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歴史から学ぶ現在 ――――――――― by kinny さん |
☆ 情念で政治を語るな ―――――――――――――― 2009/10/19
日独伊三国同盟を巡っては、往時の外交の総責任者がみずから友人に漏らして
いた。「僕一生の不覚であった」
小生は、この言葉の中に本当の不覚が含まれているものかどうか、はなはだ怪
しむものである――――。
日本の外交課題を解決する方策として同盟の調印が採られた以上、わが国がそ
こに一定の利益を見込んでいたのは自明だ。すなわちドイツの独ソ不可侵条約
を受けた協定の、親ソ化とアメリカの牽制である。
松岡は、三国にソ連を含めた四国同盟を画策したのだ。
だが前者は、即座に当の同盟国によって裏切られたし、後者は逆の結果を招い
た。後者はアメリカの本質をやはり理解していなかった松岡の知性の限界だっ
たろう。
これは今なお多くの日本人が為しているのと同質のカン違いであり、松岡を責
めるというより、われわれの共感至上主義、空気第一主義こそ責められるべき
だ。ーーー事実に即して考えれば、アメリカという国がどのような国なのか、
かならず像を結ぶはずである。
彼らはボストン虐殺以来、二度にわたって練度と性能に勝る欧州の精強な軍隊
によって本土を蹂躙されており、都度これを退けてきた国なのである。血みど
ろの国内戦も含めると、近代以降、彼らは自国を三度にわたって焦土にさらし
ている。
何年にもわたって飽くことなく戦う敢闘精神と、首都が陥落してもけして降伏
しない不屈の精神こそ、アメリカを代表する精神であり、相手が優位であれば
あるほど、強力であればあるほど、これに道を譲ることはないのだ。
なぜか。これは、劣勢な相手に譲ったところで不名誉ではないし、みずからの
破滅を招く恐れもないからである。
その逆はどうか。
強き者に屈服することは、著しい不名誉であるばかりか、やがて蹂躙されるの
を待つのみだからである。
日本への外交圧力といい、ナチスドイツへの開戦意欲といい、戦後の欧州戦略
といい、キューバ危機での対応といい、アメリカはみずからの死命を制しかね
ない相手との対決で、逃げたことは一度もない国なのだ。
伝統的に、一度敵対すれば、それこそトコトン勝負の国なのであって、中途半
端な交渉でこれをかわすことができるなどと考えるのは浅はかに過ぎる。
アメリカと事を構えるのを必要以上に怖れる必要はないが、敵対する前に必ず
矛を収めることが肝要である。
では後者はどうだったか。
ナチスドイツは、国家を挙げて同盟するに足る国家であったか。
以前から何度も繰り返し書いてきた通り、ならず者の国と手を組んで良い結果
を招くことはほとんどない。これは近代以降の歴史がほぼ完璧に証明しており
ナチス信奉者と手を組んで世界から非難を浴び、レバノンから空しく撤退した
イスラエル、イラクと結んでアラブ世界から閉め出されたPLOは言うに及ば
ず、戦前の例でも、ニコライ二世のロシア、ウィルヘルム二世のドイツ、と枚
挙に暇ない。
表裏常なき卑劣の国となす提携には実に一毛の価値もなく、代わって九割九分
九厘の禍が待ち受けているのだ。これらと結ぶのはよほどの奇手であり、時限
的で、テンポラリな取り決め以外は、いっさいが冗談に転じうると考えおくべ
きである。
三国同盟締結時、ナチスドイツはすでに何度となく深刻な破約をくり返してい
たならず者だった。おまけに卑劣極まりない人種差別の徒でもあった。
そもそも、同盟の前身である防共協定は、ソ連に対抗することを主要な目的と
したものであったにも関わらず、事前の通告もなしに、ヒトラーが独ソ不可侵
条約を勝手に締結、空文化していたものだ。
つい先年、ドイツの裏切りに振り回され、当時の内閣が総辞職したほどの外交
的な痛手を被ったにも関わらず、これを不問として新たな盟約を主張するなど
お人好しを通り越して悪人救済の慈善団体というほかない。
「連中の卑劣な裏切りはあくまで事後的であった、予測できなかった」とは、
未開の蛮人であっても恥じてこれを言うまい。松岡洋右の最大の不覚は、国家
の命運をあまりに軽視していたということに尽きる。
本当に考えに考え抜いた結果が三国同盟の締結だったというなら、最初から国
の外交を預かる大任に適した人物ではなかったということだ。何が肝心か、と
いうことを見極められない物知りなど、パソコンの記憶装置と何ら異ならず、
思い込みの激しさだけが取り柄のバカを重宝した日本政治の官僚化こそが、わ
れわれをして滅びの道へと進ませたという他ない。
三国同盟の舌の根も乾かぬうちにヒトラーはソ連に侵攻した。
この瞬間、松岡が秘かに目論んでいた四国同盟も、同時に潰えた。
我々は決して忘れてはならない。ならず者と何事かを約することの不毛を。
ーーー表裏常なき者との同盟の不可を。
まして日米同盟を批判する反米屋が、一方で三国同盟に突き進んだ愚劣を庇い
立てするさまを見るにつけ、怒りよりも、そのあまりのバカさ加減に嘔吐すら
催す。
情念で政治を語るな。
情念は、愚かな仮想敵を推し量る際の一要素に過ぎない。
もっとも、残念ながら日本の仮想敵は、日本をこの目線で推し量っていること
だろう。ーーーじつに悲しむべきことである。
= この稿おわり =
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┃●┃ 読後アンケートの結果。
┗━┛ ◇ この意見に賛成 -------------------------------------- 42人 (72%)
◇ どちらかというと賛成 -------------------------------- 11人 (19%)
◇ どちらともいえない ---------------------------------- 2人 ( 3%)
◇ どちらかというと反対 -------------------------------- 1人 ( 2%)
◇ この意見に反対 -------------------------------------- 2人 ( 3%)
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┃●┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
┗━┛ ┌──────────「オカモトさん」
ハルノートは「わが国の生存権を根底から否定している」と理由付けして、
南越・蘭印方面の油田地帯を、米国の権益に触れない範囲で保障占領してしま
う選択肢もあったのではないでしょうか。
└──────────
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┌──────────「kinny さんから」
コメントありがとう。感謝。
条件付きだが、まさしく大ビンゴだ。そのことによって戦争状態に直接突入で
きるのはイギリスのみであり、アメリカではない。
ちなみにその条件とは、日本の体質が、内務省を中心にしたクーデターに近い
動きによって、革新官僚を一掃、政治が判断できる集団になっていたら、とい
うことだね。
まず南進なら、いっそ助け合えないナチスとの関係を解消し、ソ連と中立以上
の同盟関係とする。こうした発想の転換がない限り、いずれ業を煮やしたアメ
リカが議会工作に着手、中立破棄に及んだに違いないんだよね。
アメリカの意思は、旧ソ連によって多分にコントロールされていた。われわれ
が旧ソ連と結ぶか、旧ソ連を倒しきるか、いずれかに及んでおれば、アメリカ
は日本との戦争を望む理由を失うだろう。
そして後者の着手が、直接アメリカの参戦を呼び込む可能性は高く、必然的に
成功の可能性が最も高いのは前者、すなわち旧ソ連との同盟となる。
正直申しあげて、これまでどれほどの見解を書いてきたか思い出せないほどだ
が、この件に関して、ほぼ小生自身と同じ考えでいる人物のアプローチを受け
たのは初めてのことである。コメントをいただけたこと深く感謝する次第だ。
また何かあれば、ぜひご意見いただければ幸いである。
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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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