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ラオスからの手紙 ―――――― by 桜ちゃんのパパ
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☆ タイ語とラオス語は違う ―――――――――――― 2006/08/02
ーーー義理の弟(ケック)の親友、キーボー君がカナダから来た。
近所にあるコーヒー屋のノイさんの話をしよう。
このコーヒー屋は、ラオスによくあるサパー・カフェ(町にあるコーヒー屋で
近所の人が政治談義、近所の噂話などをしに来る)のひとつである。ある日、
このコーヒー屋にタイ人の団体客が来た。コーヒーを飲んで世間話をして帰っ
て行ったのだが問題が起きた。
お金を払うタイ人に、ノイさん「コプチャイ」と言う。
ーーータイ人にとって、この一言が気に入らなかった。
タイおばさん:
「あなた!ちゃんとコープ・クンと言いなさい!」とのたまった。
タイ社会でコプチャイは、大人が子供に、社会的に地位のある人が目下に言う
言葉である。お店の従業員が、来たお客様にたいして言う言葉ではない。
タイでは、お客さんにたいしては「コープ・クン」。しかしラオス語では一般
的には「コプチャイ」である。タイ人にとって乱暴、失礼に感じるかもしれな
いが、これで普通である。ーーーそして「コープ・クン」はタイ語である。
勿論、ラオス人も「コープ・クン」の意味ぐらい当然常識で知ってはいるが。
ノイさん、このタイ人のお客にずいぶん腹を立てていた。わたしはラオス人だ
から、ラオス語でちゃんと「ありがとう」と言ったのに、それをあの客は私に
「ちゃんと、ありがとうって言え」なんて偉そうに言うのだから!
ーーーお互いに、言葉がわかるようで実際は分かり合えなかった例である。
このノイさん、こういうところではラオス語愛国者ぶりを発揮しているが、実
は日常生活での彼女のラオス語にはタイ語がバンバン入っている。
普通、ラオス語では2人称は「チャオ」である。しかし彼女は仲のいい近所の
友達には「トウー」を使う。これはタイのテレビ・ドラマなどを見ているとわ
かるが、恋人や親しい関係の相手に対して言う言葉である。
彼女のラオス語愛国度も少し怪しいのが現実である。そして彼女自身は、この
2つの違いを知っているわけだから、危険回避としてラオス語でなくタイ語で
「ありがとう」と言っていればよかったのかもしれない。ーーー客商売として
はしょうがないことである。
なにせ相手は、タイ語とラオス語は同じだと思っているお客なのだから。そし
て彼女は、毎日タイのテレビを見てこの違いがわかる女になっているから。
このタイ語とラオス語の「ありがとう」の違い、実は基本的な常識である。
私自身も昔、日本人と結婚したラオス人に教えてもらったことがある。
「村山さん、わたしもタイ人と喋る時は気をつけているの。ラオス語のコープ
チャイは、タイでは目上の人には言ってはいけない言葉だから」
あくまでも私の感じ、見方(ラオス語が母国語ではない外国人としての)だが、
ラオス語のコープチャイはあっさりし過ぎていると思う。
たとえばレストランに行って一緒に食事をするとしよう。
お皿をとってあげたり、ナプキンを取ってあげたら、日本語では「あー、どう
もすみません、ありがとうございます」とか結構お礼の言葉が長くなる。これ
を短く「ありがとう」だけでは逆に失礼に感じる。
日本レストランで日本に長くいるラオス人(日本語が上手な方)に、上に書いた
状況のもとで軽く一言、「コプチャイ」で済まされた時に一抹の淋しさを感じ
たことがある。たぶん日本語の上手な方だったので、日本語みたいなラオス語
でお礼を言われると期待したのである。しかし、ラオス語では、短く「コープ
チャイ」で普通である。
淑珍にいわせると、タイ語は階級社会の言葉で、タイの社会に階級があるので
それぞれの身分・地位にあわせて喋らないと失礼になる。それに比べるとラオ
ス語は、悪く言えば田舎言葉、よく言えば純朴で表裏がない言葉なのかもしれ
ない。
タイは王様という強い権力(つまり階級社会)があったので植民地にならなかっ
た。逆にラオスの王様は、力が弱かったからフランスの植民地になったのかも
しれない。
日本人がアメリカに行ってレストランに入る。ウエートレスに「Thank youと
は何だ、ちゃんとありがとうございましたと言え!」などと言えるだろうか。
また、海外旅行で韓国に行って「ありがとうございます、と日本語で言え」と
傲慢に言うのと同じである。タイ人の植民地主義なのか、ラオスに来て威張ら
なくてもいいと思うのだが。
ラオス語とタイ語は別々の言葉だと考えないといけない。
お互いに言葉が分かりあえるのはいいことだが、逆に悪いことも生じる。相手
が何を言っているのかすべて分かるので、性格がどんな人か、いいか悪いかす
べて分かってしまうのも良し悪しである。その人がいい性格の人ならいいのだ
けど、逆に言葉が分かってしまって悪い性格が全部分かったら悲惨だ。
わたしの経験を紹介する。淑珍と一緒にお葬式に行った時の話。
中国人のおばさんと淑珍が話しているのを横で聞いていると、
おばさん「ところで、あなたの旦那さんはラオス語できるの?」
淑珍 「通訳やるぐらいだから私より上手よ」
おばさん「それだったら悪口は言えないね」
これを聞いてわたしは頭にきた。
「ラオス語ができなかったら人前でも悪口言っていいのか?」
おばさんは「そういう意味でいったのではなく、軽い冗談で言ったのよ」
この話には伏線がある。
日本人とラオス人の奥さんがラオスに遊びに来た。 彼らは日本で知り合った
カップルで、奥さんの里帰りに旦那さんもついてきたのだ。日本人とラオス人
のカップルということで、ちょうど我々もタードウアに往く用事があったので
誘って一緒に遊びに行く事にした。
たまたまカナダから奥さんの親戚(お姉さん夫婦)が遊びに来ていたので彼らも
一緒に乗せて、途中での話である。
私と淑珍の話はラオス語、中国語、日本語が混じる。華僑の会話でも中国語が
混じるので、われわれ夫婦の会話は3カ国語のチャンポンになる。ラオス語で
発音しにくい単語など、日本語になったり、これも会話の流れで別に意識して
いるわけではないのだが。
おそらく純粋のラオス人やベトナム人は、日本語や中国語の部分が分からない
ので、会話の全部の内容をキャッチするのは難しいだろう。
カナダから来たベトナム女性がわたしの妻に「あなたの旦那は、何年ラオスに
いるの?10年もラオスにいるにしてはラオス語がおかしいね」ーーー私は車
を運転しながらこの会話を聞いていたが、この場で車を降りてもらおうと思っ
た。
どうも言葉の上手い下手について、この国の人ははっきり言うようだ。ただい
えることは、外国語の発音がいいことは、美人に会うのと同じである。最初の
印象はいいが、はたして性格までいいかどうか、そして外国語の発音はいいが
内容がおかしい場合もある。
しかし世の中、見た目と第一印象は肝心なファクターである。外国語を勉強す
る際は、発音はきっちりとやっておくべきである。わたしも結構この点につい
ては後悔しているーーー。
= この稿おわり =
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