ラオスからの手紙 ―――――― by 桜ちゃんのパパ
☆ ラオス語マスターへの道(1) ―――――――――― 2003/11/17

「サクラパパ、アイ・シービット ボー ユー」
----桜パパ、シービット(尊兄)はいませんよ----

これは、シービット君の奥さんと私が最初に会話した時に彼女が言った言葉で
ある。

さて、シービット君の話は以前の「ラオスからの手紙」に登場したので新たに
詳しく説明することはないだろう。簡単に説明すると、我が家の門番、6月の
入安居の前に駆け込み結婚をした新婚さんである。

┌──────────
│入安吾:雨季はラオスの小乗仏教では結婚できません。
│
│この雨季に入った時に「入安吾」という宗教行事を行い、男子は仏門に入る
│そして雨季が終われば「出安吾」になり、結婚ができる。
│(つまり入安吾の時期は結婚できないのである)
└──────────

ーー新居は私が借りている家の離れの門番小屋。

結婚式の時は私も出席したが、なにせたくさんの人間が繰り出すラオスの結婚
式。私も彼の奥さんの顔を覚えていないし、向こうもチャント私の事を知って
いるのかな?

ラオスの新婦は、「カオ・ラオ」といって、新婦がオールバックで髪を結うの
で、ハッキリ言って美人かブスか全然わからない。日本のお相撲さんのチョン
髷を想像してもらえればいい。
これが、「カオ・タイ」といってタイ式の結い方になると、オデコのところを
垂れ流すので顔の特徴がでてくるのだが。

ということで、お互い初対面といってもいいぐらい。

―――― さて、桜ちゃんのパパは来年の1月で45歳。

シービット君の奥さんは聞くところによると18歳ぐらいらしい。

つまり、桜ちゃんのパパは結婚が遅かったが、もし20代で結婚していたとす
ればシービット君の奥さんは自分の娘ぐらいの女性である。

普通、ラオス人同士でこのぐらい年齢が違うと、初対面では年下は年上に対し
てアイ=お兄さん)、ルン=おじさん)といった呼び方をするのが礼儀なのだ
が、シービット君の奥さんいきなり「桜パパ」と呼び捨てできたよ!?

そして、自分の旦那にはちゃんとアイ=お兄さん)と敬称をつけているのだか
ら、言われるこちらは少し気分が悪い。

さて、ここまで書くとラオスにある程度長くいる日本人なら常日頃誰しも感じ
ていることであろう。

ーー呼び方である。

ラオス人同士なら当然こういった敬称にあたる言葉をつけるのに、我々外国人
に対しては呼び捨てがほとんどではないか?!

たしかに、ラオス人にとっても初めて会った時に何と呼ぶか、これは結構難し
いようである。まして相手がラオス語の不自由な外人、それだったら呼び捨て
でいいか? 英語はみんなファースト・ネームで呼び合うから日本も同じだろ
う、これでいいのでは?

ーーそんな気持ちなのだろうか。

だけどわたしの職場でも、20代の職員は35歳ぐらいの自分より年配の職員
には、ちゃんと「アイ」をつけている。同席していて一緒に会話していても、
20代の若造は35歳の先輩には「アイ」をつけ、そして私には「桜パパ」と
呼んでくれるから桜パパは少しひねくれてくるのだ〜!!

桜パパのほうも、年下にはノーン=弟)と呼んで、自分には1人称の「アイ」
を使えば向こうもそれに従うのだろう。しかし桜パパの場合は、日本語が母国
語なので、どうしても対等の感じで、私は「コイ」貴方は「チャオ」を使って
しまうのだ。

さて呼び捨てだが、例えばラオス人で「ケオ」さんが「自分より年下にあたる
人から、ケオと呼ばれるよりウアイ・ケオと呼んでくれたほうが嬉しい」
ーーこのように言っていたのを覚えている。

----「ウアイ」はこの場合は「お姉さん」に当たる。----

勿論「ケオ」と呼び捨てにしても普通ではあるのだが。

従って、ある日本人が自分は呼び捨てで呼ばれるほうがなにか親しみを感じて
いるようで嬉しいと言っていたが、これは誤解だと思う。

親しみをもって呼ぶなら、年下なら「ノーン」をつけるだろうし、何もつけな
いのはやはりそんなに親しくないからだと思う。

―――― さて、このごろ越南=ベトナム)料理屋によく行く。

ここのママさんはラオスに来たばかりの越僑でラオス語は下手。

そして彼女のラオス語を聞いて気が付いたことがある。
自分のことを言う場合、つまり一人称で「弟・妹」にあたる「ノーン」を使っ
ているのである。

ラオス人の普通の食堂ではこのような言い方はしない。私の経験ではほとんど
ない。また貴方にあたるのは「チャオ」ではなく「アイ」を使っている。

これがラオス人の食堂なら「何を食べますか?」「チャオ・キン・ニャン?」
だからチョット違う。
しかしベトナム人のこの店では「アイ・キン・ニャン?」である。

ママさんのラオス語は、おそらく母国語であるベトナム語の影響なのだろう。

ベトナム語のほうが、こういったお互いの立場、身分についてウルサイのでは
ないだろうか。そういった意味でラオスはいいかげん。特に外国人に対しては
こういった自分の国のマナー以外の対応をしても許される。

またはラオス人自身もどう呼んでいいか困っているのでは?

たしかにこの人は、自分の年上だから「アイ」なのだが、だけど外国人だし、
えい、面倒だ!「桜パパ」にしてやろう!

日本でも同じ例で、外国人に対して以前は呼び捨てが多かった。

例えばこれは「楽しくて為になるラオス語」の中でも書いたが、プロ野球巨人
のある選手のヒーロー・インタビュー。(ずいぶん前の選手であるが)

「原さん(つい最近、巨人の監督を首になった)が頑張ってヒットを打ったので
 私もつなげようとしました。クロマティーのホームランで楽になりました」

この選手が誰だったか忘れたが、原やクロマティーよりたしか年下だったと思
う。だから日本人のマナーとしてはやはり、自分の年上である原選手やクロマ
ティー選手、両方にきちんと「さん付け」しないといけないのだが、原選手に
は「原さん」、クロマティー選手には「クロマティー」と呼び捨てになった。

もちろんクロマティー選手は日本語がわからないから、これでも波風は立たな
いのだが、ラオスに長くいる「桜パパさん」は少しイジケテしまうわけだ。

                        = この稿つづく =
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