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インド事報・インド徒然 ―――――― by はぐれ雲さん
☆ 栄養失調者2億2千万人〜それでも大幅減少 ――― 2008/07/09
急成長で脚光を浴びているインド、しかし未だ誤解も多い。ーーーその最たる
ものは食糧問題。最近でこそインドが飢餓状態にあると思っている人は減った
が、一昔前までは何故だか判らないが‘飢餓に苦しむインド’という印象を拭
えない日本人が多かった。

最近の誤解の代表的な事例は、先日のブッシュ発言「食糧価格高騰の主因は、
インド人の食糧消費拡大にある」と演説。ーーーインドは猛反発した。

「諸悪の根源はアメリカにある!」「アメリカのバイオエタノール用穀物消費
拡大に端を発し、穀物価格と原油価格が連動する市場メカニズムが定着し、そ
のメカニズムが穀物価格を引き上げていることは疑う余地もない!」「自国の
ことを棚に上げてインドを非難するとは無礼である!」と完璧に怒っていた。

ブッシュ大統領ばかりはでない、多くの政治家や経済人がインドを知らないの
が実情である。

ーーー穀物だけではない。

原油、食肉・乳製品などに関しても、マスコミは「価格上昇の原因は、成長著
しい中国とインドの消費急増…」と、何時も‘中国とインド’を並べて報道す
る。‘中国’と‘インド’は、人口大国である点は同じだが実態は大分違う。

「中国が…」と中国単独で表現すると批判的になるので、インドを道連れにし
ているのか、本当にインドを知らないのか、どちらかであろう。

インドは中国に次ぐ世界2位の小麦と米の生産国である。

食肉に関しては、80%強のヒンズー教徒(の殆ど)は牛肉を食べないし、ヒン
ズー教徒と、約13%を占めるイスラム教徒(の殆ど)は豚肉を食べない。牛は
約2億8千万頭。70%は零細農家が飼っている。一家族で2〜4頭。牛と共
生している。

餌は野原の草が主で、穀物飼料使用量は少量である。糞は天日乾燥し、燃料用
乾燥牛糞にする。農家にとり、乾燥牛糞は現金収入となる貴重な商品、牛=神
=自然界からの恵み物である。

ミルクはチャイの主材料。インドの農家は自然のリサイクルを巧みに活用して
いる。ミルクの生産量は年間9千万トン超、ダントツの世界1位である。小麦
も米も、野菜・果実、鶏肉・鶏卵、乳酸品、エビ等の水産品も、そして紅茶、
香辛料…食料・食品の大輸出国である。

皆が耳を疑うが、牛肉の消費量は世界4位の大消費国でもある。1億5千万人
のイスラム教徒が食べるからである。

戦後、世界の農業はアメリカの「超安価な生産コストと農業補助金に基づく低
価格輸出」に影響され歪んでしまった。アメリカの価格に競合できない国の農
業は、主要農産物である小麦や米の自国生産を諦め、商品作物への転換を余儀
なくされた。

いま世界は、アメリカ発の穀物価格高騰により困難に直面し、農業政策の見直
しを迫られている。

ーーーインドの農業、

国土は中国の三分の一だが、耕地面積は中国の1.13倍である。しかし単位
当たりの生産性は中国の50%以下、主因は農業用水の不足と遅れている農業
技術、ーーーもちろん一番大きい根本問題は小作人・貧困問題だが。

インドの農業は、改善の余地が極めて大きい。言い換えれば、成長の可能性を
十分秘めていることになる。

農業を一例として紹介したが、インドに関しては知られていないことが多い。

原油は約70%輸入依存だが、原油消費量は中国の三分の一強である。原油精
製能力が足りず、増やそうにも増やせないのが実情である。問題は、将来的に
増える需要に対し、CO2排出=環境問題の観点でどう対処するかにある。現
在の原油価格高騰には直接関係はない。

