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インド事報・インド徒然 ―――――― by はぐれ雲さん
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☆ 頭脳労働力不足の懸念・義務教育法成立 ――――― 2009/08/19
BRICs理論は、インドの強みに「豊富な若年労働力」を挙げている。
インドの人口増加率は約1.8%、毎年2千万人以上人口が増加しており、2
009年末には人口12億人を突破する見通しである。(国連推定)
人口の中心年齢は25歳、「豊富な若年労働者の存在が、インドの成長を支え
る原動力となる」というのがBRICs理論の根幹となっている。
では、労働者の質はどうなのか?
最近「インド人の頭脳」と持て囃されているが、能力のある者は「極々一部」
の人間に過ぎない。極々一部だが、人口の絶対数が多いのでかなりの数にはな
る。ーーー他方、インドの識字率は61%である。
インド経済紙「The Financial Express」に興味深い記事が掲載されていた。
意訳すると、
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インド第2位のソフトウェアサービス会社であるインフォシス、毎年6月にな
ると‘トレイナー’に変身する。毎年、一応トップクラスのエンジニアリング
カレッジから約3万人の学生を採用するが、採用後6ヶ月間も「教育し直し」
「研修」を行い「必要な技能」をマスターさせなければならない。
理由は「カレッジでの教育が不十分」な事。
研修の為に、インフォシスは、本社のあるバンガロールから車で約2時間のマ
イソールに1万5千人を収容できるキャンパスを建てた。更に、キャンパスと
430のカレッジを結び、直ぐ実務で活用可能な能力を備えた学生をリクルー
トできるようにするプログラムを検討している。
2008年度、インフォシスは教育・研修に約1億7500万ドル≒170億
円使っている。この不況下に、である。
問題は「採用した新入社員の能力の差の大きさ」にある。
2000年以降、IT企業各社が有能な人材を確保する為にリクルート合戦を
展開した。その結果、2004〜2006年の3年間で、IT企業社員の給料
は約30%も引き上がってしまった。
IT企業社員の給料アップは、IT企業外の産業の労働者の給料をも引き上げ
る結果となった。その過程でIT企業内での能力差問題が顕在化してきた。
IT企業各社は目下「社員の教育問題」という大きな壁にぶち当たっている。
能力の差と歪は、インドの国際競争力向上と経済急成長を妨げる大きな要因と
なっている、とアナリスト=ボストンコンサルティング)は指摘している。
IT専門職にはうつ病も多く、問題になっている。
インフォシスばかりではない。タタ・コンサルタンシー・サービスは150の
エンジニアリングカレッジで能力開発プログラムを展開、ウィプロの創始者ア
ジム・プレムジ氏は、巨額の個人資産を初等教育支援に投じ、ヴェダンタ・リ
ソーシスは、大学に10億ドル支援することをコミットしている。
一方、タタ・グループやビルラ・グループは、数年前から企業の社会貢献=C
SRとして、質の高いカレッジを開校する計画を進めており、IBMやSAP
や Ciscoなどは、彼らのニーズに合うカリキュラムと研修を計画している。
インドの教育という観点からいえば、マイクロソフトも深く関わっている。
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専門家はインドが直面している危機を、DEMOGRAPHIC DISASTERと表現している
が、何と訳すか…、大国故に起こる「統計上の人口災害」とでもいおうか…。
ボストン・コンサルティングの最新のレポートによると、若手を中心とする労
働者4億人の40%は無教養・文盲、40%は学校中退者、即ち80%は頭脳
労働には不適格者。
向こう5年間の頭脳労働者の需要は1千380万人、学卒予定者は1千320
万人、=60万人の頭脳労働者不足になる計算である。
多数の頭脳労働非適格者の若者の存在は、社会に対する不満を高める事になり
インドの成長を狂わせるばかりか、「社会の根幹を揺るがす人口災害をもたら
す可能性すらある」と指摘している。
インドの頭脳を育成する公立・私立のハイレベルの大学はあるが、授業料も高
く、インド一般一企業が多数採用するのは無理である。他方、初等・中等教育
を見れば、地方の「家内工場労働者育成教育場」のようになっている学校も多
い。それが実態である。
インド政府、第2次マンモハン・シン政権は、2千万人の子供を学校に通わせ
るように支援、また、むこう10年間で大学数を今の4倍の1500校に増や
すと表明した。
今月「A Right to Education Bill=義務教育法」がインド国会を通過した。
6〜14歳の子供の義務=権利(強制)教育、学費は無料。非常に重要、且つ画
期的・歴史的なな進展だが、専門家は「それでも不十分」と言う。
教育はインドの最重要課題、インド政府は着々と国民の知的水準向上に努力し
ているが、山ほど問題がある。
教師の質の問題。幼年労働者問題。カリキュラム問題。多様な文化、多言語、
多神教、慣習の違い、カースト制、男女差別。難題だらけである。
そして、ヒンズー教とイスラム教の教育に関する考え方の違い…、これが義務
教育化を妨げた主要因であった。
現在、産学協同事業、企業の社会貢献事業、企業のニーズに合った職能育成専
門学校などが推し進められているが、その成否がインドの経済成長のスピード
に大きく影響する。
今回のアメリカから発した経済後退、インドのIT産業の成長減速は、タイミ
ングとして「インドの教育問題を見直す」良い機会になったかもしれない。
ーーーしかし・・・どの数字をとっても規模が違う――――。
= この稿おわり =
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┃ ┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
┗━┛ ┌──────────「Hal さん」60代@男性@自営業@海外
はぐれ雲様、毎回的確でシビアなインド報告を、有難うございます。
世界を挙げて、この閉塞を救う国々としてBRICsなどと持ち上げています
が、今回のはぐれ雲さんの言われるように、“最近「インド人の頭脳」ともて
囃されているが、能力のある者は「極々一部」の人間に過ぎない。極々一部だ
が、人口の絶対数が多いのでかなりの数にはなる”のが現実です。
「インド人口の、10のマイナス5乗以下の人たちしか正当な話し合いの相手
にはならない」というのが当方の持論なんですが、さらにこの人たちを捉えて
いる古い仕来りを考えると、
サイババの「2025年には世界のトップになる。ただし日本の指導が必要」
という予測も、よっぽどドラスティックな変革がなければムリでしょう。
でも、人類存続のためにも、悲観ばかりしてはおれません。もっと日本企業が
進出してきて、サイババの予測を叶えるような日印関係を築く事ができると、
世界はもっと住み易くなるだろうと思います。
はぐれ雲さんの、更なるご提案を切望しています。
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┌──────────「はぐれ雲さんから」
インド文化と日本文化には大きな差があります。極端に言えば裏表の違いがあ
ります。ですが、個々の表現方法の違いかも知れません。
インド特有の「寛容」と「慈悲」の精神には、日本文化と共通点を感じます。
日本の頭脳・技術力の移入も良いですが、文化・精神面で交流が深まり、関係
が深まれば、相乗効果があると思います。それはいわゆる官製の‘文化交流’
ではなく、民間企業の経営手法や日常業務の人間関係でも実現できます。
今は、やっと日本人がインドを勉強し始めた段階です。日本企業にとってイン
ドはこれからの世界です。
若人の活躍に期待しております。インドに夢を抱く若人も増えております。
課題は、インドに関する知識不足、特に日本人老人経営者の無知…、しかし、
それも時間の問題でしょう。中国同様、インドを無視しては経営判断を誤る時
代になりつつあります。
今インドに駐在している日本人は3千人強、1万人ぐらいになれば、インド感
は変わっていくと思います。
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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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