国際派日本人養成講座 ――――― by 伊勢雅臣さん
☆ Common Sense:加害者天国、被害者地獄 ――――― 2008/06/15

なぜ被害者よりも加害者の人権ばかり守ろうとするのか。

―― 1.加害者と被害者の人権格差

昭和44(1969)年、神奈川県の高校一年生が、同級生のAに殺害されるという
事件が起きた。Aは少年院に収容されて無償の教育を受け、出所後、大学を卒
業して弁護士になり、現在は裕福に暮らしている。

一方、殺された高校一年生の母親は年金頼みの苦しい生活を強いられているが
Aからは謝罪も賠償もない。Aは母親に対して、「お金がないのなら貸してや
る。印鑑証明と実印を持って来い」と言い放ったという。 [1,p157]

人権が十二分に保護されている加害者と、人権を無視されている被害者との矛
盾を端的に表している実話である。このほかにも、加害者と被害者の人権格差
には様々なものがある。
┌--------
1)加害者は少年院や刑務所で衣食住を保証され、病気になったら治療もタダ
で受けられる。被害者は、犯罪被害の治療でさえ自分で支払わねばならない。

2)加害者は、刑事裁判で有罪となっても、被害者から民事訴訟で訴えられな
い限り、慰謝料支払いや損害賠償をしなくとも良い。

3)加害者は国の費用で弁護士をつけて貰い、法廷で被害者に責任を押し被せ
るような発言もできる。被害者は何の発言権もなく、傍聴席でじっと聴いてい
なければならない。

4)加害者は、マスコミでの氏名や写真などの公開をプライバシーの侵害とし
て拒否できる。被害者にはプライバシーもなく、実名・写真報道される事が多
い。

5)刑期を終えた加害者は、出所しても前科者として周囲に知らされることが
ない。逆に被害者のほうは、加害者の出所も住所も知らされないので、いつお
礼参りに来られるのか、怯えていなければならない。
└--------

幸い、犯罪被害者たちの運動により、こうしたひどい状況は是正されつつある
が、人権派と呼ばれる抵抗勢力が加害者の人権のみを守ろうとして、被害者の
人権を踏みにじっているという傾向はまだまだ根強い。

こういう不正義を少しでも無くしていくためには、一般国民がこの問題をよく
知ることが必要である。今回は、この問題を掘り下げてみよう。

―― 2.犯罪加害者のための完璧な福祉社会

まず経済面での加害者天国ぶりを見てみよう。

我が国の犯罪加害者への支出は、年間354億円に上る。それに対して被害者
への支出は11億3千万円と、30分の1に過ぎない。354億円の内訳は以
下の通りである。 [1,p27]
┌--------
・国選弁護士費用 75億7千万円(平成17年度決算)

矯正収容費(平成18年度予算)として
・食料費   165億7千万円
・代用監獄内での被告人の食料費等 85億2千万円
・被服費    12億2千万円
・入浴費用    5億円
・医療費     9億6千万円
・受刑者就労支援 1億7千万円
└--------

この他に、刑務所や少年院の施設費を「住居費」として考えれば、「衣食住・
医療・教育」までの完璧な福祉社会が、犯罪加害者には約束されているのであ
る。

―― 3.国費を食い物にする人権派弁護士たち

国選弁護士費用は、トンデモない弁護士への報酬も含まれている。オウム真理
教の松本智津夫の審理では、国選弁護士が重箱の隅をつつくような枝葉末節の
尋問を繰り返して訴訟を意図的に遅延させ、第一審判決が出るまでに8年近く
かかった。この間に弁護士たちは国から4億円以上の報酬を得ている。 [a]

また、山口県光市母子殺害事件は、18歳の加害者が若い母親の首を絞めて殺
した上でレイプし、11カ月の乳児を床に叩きつけて、用意していた紐で絞殺
するという残忍な犯罪だった。 [b]

加害者は、一度は「生涯かけて償いたい」と涙ながらに述べていたが、最高裁
では一転して「被害者を姦淫したのは、生き返らせるためだった」などと荒唐
無稽な供述を展開した。これも弁護人らの差し金だろう。

この弁護人2名は、弁論期日に「日本弁護士連合会の裁判劇のリハーサルがあ
る」ことを理由に、裁判を欠席して延期までさせている。被害者の遺族7人は
裁判に出席するために仕事を休み、旅費・宿泊費を払って上京していたのであ
る。
遺族の本村洋さんは、「弁護人のとった行動は被害者遺族を侮辱しているだけ
でなく、法を信じている国民をも侮辱していることだと思います」と述べた。

