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インド事報・インド徒然 ―――――― by はぐれ雲さん
☆ インド経済今年度8.5%成長予想 ――――――― 2008/07/02
原油価格の高騰、国内インフレの進行、アメリカ景気後退によるIT関連ビジ
ネスへの悪影響、更に、政権与党である国民会議派が地方選挙で劣勢に立たさ
れている。このような最近の状況を見て、インドの先行き不安を煽る向きがあ
る。ーーーインドを知らない投資家は不安がるだろう。

先日、チダンバラム財務大臣が、2007年度(07年4月〜08年3月)の経
済指標を発表した。GDP経済成長率は9%、今年2月の修正予想は8.7%
であったので、インド経済の実態は余り悪くなかった、ということだろう。

05年度は9.4%、06年9.6%、これで3年連続9%台の経済成長を遂
げた事になる。今年度の成長予想は世界の経済環境を考慮し、控えめに8.5
%としている。

成長率を上方修正させた一番の要因は、農業分野の成長。06年度の成長率は
2.6%であったが、07年度は4.5%、良好なモンスーン、農産物価格の
上昇などが背景にある。

一人当たりのGDPは3万3299ルピー=現在の換算率で約792米ドル)
12.3%の増加である。今年のモンスーンは平年並みだが、1週間ほど到着
が早まっている。今年の農業部門の成長も順調だろう。食品加工分野も徐々に
成長している。

アメリカ経済の後退によるインドへの影響は、一般経済に与える影響より、む
しろ株価の下落、それに伴うIPOの先送りが注視すべきポイントだろうが、
それも時間の問題だろう。

昨年後半のインド株価はオーバーヒートの状態であった。今年初頭、史上最高
値の20756.95ポイントまで急騰したSENSEX指数は、世界株価同
時急落時、一時14000ポイント台にまで急落した。

最近は落ち着きを取り戻し、16500〜17000ポイントで推移し、短・
中期的には上昇傾向にある。もっとも、10000ポイントを超えたのは06
年3月、現在の株価は2年前に比べれば60〜70%上昇している事になる。

インドの株価は修正局面を脱したようだ。株価が持ち直し、インド経済の見通
しが良く見えるようになれば、IPOは必然的に増えてくるだろう。インド企
業は虎視眈々とIPOのタイミングを狙っている。

インフレはインドだけの現象ではない。現在、世界中がインフレに直面し、社
会問題になり始め、一部地域では暴動も起き始めている。

原油価格高騰、食料価格高騰の影響を受け、直近のインドのインフレは8.1
%、由々しき問題である。インド政府は緊急インフレ抑制策に踏み切る模様。

既に政府の要望に応え、鉄鋼メーカーやセメントメーカーが製品の値下げを発
表している。小麦も米も豊作である。米の輸出規制に関しては国際的に批判さ
れているが、国内価格安定化のため早々と実施、国際価格に引きずられた国内
価格上昇を防止している。

主要穀物の輸出国インド、食料品インフレに関しては何とかなるだろう。

原油の高騰は国際共通問題、異常事態であるが、これは“なるようにしかなら
ない”と居直っている。インドだけの問題ではなく、今や「世界の問題」であ
る。

インフレを利用した野党の反政府キャンペーンは頭痛の種。

直近の地方選挙で、与党・国民会議派は劣勢に立たされている。現政権にとり
来年の総選挙を念頭に入れたインフレ対策が最重要事となっており、早め早め
の対策が打たれる筈である。

但し、金利に手を付ければ経済成長を阻害することにもなる。そう簡単ではな
い。しかし、他の諸国と比較すれば、インドはそう困難な局面にあるとは思え
ない。マネッジ可能な範囲にあるといえる。政府に余裕が感じられる。

重要地区での選挙で、国民会議派は立て続けて敗退、客観的には劣勢に立たさ
れたており、次の総選挙で政権交代の可能性も出てきた。或る調査によれば、
国民会議派の支持率は約25%、最大野党BJP=インド人民党)の支持率は
約35%、そうすると約40%は他党派指示ということになる。

ーーー調査の信憑性は定かでないが、そんなものかも知れない。

インドは連邦共和国、インド独立から長期間はインド全体の国政が重視され、
従い、天下国家論が選挙の焦点となっていた。

インドの政界は、独立を果たした主役であり、独立後のインドをリードしてき
た「ガンジー・ネルー家」率いる国民会議派と、ヒンズー至上主義のBJPの
2大政党がリーダー格であったが、独立当時より多くの地方政党が存在してい
た。

時が流れ、国民の関心事は天下国家精神論から、具体的な実社会生活の方向に
移り始めるのはごく自然の流れだろう。

独立後、連邦共和制を選択したインド。

‘廃藩置州’で「州」を設定したが、「州」は同じ文化・慣習・言語を基本に
分割・制定され、ある程度「州の自治権・自主性」が認められた。州政府は州
の名士を中心に組閣されたものが多い。日本の藩主を温存させた政体に近い。
ーーー世襲政治家も多い。従い「州」独自の政党ができ易い素地がある。

「州」といっても、UP州など、日本の人口以上の州もある。経済成長と共に
地方政党が力を付け始め、地方政党を無視してはインドの政治が成り立たなく
なってきている。そのような州で、国民会議派の集票力は弱くなりつつある。

今後、その地方政党をどのように組み入れるかが、2大政党の最重要事となっ
てきている。

現在、連立政権ゆえに不安定といわれているが、将来的に連立政権がインド政
治の基本となる可能性が大きい。即ち、州の政策を十分反映した国政が重要な
ポイントになる。国力としては弱くなり、多少経済成長の阻害要因となる事も
あろうが、一国の政治体制としてはむしろ安定感が期待できる。

連立政権はインド型民主国家体制である。与党がどちらに変わっても、経済政
策と外交政策はあまり変わらない。変わるのは州政府を重んじた内政である。

住民の主張を聞けば聞くほど、経済の成長のスピードを緩める事になる可能性
がある。他方、住民の主張を聞けば聞くほど国は安定する。住民レベルの生活
水準が向上し、結果的に可処分所得が増え、消費が増加し、経済効果が期待で
きよう。

不安定な連立政権、さしたる政治リスクでもないだろう。経済成長スピードに
多少影響するかもしれない程度の問題である。

中国とインドを比較して、インド・リスクを言いたがるアナリストが多いが、
インドはインド、これ以上には落ちようが無い国だったインドが、やっとその
状況から脱却し、今、ダイナミックに離陸しようとしている。

ーーー‘自然の潮流’は変えられない。

インドの成長は、正に‘自然の潮流’に乗っている感がある。

今年度のGDP成長予想は8.5%、かなり遠慮した数字に思える――――。

                        = この稿おわり =
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