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ラオスからの手紙 ―――――― by 桜ちゃんのパパ
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☆ ラオス人の名前の呼び方 ―――――――――――― 2009/02/16
ラオスに何年も住んでいるのに、よくわからないのが、ラオス人をなんと呼ん
でいいか――――。
ご存知のように、ラオス語では自分と其の人の社会的地位、年齢によって呼び
方を変える。ーーーこれが外国人には難しい。
そして、日本人はラオス社会のヨソ者の範疇にはいっているとみなされるのか
またはアメリカ人みたいにファースト・ネームで呼び合っていいと思っている
のか、たいていは呼び捨てで呼ばれているみたいである。
さて、私も事実、ずっと呼び捨てで呼ばれていた。
妻の親戚は私のことを「明雄」と呼ぶ。しかし、彼らのなかでは家族・兄弟は
中国語の「阿」をつけて呼んでいる。たとえば淑珍なら阿珍、少梅なら阿梅と
か「阿」は日本語でいえば「−ちゃん」に当たる。
子供ができてから、妻は私のことを「お父さん」と呼ぶようになったのでいい
のだが、私は日本人に生まれて、たとえラオス語を喋っていても呼び捨てにさ
れるのが嫌である。
ある日、愛娘の桜チャンに父親の気持をうちあけた。
さすがは桜ちゃん、さっそく一番仲のいい梅ちゃんに説明し、梅ちゃんを通じ
て親戚兄弟に説明してくれた。それ以降は、親戚兄弟の間では「明雄さん」で
統一された。ここまで来るのに15年、ーーー思えば長かった。
ちなみに、去年亡くなったオフクロも、わたしのことをいつもちゃん付けで呼
んでくれたっけーーー。
学校の校長先生の末っ子に生まれた母は、両親兄弟に溺愛されて、結局何もで
きないお嬢様で育ったのだが(ただし金持ちではない)、祖父は自分の子供をす
べてちゃん付けで呼んだ。
普通は親が子供を呼ぶのだから、呼び捨てでもいい。しかし子供の人格を尊重
してこのように呼んでいたらしい。おかげで、私も自分の娘は2人ともちゃん
付けで呼ぶ。桜ちゃん、蘭ちゃん、というように。
蘭ちゃんは、ラオスの友人からは蘭ちゃんと呼ばれている。チャンはラオス語
では「お月様」。ラオス人の名前はセ−ン・チャン(月の光)とか、月がつく名
前が多いので、ラオス人も「蘭ちゃん」を月に関係している名前だと誤解して
いるのだろう。
さて、ラオス語の名詞の活用について説明しよう。
たとえばデ−ン(赤)さんという女性がいる。彼女をどのように呼ぶか、デ−ン
という固有名詞を活用する。
(1)イー・ハー
(2)イー・デ−ン
(3)デ−ン
(4)ナ−ン・デ−ン
同じデ−ンという女性を呼ぶのにもこのように活用してくる。
まず最初の(1)イー・ハーは、これを本人の前で言ったら喧嘩になる。または
喧嘩する時に出てくる言葉である。「イー」は、女性またはメスであることを
示すために他の語の前につける。蔑称として女性名の前につける。
「ハー」は、コレラ、ペスト、などの疫病を流行させると信じられている幽霊
の一群、疫病神、これは非常に下品な言葉でイー・ハーになると「この阿婆擦
れ、くそ女」という感じで、最高にお下品な言葉になる。
「イー」の男性形に当たるのが「バック」である。
(2)のイー・デ−ンも、これもデ−ンさん本人のいる前では言わないほうがい
い。しかし、ラオスの庶民は、本人がいないときはこの呼び方を好むようであ
る。
(3)のデ−ンは、日本でいえば呼び捨てで失礼にあたるが、ラオス人同士では
普通である。
(4)ナ−ン・デ−ンとなると丁寧になってくる。ナ−ンは「嬢、ミス」に当た
るので丁寧な言い方である。
桜ちゃんが「お父さん、ラオス人の呼び捨ては彼らにとっては普通なんだよ、