もちろん国選弁護士の大部分は職務に忠実な人たちだろうが、ごく一部の人権
派弁護士たちは好き勝手に裁判を引き延ばして、国費を食い物にしつつ、加害
者の刑を少しでも軽くしようと画策しているのである。

―― 4.加害者の衣服費よりも少ない犯罪被害者等給付金

一方、被害者が受け取れるのは犯罪被害者等給付金11億3千万円(平成17
年度支給裁定額)で、加害者の衣服費にも満たない金額である。

一家の大黒柱が殺されても、遺族に支払われるのは最高でも1573万円で、
平均は4百万円余り。特に被害者が20代、30代の場合には、子どもがいて
も5百万円程度しか給付されない。自動車事故での死亡には、遺族給付として
3千万円が支払われるが、これに比べればあまりにも低い。

加害者の医療費は9億6千万円。被害者を襲った際に怪我しても、警察は病院
に連れて行ってくれて、ただで治療してくれる。さらに留置所や刑務所で病気
をすれば、これまた全額無料の治療を受けられ、入院が必要な場合は、医療刑
務所に入ることができる。

これに対して、被害者のほうはどうか。

平成11年9月、東京の池袋で娘さんが通り魔に殺された事件が起こった。娘
さんは救急車で病院に運ばれ、4時間後に亡くなったが、その間の治療に要し
た費用約170万円の請求書が遺族に送付された。娘さんを奪われた上に、こ
んな請求書を受け取った遺族の気持はいかばかりだったろう。

平成9(1997)年に神戸で起こった児童殺傷事件では、加害者の「少年A」には
精神科医たちがチームを作り、莫大な費用をかけて「更正」に向けた取り組み
がなされた。その一方で被害児童の兄は、大変なショックを受け、医師による
治療を必要としたが、その莫大な費用は自前で払わねばならない。

しばらく前から、被害者の治療費は国から給付されることになったが、それも
一年が限度であり、後遺症が残っても、リハビリ費用や介護費用は被害者の自
己負担である。

―― 5.加害者の損害賠償はわずか10%

現代日本における刑事裁判とは、法を犯した加害者の「更正」のために刑期を
課すという「教育刑」の思想 [c] に立っているので、そこに被害者の救済と
いう発想はない。

だから被害者が加害者に賠償を求めようとすると、自ら別の民事裁判を起こす
しかなかった。そのための証拠は自分で集めなければならず、また刑事裁判で
の公判記録を使うためには、裁判所に申請して自分でコピーしなければならな
い。

さらに、裁判所に提出する訴状の作成や、裁判での相手方への尋問などは弁護
士に依頼せざるをえないので、多額の費用がかかってしまう。

加害者の中には、刑事裁判の法廷では「被害者には大変申し訳ないことをしま
した。深く反省しております。必ず賠償いたします」などと言いながら、その
後の民事裁判では、責任を否定して損害賠償を拒否する人間も少なくない。

この費用と手間に民事裁判を諦めて泣き寝入りする被害者がほとんどである。
平成11年犯罪白書によれば、殺人、傷害致死等で生命を奪われた被害者の遺
族が、加害者から損害賠償を受けた割合はわずか10%に過ぎない。

―― 6.「損害賠償命令制度」

平成18(2006)年に成立した「損害賠償命令制度」は、この点の改善を狙った
ものだ。これは、被害者が申し立てを行えば刑事裁判の有罪判決言い渡し後、
同じ裁判官が引き続き、刑事裁判での証拠を利用して損害賠償の審理を行い、
賠償額を決定する。

しかし、裁判所はあくまで「賠償命令」を出すだけで、取り立てまではやって
くれない。人を殺傷するような加害者が賠償命令に素直に従わないケースは少
なくないだろうし、そんな恐ろしい加害者に対して、取り立てに立ち向かえる
勇気ある被害者がどれだけいるだろう。

振込め詐欺などでは、犯人の収益を国が没収、追徴し、被害者に支給する「被
害回復給付金制度」が創設されたが、一般犯罪についても同様に「賠償命令」
を国が実行して取り立ててくれる制度が必要だろう。

こうした制度が成立すれば、冒頭に紹介した息子を亡くした母親も、弁護士A
から相応の賠償を受け取ることができる。それが社会正義というものではない
か。

―― 7.法廷で黙って聞いているしかない被害者

犯罪被害者の人権が無視されていたもう一つの重大な点は、裁判で被害者は自
ら意見を言えないことだ。

加害者は国民の税金で弁護士がつき、黙秘権もあれば、被害者に責任を負わせ
るような発言もできるが、被害者やその遺族は傍聴席で黙って聞いているか、
「証人」として聞かれたことだけに答えるしかない。