電化率は約50%。50%強の家庭用燃料は乾燥牛糞である。この乾燥牛糞が
化石燃料に変わればそれこそ地球の一大事となる。

ーーー環境問題、

最近は環境規制が厳しくなり、環境基準を満たしていない工場は認可が下りな
くなった。NGOの影響力が強いのもインドの特徴である。特に環境問題に関
してはNGOの看視が厳しい。環境問題はインドにとり‘後進性のメリット’
となる。ーーー国際的技術支援や資金援助が期待できるからだ。

「連立政権だから不安定」というが、将来的に連立政権はインドの政体の基本
となるだろう。連邦制国家の特殊性がある。「貧民が国家リスク」という人も
いるが、政権を支えているのは80%を占める貧民の票である。連立政権と貧
民はインドの安定性の基盤である。

先日、国家計画委員会が発表した2007年度の栄養失調者数は2億2千万。

栄養失調者の規定は定かでないが、人間が健康に生活を持続することができる
最低熱量2100カロリーを摂取できていない者、というのが一般的だが、イ
ンドの場合、基準を2400カロリーにしている。2億2千万人!驚異的な多
さだ。
・・一方、フォーブスが発表した昨年度のビリオネアは53名で、53名の個
人資産合計は3千405億ドル≒35.8兆円という驚異的な数字である・・

政府が調査した数字によると、栄養失調者の数は1993年では3億2千人以
上。2000年度では2億6千万人、地方・農村部で27%、都会で23%の
住民が栄養失調であった。2007年度は、地方農村部で21%、都会で15
%、全国平均19.3%となっている。

インド人の5人に1人が栄養失調…、世界の栄養失調者は約8億人、その内の
約25%がインドにいる現実、ーーーこの数字を、どのように理解するか、ど
のように感じるか…。

1993年度と比較すれば14年で栄養失調者が1億人減少したことになる。
2000年度と比較すれば7年で4千万人減少、ーーーインドの人口は毎年約
2千万人増加している。それを考慮し単純計算すると、14年前に比べれば2
億人以上の人間が栄養失調から解放されていることになる。

インドは、2000年以降急速な経済発展を遂げ、特に過去3年は9%以上の
経済成長を遂げている。急成長を遂げはているが、per capita=一人当たりの
GDP)をみれば昨年度の数字でも約792ドルと低く、アフリカ諸国並み、
パキスタン以下である。

ーーー中国は2006年度で2012ドルなので中国の三分の一強である。

インドの場合、11億5千万人という巨大な人口を抱えているので、数字は異
常に低くなる。ーーーそこにインド・マジックがある。

栄養失調者の数の多さに関しては、悲観的になるより、よくぞここまで改善し
た、といったほうが妥当だろう。

貧困者救済はインドの宿命である。今年度予算で、教育費は前年比20%増、
かなりの金額が、教育費、特に生徒の給食費に充てられる。誰も反対する者は
いない。インドの食糧問題・インフレ問題は国家的重要問題。

内政不干渉主義を貫くインド政府。急成長を遂げているが、常に国内の数億人
の貧民問題を抱えている。彼らも有権者で、彼らを敵に回しては選挙に勝てな
い。貧民の為の政治、これがインド民主主義の基本中の基本である。ーーー今
回の‘コメ輸出規制’の背景でもある。

2億2千万人の栄養失調者を対象にした‘慈善事業ビジネス’…、単なる慈善
事業でなく、‘適正利潤・最大貢献事業’…、最低必要なカロリーと栄養成分
を満たし、且つ、安価な食品を提供する事業。

ーーー日本には生産・加工技術がある。

農業技術、種苗の技術もある。そのノウハウの提供でも、かなりの貢献になる
だろう。ーーー但し、一生懸命努力しているインド政府・インド人のプライド
を傷つけないように注意を払いながら、協力することが基本であることは、言
うまでもない――――。

インドの様々な経済数値をそのまま判断基準とすることは、その背景を理解し
ていないと危険である。誤解を生み易い。特に一人当たりの消費量、などとい
う数値はインドでは余り参考にならない。

ーーー多様性・多面性のある小宇宙、それがインドだろう。

                        = この稿おわり =
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