☆ アインシュタインと日本 ―――――――――――― 2008/04/11
by 斎藤吉久さん
─ 美しい自然から生まれた国家制度 ─
―― 残された旅日記
アルベルト・アインシュタインといえば、科学者として世界史に名を残す一方
日本の伝統美と日本人の純粋性を深く理解した代表的西洋人の1人として知ら
れます。
大正11(1922)年11月に、日本の出版社の招きに応じて来日し、九州から東
北まで各地をめぐり、大学で相対性理論を講演したほか、明治神宮や日光東照
宮などに参詣し、さらに皇后陛下に謁見、能楽や雅楽を鑑賞し、有名無名の日
本人と交わり、「日本のすばらしさ」に魅せられました。
招請を受けたとき、アインシュタインは「このチャンスを逃したならば、後悔
してもしきれない」と思ったといいます。世界各国を旅したアインシュタイン
ですが、「日本ほど神秘のベールに包まれている国はない」からです。
残された旅日記によると、まず感動したのは日本の美しい自然でした。
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日本の海峡を進むとき、朝日に照らされた無数のすばらしい緑の島々を見た。
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―― 人間と自然との一体化
アインシュタインは各地で日本の「光」に惹かれました。京都では、
「魔法のような光が、通りや小さな家を照らしていた。……下に見える町のほ
うには光の海が連なっていた。非常に感銘を受けた」
展望車に乗って東京に向かう途上では「雪に覆われた富士山は遠くまで陸地を
照らしていた。富士山近くの日没はこの上なく美しかった」
自然以上に輝いていたのは、日本人の「顔」です。日本行きの船上で出会った
日本人客を観察し、「日本人は他のどの国の人よりも自分の国と人々を愛して
いる」ことを知ります。
彼が出会った日本人は「欧米人に対してとくに遠慮深かった」 京都のホテル
の給仕は「素朴で、おとなしく、とりわけ感じがいい」 東京で、芸者の踊り
も見ました。「かかる種類の女性を標準にして、その国民性が分かる。日本の
芸者は非常に謙遜な態度で上品ではないか。……日本国民の上品でゆかしいこ
とがこれ一事で分かる」
そうした国民性はどこに由来するのか。アインシュタインは自然との共生と見
抜きます。「日本では、自然と人間は一体化しているように見える。この国に
由来するすべてのものは、愛らしく、朗らかであり、自然を通じて与えられた
ものと密接に結びついている」
―― アインシュタインの懸念
「自然と人間の一体化」を示すものは、日本の民族宗教である神道と神社建築
でした。高松四郎宮司の案内で参拝した日光東照宮は、「自然と建築物が華麗
に調和している。……中央の建物は多彩な木彫りで飾られておりすばらしい。
……自然を描写する慶びがなおいっそう建築や宗教を上回っている」
厳島神社では「優美な鳥居のある水の中に建てられた社殿に向かって魅惑的な
海岸を散歩する。……山の頂上から見渡す瀬戸内海はすばらしい眺めだった」
そしてアインシュタインの探求心は天皇にも及びます。熱田神宮では「国家に
よって用いられる自然宗教。多くの神々、先祖と天皇が祀られている。木は神
社建築にとって大事なものである」と印象を述べ、京都御所では「私がかつて
見たなかでもっとも美しい建物だった。……天皇は神と一体化している」とみ
るのでした。
美しい自然とその自然に育まれた日本人の国民性を高く評価したアインシュタ
インは、他方で、伝統と西洋化の狭間で揺れる日本の近代化を熟知していまし
た。
であればこそ、旅の途中で書いた「印象記」のなかで、「西洋の知的業績に感
嘆し、成功と大きな理想主義を掲げて、科学に飛び込んでいる」日本に理解を
示しつつ、「生活の芸術化、個人に必要な謙虚さと質素さ、日本人の純粋で静
かな心、それらを純粋に保って、忘れずにいて欲しい」と訴えることを忘れま
せんでした。
それから80年、アインシュタインの心配は現実になっていないでしょうか。
= おわり =
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参考文献:アルバート・アインシュタイン
『アインシュタイン、日本で相対論を語る』(講談社 2001年)など
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メールマガジン「斎藤吉久の『誤解だらけの天皇・皇室』vol.24」より、
著者の許可を得て転載。
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