平成9(1997)年10月、山一証券を恐喝して有罪判決を受けた男が、山一証券
の代理人だった岡村勲弁護士を逆恨みして殺害しようと自宅を訪れ、応対に出
た夫人をサバイバルナイフで殺害する事件が起きた。

この加害者は、法廷で「(殺された)夫人が突然飛び掛かってきた。1メートル
ぐらい吹っ飛ばされた。それでとっさに刺してしまった」「殺さなければこっ
ちがやられると思った」などと発言した。傍聴席でこんな発言を黙って聞いて
いなければならない被害者遺族の思いは察するに余りある。

平成12(2000)年10月、横浜市で女性が元同級生に殺害された事件では、被
告人が法廷で遺族に向かって「お前ら=家族)が娘=被害者)を迎えに行かな
かったから娘は殺されたんだよ」と言い放ち、被害者の母親が自殺するという
事件も起きている。

―― 8.被害者の裁判参加

平成19(2007)年6月に成立し、本年12月までに施行されることになってい
る「被害者参加制度」で、この点は大きく改善されるだろう。被害者は裁判長
の許可を得た上で「被害者参加人」として検察官に並んで座り、被告人に質問
したり、最終意見陳述ができるようになった。

これによって、被害者遺族が加害者に「なぜ自分の妻を殺したのか」などと質
問することができる。また自分たち遺族が事件をどのようなつらい思いで受け
止めたのか、語ることによって加害者に自分の犯した罪の重さを実感させるこ
とができる。加害者の真の更正のためにも、これは効果的だろう。

ただ、充分な法律知識のない被害者が法廷に参加したとしても、有効な質問や
陳述ができるとは限らない。そこで被害者の代理人として弁護士が隣に座って
被害者に代わって質問したりすることができる。

しかし、弁護士を雇う経済的余裕のない被告人も多いので、公費で国選弁護士
をつけられるよう改正案が出されている。加害者側に国選弁護士をつけている
以上、被害者側にも同様の措置をすることが公正だろう。

―― 9.加害者天国を守ろうとする抵抗勢力

賠償命令制度や被害者参加制度は、従来の加害者天国の有り様を改善する一歩
であるが、これらは「全国犯罪被害者の会(あすの会)」の活動によって実現し
たものである。

同会の岡村勲代表(前述の夫人を殺害された弁護士)が、平成15年7月に小泉
首相に面会し、犯罪被害者の置かれている悲惨な現状を説明したところ、小泉
首相は「そんなにひどいのか。すぐ政府と党で検討する」と約束し、議員立法
のうえ、安倍首相のリーダーシップで成立した。

この法案には、共産党と社民党が反対し、日本弁護士連合会が積極的な法案阻
止のロビー活動を行った。反対理由として「法廷が復讐の場になる」とか「被
告人が萎縮する」「被告人の防衛の負担が増える」などが挙げられている。

被告人が、裁判長の許可を得て質問や発言をすることが「復讐」になるとは、
「被告人をいかに守るか」という視点でしか考えていないからではないか。
「萎縮する」「防衛の負担が増える」も同様である。

こうした反対について、[1] の著者・後藤啓二氏は次のように述べている。
┌--------
刑事司法に携わる弁護士や、刑法・刑訴法学者の多く、あるいは裁判官の一部
は、刑事司法を国家権力と加害者の対峙と捉え、不当な国家権力の行使から加
害者を守ることを超えて、加害者の権利擁護のみを声高に叫び、ただひたすら
に加害者の責任や刑を軽くするのが任務であるとでも考えているとしか思えな
いような行動をとり、被害者をないがしろにしてきました。

・・・イデオロギー的な偏りによるものか、恐るべき知的怠慢によるものか、
どちらかでしょう。 [1,p5]
└--------

このような一部専門家の「イデオロギー的な偏り」や「恐るべき知的怠慢」を
国民の健全な常識をもって糺していくことが、公正で安全な国家を実現してい
くために必要である。

                  (文責:伊勢雅臣) = おわり =
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
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 関連リンク:
a.JOG(334) オウム裁判と床屋の怒り
  「人権派」の新聞や弁護士によって、国民の人権は危機に曝されている。
b.JOG(420) 裁判官がおかしい
  反省もしない殺人犯たちに同情し、被害者遺族を無視するおかしな裁判官
  たち。
c.JOG(512)「教育刑」という空想
  占領下に押しつけられた「教育刑」思想は、すでにアメリカでも完全に否
  定されている。

 参考書籍:(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
1.後藤啓二『なぜ被害者より加害者を助けるのか』★★産経新聞出版H20

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
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