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インド事報・インド徒然 ―――――― by はぐれ雲さん
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☆ 日本とインドの民主主義の違い ――――――――― 2009/07/29
――― 平等を貫くインド
衆議院解散総選挙、日本は騒々しい夏になったが今回の選挙は面白くもある。
だが…、日本は民主国家?ーーー民主国家インドとは大きな差がある。
インド、2009年度の人口は国連推定で11億9800万人。今回の総選挙
の有権者数は7億1400万人、投票率は58.43%、4億1700万人が
投票した。
ーーーインドの選挙制度、個々人の参政権の平等性を重視する。
下院545議席、少数派のアングロインディアンに2議席を与え、大統領が指
名する。残された543議席、インドを有権者人口に合わせ543選挙区に平
等に分割し、1選挙区に1議席を割り当てる。完璧な小選挙区制である。
更に、人口比で約14.5%の「指定カースト(Scheduled Caste )」に79議
席、約7.5%の「指定部族(Scheduled Tribe )」に41議席を留保する。
2008年度の選挙区改正で「指定カースト」留保枠は84選挙区、「指定部
族」留保枠は54選挙区と枠が増やされた。この選挙区では、指定カースト若
しくは指定部族の者だけが立候補できる。
有権者一人当たりの投票権=参政権の権利、そして指定カーストと指定部族の
参政権=議席数、数字上は平等性が保障される事になる。1議席当たりの有権
者の数に格差は生じない。
選挙制度だけではない。
国家公務員採用枠と公立の高等教育(高校・大学)の入学留保(優先)枠は、指定
カーストと指定部族の人口比に合わせ、約22%と決められている。民間企業
にも22%の指定カースト、指定部族の採用を要請している。国営企業は22
%を遵守しているだろう。
全ての税金に教育目的税を賦課し教育予算に当てているのもインド的である。
選挙時に掲げたマニフェストは必ず実行するのも、インド民主主義の特徴であ
る。
インドは連邦共和国、独立後「藩」を廃し「州」を定めたが、「廃藩置州」の
決め方の基本は「文化」と「言語」。スムーズに州制に替え、スムーズに連邦
共和制に移行する為には、地元の有力者の要求をある程度認めなければならな
かった。
一番大きな点は、州政府に州独自の税制度を決める権利を認めた事であった。
また、州独自の州ホリデー、州独自の州語も認めた。話す人数の多い州語は準
公用語としている。ヒンズー語は公用語であるが、準公用語は20程ある。
州=地方政府の立法・行政権をある程度認めた連邦共和制、中央政府の決定事
項でも、案件によっては州議会で承認を得なければならない。国家プロジェク
トの決定・実行が遅れる背景でもある。
州により異なる税制度は煩雑で、経済成長の足かせになりつつある。現在、下
院で税制の統一・簡素化が検討されているが、州政府にとっては最重要の既得
権利であり、重要な州の財源確保手段、税制改正の議論はかなり難航するだろ
う。ーーーインドの民主主義には、インド独自の問題がある。
では日本は…。
「廃藩置県」後、多少選挙制度は変わったが、基本はあまり変わっていない。
江戸時代からの延長、地元有力者が担ぎ出された国会議員の世襲は未だに続い
ている。
有権者一人あたりの権利格差、都会と過疎地域の格差はかなり大きく、長年に
亘り問題視されているが、未だに是正されていない。
弱者の声は選挙時のみに取り上げられ、当選後は忘れさられる。マニフェスト
も実行されないことが多い。
議会で議決された案件が中々実行されない。天下り問題など典型的例だろう。
郵政民営化問題はどのようにねじれるのか? 年金問題は未解決…、問題山積
みである。
地方政府はないがしろにされている。無駄な国家プロジェクトの地方政府への
負担押し付けも強引である。このままいけば赤字地方政府が続出するだろう。
無駄で赤字の3セクも多い。天下り受入れ機関である無駄な公益法人も多い。
天下り人の巨額退職金問題など、封印されたままである。
有権者の政治意識も低い。問題は幾らでもある。
インドは経済貧国だが政治大国、日本は経済大国だが政治貧国…、
やはりビッグ・チェンジが必要だろう。
――― 適材適所の人材活用
2009年中にも人口12億人に達すると予想されるインド、住民登録・管理
は大変な作業である。約35%が文盲、現在使用されている言語数は700〜
800種類、人口は毎年2千万人以上増加している。
単純に仮定すれば、3千万人以上も子供が生まれ、1千万人近くの人が他界す
る世界である。出生届け、死亡届け、婚姻届け、だけでも大変な数だろう。
更に、問題のカースト制度、今でも2000〜3000種類のカーストがある
と言われている。貧民優遇策が法律で定められている以上、と、特権階級であ
る指定カースト、指定部族などの区分けも明確にしておかなければならない。
民主政治の根幹である18歳以上の有権者の管理も重要である。
IT大国といわれているインドでも、この巨大な数との闘いは大変である。
管理する国家公務員の数も大変な数だろう。管理コストも膨大に違いない。
インドではこの大問題を解決する為、「Unique Identity Card Project」…国
日本流でいえば、「身分証明カード発行プロジェクト」「国民総背番号制プロ
ジェクト」を進めている。10年に一度行われる国勢調査(今回は2011年)
までに基盤整備するプロジェクトである。
国民全員に、名前、生年月日、性別、婚姻、写真、指の指紋、判別マークなど
を登録する。SCOTRAと呼ばれる個人情報を保護する電子機器を搭載し、
権限のある者しか見られないようにする。
カードは、将来的に投票カード、不法移民の取り締まり等々のみならず、銀行
口座開設時の証明、政府の補助(食糧・エネルギー・教育)や税金などの全行政
サービスなど、多目的に活用できるようにするプロジェクトである。
インド政府は、新たに「Unique Identification Authority of India=インド
身分証明庁」を設立し、ITソフト民間企業大手インフォシス・テクノロジー
社の創始者の一人であり、現副会長であるナンダレ・ニレカニ氏を長官に任命
した。
本プロジェクトの初期予算は約20億円であるが、次に約2000億円、最終
的には3兆円規模になるといわれている。全て公開入札ベースの公共事業、当
然インフォシスが有利になるだろう。先日、ウィプロも入札に参加する事を表
明した。世界のITソフト業界も注目している。
適材適所に人材を活用するインド政府、他方、「常に汚職の疑惑が付きまとう
国家プロジェクト」、だが、今回のニレカニ氏の任命には歓迎の声が多い。
プロの活用「インドの為に能力を発揮してくれるだろう」という期待である。
「長官に任命されたなら、彼なら公人として公平に業務を全うするだろう」と
言う期待である。ーーーインフォシスもやりにくくなるだろう。
大臣や長官に任命されてから付焼刃の勉強をする日本の政治家、選挙対策用の
箔付け? 結局、腰が落ち着かず、任務を全うすることなく、恥をかいて直ぐ
替わる。ーーー課せられた任務に心が感じ取れない。
先日、インドの重要問題の一つである国営企業民営化の長官に、35年も国家
公務員として地道に働き、近年は西ベンガル州に拠点を持つ26社の国営企業
の民営化に大きな役割を果たしてきた、プロのスニール・ミトラ氏が抜擢され
て話題になっている。
株の売却の方法やタイミング次第では、5千億円程度の純収入が見込まれる。
この1〜2年で、日本の民営化事業との違いがはっきり見えることになるだろ
う。
= この稿おわり =
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