわけがな
い。前にも言ったが、インド人と一括りしてインドを見ると訳が分からなくな
る。インド人の13〜14%はイスラム教徒。

イスラム教徒は絶対に豚は食べないが、牛は食べる。インドにいるイスラム教
徒は1億5千万人、ーーー牛肉消費量は、アメリカ、中国、ブラジルに次いで
世界第4位の牛肉消費国である。

インドには美味しい牛肉がある。コルカタ・ビーフ、バンガロール・ビーフな
どは代表的なビーフである。高級ホテルなどでステーキをオーダーすれば食べ
られる。

殆どのヒンズー教徒は牛肉を食べない。だが、異国で生活するインド人ビジネ
スマンの中では、牛肉が食べられるヒンズー教徒もいる。母親が食事選択権を
持つインド、母親や母親に通じる知り合いがいない場所では、自由選択の世界
である。

牛肉を食べ始め、好んで食べるようになるインド人も偶にはいる。食べられる
ようになった‘言い訳’を聞くのも面白い。人により様々な‘こじ付け’があ
る。
ーーーインドで聞いた、小話に似た寓話を紹介する。
┌--------
繰り返し「悪さ」をしていた若者、ある時、流れの速い川に落ちてしまった。
必死に枝につかまり流されまいともがいていたら、ナンディンがゆっくり歩い
てきた。

若者は「救いの神来たり!」と狂喜、ナンディンに助けを求めた。ナンディン
はゆっくり若者に近づき、そして一瞥もする事なく、そのままゆっくり歩いて
去っていった。ーーー若者は川に流されて行った。
└--------

こんな話はインドには山ほどある。意外と残虐にも思える寓話も多い。

来年は丑年、急がず焦らず、

「マイペース」「スローライフ」を見直す年になってもらいたいものである。

                        = この稿おわり =
この記事は、メールマガジン「縄文塾通信」2009年2月20日発行第359号に転載して頂きました。とても 真面目で面白い、素晴らしい無料マガジンです。購読される場合はここをクリックして下さい。(←新しいウインドウで開きます)
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