だから呼び捨てにされても怒らないで。女性に対する蔑称である「イー」を付
けたり、それよりもっと下品な(1)のイー・ハーみたいな言い方があるから」
桜ちゃんに聞いてみたけれど、ラオス語には、日本語の「呼び捨て」に当たる
ラオス語がないようである。
(2)のイー・デ−ンという呼び方であるが、妻がいつも近所のデ−ンさんのこ
とを、陰ではイー・デ−ンと呼んでいるので、私も妻の口癖で本人のいる前で
当人に向かって「イー・デ−ン」と呼んでしまった。
後で妻に注意された。それならわざわざイーをつけないでデ−ンと呼び捨てに
すればいいものを、やはりイーを前につけないと言葉として落ち着きがないの
だろう。どうも座り心地が悪いようである。
ラオス人の名前は2音節が多いので、例えば「カム・デ−ン」「カム・サイ」
など、デ−ンだけではどうもしっくりいかないのかな。
家族親戚同士なら名前を呼び合うのは日本でも当然だが、(だって同じ村山家
の父である村山明雄と、娘の村山桜がおたがいに「村山さん」と呼び合ってい
てはおかしいから。
それでは、ラオス語で自己紹介するのにどうすればいいのか?
CDエクスプレス ラオス語というラオス語を勉強するための本がある。著者
は鈴木玲子先生という日本のラオス語界では一人者の方で、東京外国語大学の
先生である。
その中にこんな例文があった。
私は田中健治と申します。コイ・スー ケンジ タナカ
ここで疑問なのだが、どうして日本人の名前をヒックリかえしていうのか?
たぶん他の本でも同じだろうが。ラオス人と日本と逆で、名前・苗字の順番に
なるからそれに合わしたのだろうか。
日本人は、苗字→名前が順番なのだから、「わたしの苗字は田中です。名前は
健治です。日本人はラオス人と違って、苗字の次に名前をいいます。中国、韓
国、ベトナム、カンボジアと同じです。そして、わたしのことを○○と呼んで
ください」
という例文を教えたほうがいいと思う。(○○は本人の希望で苗字でも名前で
もどっちでもいいと思うのだが)
北京オリンピックを見ていて思ったのだが、どうして日本選手は親からつけて
もらった名前を逆さにして登録するのだろうか? 中国や韓国の選手はちゃん
と自国流の表記でやっているのに。KOUSUKE Kitajima、RY
OUKO Taniでは欧米の植民地みたいでおかしいと思う。
また、日本に留学しているラオス留学生でも2つのパターンがある。
ひとつはラオス流に、名前・苗字の順番で登録し、日本人には名前を呼んでも
らうようにしている人。もう一つは、日本流に順番を変えてしまうタイプであ
る。
わたしとしては、日本にきてもラオス流を貫くタイプにラオス人としての誇り
と尊敬を感じる。
日本に来たラオス人看護婦が、カウンターパートのボランティアの名前を言う
のだが、わたしには誰が誰かわからなかったことがある。つまり○×子、○○
子とか、みな苗字ではなく名前なので、どこの誰か皆目見当もつかない。
日本人は苗字でお互いに呼び合うので、いきなり下の名前を呼ばれてもわから
ない。
どうも、自己紹介は、簡単なようで実は難しいことかもしれない。肝心なこと
は、私のことを○○と呼んでください、という文をちゃんと言えるようにする
ことだろう。
例えば、さん付けで呼んでもらいたい人は、○○の部分に「さん」もつけ加え
ればいい。また、名前で呼ばれたいか苗字で呼ばれたいか、すべて本人次第で
○○の部分を変えていけばいいわけだ。
外国語を勉強する場合、この違いを最初にきっちりと理解したほうがいいだろ
う。それがお互いの為であると思うーーー。
というようなことを、ラオスに来て17年目に、やっと分かってきた今日この
頃です。
= この稿おわり =
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