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インド事報・インド徒然 ―――――― by はぐれ雲さん
☆ インド綿花農民5千万人一喜一憂 ―――――――― 2009/01/07
2002年、インドは大旱魃となり、農業は大打撃を被った。地平線までヒビ
割れた大地、なす術もなく畑の真ん中に座り込んで空を見上げる皺だらけの老
農夫、インド各地で催された古風な雨乞いの儀式は印象的であった。

インド農村の灌漑設備はまだまだ貧弱であり、大半が自然に依存する農業、定
期的に来るモンスーン次第で収穫量が左右される状態である。インドでは大洪
水と旱魃が定期的に繰り返される。

被害が一番大きかったのは綿花農民、自殺者が相次ぎ社会問題になった。

翌年のモンスーンは平年並み、綿花の収穫量は平年並みに戻ったが、綿花農民
は質の違う難題に直面した。ーーー綿花の国際価格低迷である。

綿花の価格リーダーはアメリカ。

アメリカ産綿花は「超大型農法」と「遺伝子組み換え種子」の開発・使用によ
り、生産コストは圧倒的に低い。その上に輸出補助金も付く。綿花の国際価格
は、アメリカの価格に引きずられ低迷し続けていた。

インド綿花農民は遺伝子組み換え種子導入など、生産コストを削減する努力を
したが、技能と技術が追いつかず、更に気候・土質の違いもあり、殆ど徒労に
終わってしまった。

一番大きな壁は、印米両国農民の規模と資本力の差だろう。経営難に見舞われ
またまた自殺者が相次いだ。

現在、WTOでアメリカの農業補助金が大きな争点になっている。特にインド
とアメリカの激しい対立、インドにとって怨念に近い譲れぬ感情問題がある。

この数年、地球温暖化問題の取り組みが脚光を浴び始め、その中での原油価格
の高騰、バイオ・エタノールの採算性が向上し、綿花生産者の中からウモロコ
シ等バイオ・エタノール原料用作物に転作する者が増え、世界全体の綿花生産
量は減少傾向にある。特にアメリカの綿花生産量は大幅に減少している。

他方、綿需要は旺盛、特に中国の国内消費の伸びは著しい。

中国の綿花生産量はダントツの世界一位だが、消費量もダントツの世界一位、
昨年、中国は綿の純輸入国に転じている。ーーー中国の耕作面積の拡大は限界
点に達しているので、大幅な綿花生産の増加は望めない。

中国国民の大勢を占める底辺層の生活レベルが着々と向上し、日用必需品の消
費量は増大傾向にある。中国政府は景気後退・輸出減少の緊急対策として農村
に於ける消費拡大促進政策を推し進める方針を決定した。

電化製品などは政府が購入補助金をつけ販売促進を企んでいる。だが、農村の
需要拡大は第一に「食」、次は「衣」になるのは自明だろう。人口が巨大なだ
けに、絶対増加量も巨大である。これから寒い冬、失業し故郷に帰らざるを得
ない農民工も多いだろう。当然「衣」の需要は増える。

綿花生産国NO.2はインドがアメリカに取って代わり、アメリカはNO.3
になった。しかし、綿花輸出国のNO.1は依然アメリカでダントツである。

NO.2はインド、輸出の構造は変わっていない。それ以外の産地はブラジル
パキスタン、…あとはマイノリティーである。綿花・綿製品、中・米・印の3
国の需給体制がどう変わるかで、世界の状況が大きく変わる。

人口大国インドの国内綿需要も着実に増えている。

だが中国と違い暑い国、「衣」の絶対必要量は中国より遥かに小さい。また、
貧困者の貧困度も中国より厳しい。需要の爆発的増大は望みえず、徐々に徐々
に増えていく、それがインドのスタイルである。

この2年、ファンドの相場商品市場乱入により綿花の国際価格も上昇、世界の
綿花農民は一時的に特需を享受した――――。

しかし、ファンドが相場商品市場から手を引き、更に景気後退による需要減退
の懸念から、原油を含む全ての相場商品価格が急落し、5年前の水準に戻って
いる。

オバマ次期大統領はバイオ・エタノール農家を補助する意向のようだが、今後
の原油価格次第でどうなるか判らない。トウモロコシから綿花に再転作する農
民が出てくるだろうか? 農業補助金を増やせば、再度WTOで揉めることに
なる。

