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インド事報・インド徒然 ―――――― by はぐれ雲さん
☆ インド・シン首相、訪日訪中の目的は? ――――― 2008/10/29
インドのマンモハン・シン首相が訪日。日本の政局が揺れており、外交官筋で
は訪日延期の可能性も伝えられたが、変動の激しい世界情勢、日に日にトップ
外交の重要性が増しており、日本の政局どころではない、というのがインドの
本音だろう。

マンモハン・シン首相は、日本訪問後、中国首脳との会談を予定している。

その中国には、先にパキスタンのザルダリ大統領が訪問し、何やら中国と原発
に関する密約を交わしたという噂が流れている。

マンモハン・シン首相の訪日目的は容易に推測される。大きな点は5項目、

1.米印原子力協力協定に関し、NSG(原子力供給国グループ)の事務局であ
り、唯一の被爆国としてNSGの実質的幹事国と認知されていた日本が、NP
T非加盟国であり核保有国であるインドとアメリカの協定を容認した事に対す
る感謝表明、及び、日本の原発先端技術提供要請。

アメリカ追随の日本、アメリカの要請により米印原子力協力協定を日本がいず
れ容認する事は目に見えていたが、被爆国日本の国民感情問題もあり、インド
も大分気にしていた。

この件に関しては、小泉元首相の時代から、インドは日本に礼を尽くして理解
と協力を求めていたが、日本側は明確な回答を避けていた。この問題は日本社
会では余り真面目に議論されなかった。

気がついたら日本政府が容認していた、というのが実態だろう。政府は真面目
な議論を避け、穏便に容認する策を選択したのだろう。インドは日本に真面目
に議論して欲しかったのでは、と思う。

日本国民でこのSNG=日本容認の重要性を認識している人は少ないようだ。

2.デリー⇔ムンバイ間の大量貨物輸送専用鉄道建設計画への協力要請。
日本は積極的に協力する姿勢を示すだろう。総額5000億円を越すプロジェ
クト、日本企業の関与が期待されるプロジェクトでもある。

3.日印EPA=経済連携協定)の早期締結…12月頃、具体化する可能性が
ある。

4.日本の進んだ環境関連先技術の提供

5.日本政府による日本企業のインド進出支援

実際はこんなもんだろう。社交辞令として、昨今の金融危機対策に関する国際
協力やテロ対策など、話題とされるだろうが一番の目玉は1、2、4だろう。

マンモハン・シン首相は、日本の次に中国を訪問する。表面上の課題は印・中
の交易拡大・有効関係強化などであろうが、腹芸として、印・中国境問題と中
国・パキスタン接近に対する牽制があるだろう。

中国の動きは、パキスタンや、最近頻繁にインド辺境地域で騒動を起こしてい
る毛沢東主義者過激グループの問題もある。

内政干渉をしないインドではあるが、インド経済圏である隣国ネパールの問題
もある。ここも毛沢東主義者グループが実権を握り始めている。インドにとり
辺境地域は防衛上重要な問題、敵国は中国である。

パキスタンは、原子力開発に関しインド同様アメリカに協力要請したが、あっ
さり断られてしまった。「何故インドに協力し、パキスタンには駄目なのか」
ーーーパキスタンにはアメリカの差別待遇に強い反発がある。

テロ戦争ではパキスタンを「同盟国」と美化し、原子力では宿敵インドに協力
し「パキスタンを危険な国扱い」するアメリカに対し、パキスタン国民の反米
感情は日に日に高まっている。その最中に米印原子力協力協定が発効した。

対抗上、昔からパキスタンに協力姿勢を示し、パキスタンを陣営に取り込もう
としてきた中国にパキスタンが協力要請するのは、至極当たり前だろう。中国
・インド・パキスタン、3国が複雑に絡まる問題である。

だが、パキスタンもNPT非加盟国、中国が協力するといっても、NSGの容
認が必要となる。認めれば、NPT体制は崩壊する。イランも北朝鮮も黙って
はいない。NSG事務局・日本の立場は窮する事になる。

マンモハン・シン首相の訪中、中国の動きを牽制すると共に、パキスタン問題
に関しては、何らかの方法で、抽象的ではあるが、‘理性’を重視するよう中
国の了解を取り付ける心算なのだろう。

インド・中国の外交戦略戦、アメリカのパワーが減退する21世紀はこの両大
国の関係が極めて重要な要素になる。インドはまだ経済小国であり、経済的パ
ワーはないが、政治的、外交的に、徐々に国際社会に影響力を高めつつある。

日本は10回目の非常任理事国として選出された。

全世界の国が、インドは‘常任理事国入り’に相応しいと認めている。

日本は、米・英を含む殆どの国が常任理事国入りに賛成しているが、中国は態
度を保留している。中国は国民感情を考え、当分は日本の常任理事国入りに反
対する心算だろう。

マンモハン・シン首相の腹の内、インド全体の気持であろうが、戦後の国連常
任理事国5ヶ国体制に対する反感・疑念がある。戦勝国・植民地支配者・ロシ
ア・中国、戦後5ヶ国体制、これを是正できる国は今はインドしかない。その
インドを牽制する国、それも中国である。

もし、日本に先を読める大物政治家がいたら、中・印・日のバランスを考え、
秘密裏、かつ、トップ間のみで、何らかの意思疎通を図るのだろうが、日本に
はそんな政治家もいそうもないし、インドも期待していないだろう。

21世紀初頭の「アジア三国志」そういう視点から見れば面白いのだが、日本
には器がいない。ただ経済のみ――――。

ーーー寂しい気がするが、それも日本の宿命なのだろうか…。

                        = この稿おわり =
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