ラオスからの手紙 ―――――― by 桜ちゃんのパパ
☆ ラオスつれづれ ―――――――――――――――― 2006/08/09

ラオスに来てまだ3ヶ月ぐらいしか経っていないある日本人に「あなたはまだ
ラオス語が下手だ。Xさんはあなたより上手だった」と、私と同期の協力隊員
が下宿の娘に言われて落ち込んでいた。
Xさんという方は、本人の努力もあったろうが、語学の才能のある人だった。

彼女についてはこんなエピソードもある。

ラオスに来て2年目ぐらいの時、仕事である村に行ったとき、村のおばさんか
ら「あんた、どこから来たの?」と聞かれてXさんが「日本から」と答えたら
「あんた、年上の質問には冗談言わないでちゃんと答えなさい!」とおばさん
から怒られたらしい。
Xさんのラオス語が完璧で、容貌もラオス人に似ていたので、Xさんのことを
ラオス人と勘違いしたらしい。

ただ、Xさんはすでに2年近くいて、協力隊員の人はまだ来て3ヶ月である。
単純に比較するのはどう考えてもおかしい。またこういうことは言われる本人
を傷つけるだけで、何の意味があるのか私には理解できない。

おそらくこういう失礼な発言をするのは、外国語を勉強したことがない人が口
にするものであろう。大人になってから自分で苦労して外国語を身につけた人
なら、自分の母国語と全然違う発音・文法体系の言葉を勉強するのが如何に難
しいか分かるはずである。

わたしの経験では、目の前で悪口を言われていると、決してその言葉が分から
なくても分かるものである。会話のなかで自分の名前が出てくると、耳をそば
だててリスニングするのは人の常である。まして言葉がぜんぶ分かるラオスと
タイの場合はどうだろう。

こういうこともあった。

毎日夕方に散歩する。その日はトンカンカム市場を歩いていた。前から痩せた
おじさんが歩きながら私に話しかけてくる。

「ムン・スーニャン」
ムンは「お前、キサマ」スーニャンは「何を買うの?」という意味である。

ただしこの「ムン」というのは非常に失礼な言い方である。普通は兄弟のよう
によっぽど親しくないか、また喧嘩でもしない限り言うべき言葉ではない。

最初に私は「ムッシュー」かと思った。これはフランス語のムッシューで、外
国人を見ると売り子のおばさんはこのように声をかける。

ただこの痩せたおじさん、何回も「ムン・スーニャン」と言った。

わたしは、このようなタメ口、失礼な言い方ができる人だからきっと以前、ど
こかで一緒に仕事をした人だと思った。とはいえ、あまり人の顔を覚えるのが
得意ではない私にとって、どこの誰だかすぐに分からない。

「チャオ・スーニャン」あなたの名前はなんですか?
と訊いてもおじさんは笑いながら答えてくれない。そしてそのまま歩き去って
行った。ーーー今でもよく分からない。あの人はいったい誰だったのだろう?

ラオス人は、知ってる人に路で会ったら挨拶するのだが、自分が知っている、
覚えていれば相手も知っていると解釈して名前を名乗らない。あんな乱暴な言
い方で話し掛けてくるぐらいだから、きっと私と親しい間柄だった人だろう。

〜〜〜言葉が分かってくると悩みも増えてくる。

挨拶で思いつくのが近所の子の教育・マナー・しつけ。

我が町ドンミアンは、ラオス人・華僑・フォンサリーから来たホー族、雲南か
ら来た新華僑が交わって住んでいる。近くに華僑学校があるので、近所の子供
で華僑の子は寮都学校に通う子が多い。

愛娘の桜ちゃん、蘭ちゃんの友達も、華僑やラオス人と華僑のハーフが多い。
近所の子供たち同士で遊ぶのは世の常。お互いの家に遊びに行くのはいいのだ
が、挨拶が全然ナイ。いきなり家に入ってきて、テレビを見たり、ベットに横
になったりは当たり前。

わたしは家の主だから、他人の家に来る時は「サバイディー」の一言があって
もいいと思うのだが、私の顔を見てもいっさい無視であるーーー。

子供の躾はどうなっているのか、「親の顔が見てみたい」そう思っていると、
他人の家に遊びに来ても挨拶もしない娘の親が、サムセンタイの義理の父が病
気で寝ているとお見舞いに行ってくれるのだからよく分からない。

ラオス人でも中国人でも、友達のお父さん、お母さんが病気だとよくお見舞い
に行くようである。こういったやさしい気持ちもあるのだが、こどもが他所の
家に遊びに行っても挨拶もしない。ーーーラオスに長く住んでいると、よく分
からないことが多々ある。

私が住んでいるドンミエン町は、コミュニティがしっかりしているというか仲
がいい。常日頃の交流がある。フォンサリーから来たホー族の連中は、彼らだ
けのグループで他との交流はほとんどないが、うちの近所は毎日、近くのコー
ヒー屋に人が集まってお喋りしたり、博打をしたり、マニュキュアをしたり、
醤油の貸し借りもある。

わたしの家ではよくお茶を飲むのだが、私が一杯飲むだけの分量ならお湯を沸
かすのがもったいないので、前のコーヒー屋からお湯をもらってくる。そうな
ると、前の家の娘は私の家に来ても挨拶はしない。

おそらくワイ・ノップといった挨拶は、はじめて会った時にするだけで、近所
の親しい間柄ではしないのがラオスの習慣だろう。しかし、いくら近所で顔見
知りの間柄とはいえ「サバイディー ポーサクラ」の一言ぐらいは言ってもら
いたいのが私の気持ちである。

ラオスでも高級住宅地域は、洋館で高い塀と門があるようなところはまた違う
だろう。

我が家はタウンハウスのワンブロックで、柵とドアはあるが、ブザーを押して
中に入るわけではないので、外部の人間も出入り自由である。おそらくラオス
でも、このような高級住宅地の人はちゃんとしたマナーがあるのだろう。

                        = この稿おわり =
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