綿花の国際市場価格?ーーーアメリカの生産量、中国の消費量=輸入量次第だ
ろう。中国のアメリカ向け繊維輸出が大幅に減っているが、その原材料減少分
と、中国国内需要増加量とのバランス、がどうなるかが綿花価格を決める大き
な要素になる。

インドで綿花農民の自殺者が多く出た数年前から、状況は大分変わってきてい
る。ーーー世界の綿の需給体制が変わり、ほどほどの値段で綿花が売れるよう
になれば、インド農業は大分変わってくる。

何故なら、インドで綿花に携わる農民及び関係者は約5200万人、綿織物関
係者は3400万人、合計8600万人。家族を合わせると2〜3億人が綿花
に関係している。綿花の価格により、彼らの生活も変わってくるからだ。

アメリカのトウモロコシ農家がどうなるか? 中国の国内需要がどうなるか?
綿花の国際価格がどうなるか?ーーーインド綿花農民にとって最大の関心事で
ある。数年前に自殺者が多発した時とは大分様相が変ってきている。

地球温暖化問題に対する取り組みが重要になってきており、環境に優しい産品
が注目され始めている。インド産綿は「オーガニックコットン」が多い。

インド綿花・綿布・綿製品が久しぶりに注目されてくるかもしれない。

ーーー「食」ばかりでなく「衣」も注視しておいたほうが良いようだ。

                        = この稿おわり =
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┌──────────「KOTOさん」40代@男性@海外 いつも鋭い視点でインドの情報を分かりやすく発信頂き、とても興味深いもの があります。 綿花関連の相場に関してですが、最近は需要と供給だけではなく、色々な経済 指標、穀物相場の動きと連動しています。 直近でようやく綿花独自のファン ダメンタルに基づく動きがありましたが、あくまでも限定的であり、どうして も投機や、ファンド系統の動きに連動しがちです。 基礎的な綿花の需給は、はぐれ雲さんのいう内容で正しいと思いますが、国際 市場価格は需給だけでは測れない難しい局面が続いています。 米国は綿花に 関する輸出補助を打ち切りました。 国内保護は綿産国のほとんどが行ってお り、米国だけターゲットになるのは第三者から見てもおかしいと常々感じてい ました。 インド、中国は、政府が農民から綿花を買い上げ国内価格を下支えています。 これも需給を左右するひとつの要因であり、在庫管理の方法に関しての声明が ないため不透明な要因の一つとなっています。 農民が穀物高の恩恵を受けるために国際価格が高いのは良いことかもしれませ んが、相場の下落に対しても国が介入して国内農産業を保護する傾向もありま す。 また穀物が高くてもそれをPROCESSINGする企業、ひいては消費者への転嫁は特 に繊維産業では難しいと思います。 従い、価格が騰がるのも農民の収入をあげるひとつの方法ですが、やはり収穫 高をあげる方法が一番と思っています。 そのような意味ではまだまだインド では農業を近代化することで大幅に改善する余地があるように感じます。 雑感ですが、ご参考まで。
└────────── ┌──────────「はぐれ雲さんから」
KOTOさん、ご意見有難う御座います。 インドの抱える問題、中国同様、貧困な農民・農村対策です。インドの耕地面 積は中国の1.13倍と言われています。しかし単位面積の生産能力は、作柄 によって異なりますが、総じて、中国の50%以下と言われています。 原因は、気候など自然環境の違いが大きいのは当然ですが、政治的要因も大き いと思います。 独立後「食」に関する穀物生産には、国として技術改良・生産能力改善に力を 入れましたが、綿花に関しては、数百年前と同じ状態、手付かず状態です。 これから、独立後の保護政策の段階から「国際競争力」をつける段階へ生産力 向上の段階へ、やっとインドも動きつつあるようです。正に「貧困問題」対策 です。時間はかかるでしょうが…。 先日、東レ経営研究所が出版している「繊維トレンド」という機関誌の1、2 月号に、「インドの繊維産業」というタイトルで寄稿しました。2回に分けて レポートします。機会がありましたら、お読み下さい。 └────────── ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘ └→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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