ラオスからの手紙 ―――――― by 桜ちゃんのパパ
☆ 義理の妹の広東語 ――――――――――――――― 2008/03/03

アメリカの華僑と結婚した14女のニアンちゃんが、1才8ヶ月になる長女を
連れて夫婦で帰省した。さっそく親戚・家族で「ノーン・スアム」というビエ
ンチャン近郊の魚料理が食べられるレストランにくりだす。

魚料理を食べながら楽しく歓談中、突然ニアンちゃんの叫び声に酔っ払って寝
ていた私は飛び起きる。

「ルーク・コーイ」「ルーク・コーイ」=わたしの子供)

ノーン・スアムは、湖の周りにラオス風の小屋を立てて、そのなかでラオス風
の焼き魚を食べるようになっている。小屋が池にせりだした形になっているの
で、わたしはてっきりニアンちゃんの子供が池に落ちて溺れたのかと思った。

子供が痙攣をおこして目を剥いて倒れている。グッタリしている。

一瞬の出来事に、皆はパニックに陥いる。ノーン・スアムはビエンチャンから
タゴンに行く三叉路から4kmぐらいのところにある。

とにかくビエンチャンまで連れていくことになった。

車はわたしが運転する。距離的にはタゴンにあるサイタニー病院が近い。しか
し、常識的に考えラオスの郡病院ではとても駄目、救急車を呼ぶのにも時間が
かかるし。

とにかくわたしの車でマホソットのインターナショナル・クリニックへ連れて
いくことにした。

淑珍とわたし、そしてニアンちゃんとその子供に旦那さん、助手席にはどうい
うわけか桜ちゃんが座る。ラオスの無茶苦茶な交通マナーの中、救急車みたい
に車をかっとばす自信は私にはない。

後ろの席にはニアンちゃんが子供を抱えて座っている。わたしはバックミラー
を見ながら車を運転する。どうやらニアンちゃんの子供はグッタリした症状か
ら回復したようである。先ほどまでひきつけを起こしていたのが、今度はワン
ワンと泣いている。

ニアンちゃんはパニック状態だった。こどもを抱いて叫ぶ「マミー・セック、
セック」「マミー、セック、セック」

最初のマミーは英語のようだ、あとのセック、セックが分からない。いったい
どういう意味なんだろう。ラオス語ではないし、英語なのだろうか?とにかく
わたしは子供を病院まで送り届けないといけない。必死に車を運転する。

やっとマホソット病院に着いた。あわてて救急外来に連れていき、これでホッ
とする――――。

病院に着くと子供の状態は普通に戻っていた。どうしてひきつけを起こして目
を剥いていたのかラオスの医者には分からない。両親はこどもの病状が知りた
い。そこで、その日のうちにメコン河を渡ってタイのノーンカイ病院に連れて
いくことにする。

ここでもパニックが起こった。

ノンカイに着いて、ジャンボに乗って病院へ行く途中、また子供がひきつけを
起こしたのだ。さっきまで元気だったのに、急にひきつけ・痙攣が起きたので
ある。子供が呼吸できないと思い、淑珍は子供の口に手をいれた。呼吸を確保
するためだ。お陰で彼女は指を噛まれてしまう。

ニアンちゃんは泣き叫ぶ。

「マミー・セック!セック!」「マミー、セック!セック!」

車の中はパニックになる。付き添いの淑珍の悲鳴。兄嫁のペーちゃんが「早く
!早く!」「頑張って!頑張って!」とわめく。まるでテレビ・ドラマみたい
な状況である。

ジャンボの運転手がノンカーイの公立病院に車をつける。そこから担架に乗せ
て救急外来に運ぶ。

酸素を吸入する。しばらくして子供は落ち着いてきた。その後3日ぐらい入院
して元気になって退院する。結局、タイの病院でも詳しく検査しても原因は分
からなかった。たぶん1歳8ヶ月の子供にとって、環境の変化が大きくてそれ
が発端で痙攣がおきたのではないか、ーーーこれは私の素人判断であるが。

その後、淑珍に「マミー、セック、セック」の意味を尋ねる。

「マミー」は英語で意味は「お母さん」。問題は「セック、セック」である。

これは広東語。広東語で「愛している」という意味らしい。客家語は「シアッ
ク」になる。つまり最愛の子供が死にそうな時に「お母さんはあなたのことが
大好きだから、死んじゃあ駄目!頑張って!」こういう意味で言ったのが「マ
ミー、セック、セック」である。

しかし、それではどうして客家語で言わなかったのか?

旦那さんが広東人で、義理のお母さんは広東語を使っているからである。しか
しこういったとっさの時に、ラオス語ではなく英語と広東語が出てきたとは、
彼女も結婚してむこうの家庭の人間になったわけである。

さて、客家語でアイ・ラブ・ユーは「ゴイ・シャック・ニー」である。結婚し
てから一度も妻から「ゴイ・シャック・ニー」を聞いたことがなかったので、
「セック、セック」も意味が分からなかったのだ。

不謹慎だけど桜ちゃんは「セック、セック」を英語と勘違いしていたらしい。

淑珍に聞く前に親子で「セック、セック」の意味を考えてみたのだが、どうし
ても意味が分からない。ひょっとして英語の「セックス」かな?とは桜ちゃん
の解釈である。ーーーさすが父親に似てヒョウキンである。(^^;

ちなみに、ラオス語の「シアック」は「擦る」という意味で、エッチな意味に
なるから気をつけよう。

その後ニアンちゃんはアメリカに戻った。ラオスの医療体制が悪い怖いので、
子供がもう少し大きくなるまで遊びに来たくないとのこと。医療の進んだアメ
リカに住んでいると、やはりラオスの病院は信用ができないのだろう。

ちなみに、客家語で子供をあやすのは「アノム、ネンネン」だとか。
亡くなったおばあちゃんが、こうやって子供をあやしていたらしい。

                        = この稿おわり =
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