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国際派日本人養成講座 ――――― by 伊勢雅臣さん |
☆ 子供を伸ばす家庭教育 ――――――――――――― 2008/05/25
子どもを健やかに伸ばすには、親の観察力と愛情が決め手。
―― 1.「頭が良い」とは
「カリスマ家庭教師」として、数百人の子供を一流高校・大学に送り込んだ松
永暢史[のぶふみ]氏は、「頭がいい子」とは次のような能力を持った子どもだ
と言う。
┌--------
・どんなことでも的確に判断できる判断力がある
・他人と上手にコミュニケーションがとれる
・好奇心の対象を常に見つけることができ、自己表現ができる
・どんなことをやる場合でも、最短距離で習得し、常に自分が成長し続ける習
慣がついている
└--------
こういう能力があれば、どんな職業についても、責任ある仕事をしていけるよ
うになるだろうし、同時に良き伴侶を見つけ、立派な家庭を作っていくことが
できるだろう。
氏の言う「頭がよい」とは、単に学校で良い成績をとるとか、一流校に合格す
る、というのではない事に注意しよう。一流大学を出て一流会社に就職しても
適切な判断ができない、とか、人とのコミュニケーションが不得手で、良い仕
事ができない、という人も少なくない。
逆に、学歴はなくとも「頭の良い子」が一流の職人となり、周囲に頼りにされ
る充実した一生を送るというケースもよくある。
家庭教師として、松永氏は多くの家庭を見てきた。そして子供を伸ばす家庭で
はいくつかの共通点がある事を発見してきた。今回はその一部を紹介しよう。
―― 2.小学校就学前の幼児を伸ばすには
まず小学校就学前の幼児段階を考えてみよう。たとえば、早いうちから幼児教
室に通わせて、読み書きや英会話を教えたほうが良いのだろうか?
松永氏はそれに反対する。「子どもが何かを習得するには、必ず最適な時期と
いうものがあります」と言うのである。
室町時代初期に世阿弥[ぜあみ]が残した能の理論書『風姿花伝』には、次のよ
うな一節がある。
┌--------
この芸において、大方七歳をもて初めとす。このころの能の稽古、必ずその者
自然としだすことに、得たる風体あるべし。
------
能は7歳ごろに始めるのがよい。しかしそれは人に言われたのではなく、自分
で「ふと」やり始めたことに風情がある。
ふとしださんかかりを、うちまかせて心のままにさすべし。さのみ、よき・悪
しきとは教ふべからず。あまりにいたく諫むれば、童は気を失ひて、能ものぐ
さくなり立ちぬれば、やがて能は止まるなり。
------
ふとやり始めた時に、その子のやりたいようにやらせるべきで、あまり、ここ
がいい、そこがダメなどと教えてはいけない。あまりに厳しく注意すると、子
どもはやる気を失って、能がいやになり、進歩が止まってしまう。
└--------
―― 3.子どもは夢中になって遊んでいる時に伸びていく
子どもの能力はさまざまな段階を経て、伸びていく。それに伴って興味の対象
も広がっていく。7歳頃になると、親が能を演ずるのを見て、ふと自分もやっ
てみたいと思い、真似をして遊ぶ。その遊びの中で、さらに能力と興味が伸び
ていく。
その段階に達する前に、無理矢理、教え込もうとしても、子どもには苦痛であ
り、逆に興味を失って、伸びる機会を奪ってしまう。
文字の習得でも、7歳頃はすんなりと覚えるが、それ以前だと苦労する。だか
ら、「小学校就学前に字が書けるようになって欲しい」とか「英会話を学ばせ
たい」と思って幼児教室などに通わせても、それは子どもの発達段階を無視し
た身勝手な望みであって、子どもにははた迷惑でしかない。
┌--------
そんなところに通う時間があったら、小さな子どもが集まる公園に行き、友達
同士で水遊びをしたり、砂場で遊んだり、泥団子づくりをするほうがよほど子
どもの能力と知能を伸ばしてくれるのです。 [1,p185]
└--------
子どもは周りの声が聞こえなくなるほど、何かに熱中して、ずっと遊んでいる
時がある。そういう時は、子どもの脳が活性化して、頭が良くなっている瞬間
だ、と松永氏は言う。
親は子どもの言動をよく観察して、今はどのような発達段階にあり、どんな事
に興味を持っているのか、よく観察することが大切である。「子どもを伸ばす
には、親の観察力が決め手」というのが「幼児教育の極意」であると松永氏は
説く。
―― 4.子どもに読み書きへの興味を持たせるには
それでは、7歳頃の子どもに、読み書きへの興味を持たせるには、どうしたら
良いのか。
┌--------
もし子どもに文字や数字、あるいは英語などに対する興味をもたせたいと思う
なら、まず親が始めることです。
子どもの目の前でおばあちゃんに手紙を書く姿を見せてもいいでしょう。英語
を学んで、発声練習をする姿を見せてもいい。それで子どもが、「僕もおばあ
ちゃんに手紙を書いてみたい」「私も英語で歌ってみたい」と言い出したとき
初めて教えればいいのです。
└--------
弊誌546号[a] では、小学生に『論語』の素読を教える、という伝統的な教
育方法が今でも効果を上げている例を紹介したが、読み書きを急速に習得しう
る年頃に、大人と一緒に声を出してリズムの良い文章を読むという素読は、子
どもの発達段階にも合致し、古典に対する興味を刺激するという意味で、すぐ
れた教育方法なのだろう。
また弊誌320号[b] では、就学前の幼児にゲーム感覚で漢字を教えると、知
能が飛躍的に伸びるという教育方法を紹介したが、これも幼児の図形認識に関
する能力が発達しつつある段階に、複雑な図形からなる漢字に興味を抱かせる
からであろう。
―― 5.学力の基礎は国語力
次に小学校に入ってから、子どもはいろいろな科目を学ぶが、頭の良い子に育
てるには、それらをどう学ばせたら良いのだろうか。松永氏は、こう語る。
┌--------
親として、まずしっかりと認識してほしいのは、「すべての学力は、国語力が
基盤となっている」ということ。
これは、少し想像すればすぐにわかることです。日本で試験を受ける限り、ご
く一部の例外を除いて、問題文は日本語で書かれています。算数の問題も、理
科の問題もそうだし、英語の問題だって、日本語で書かれています。
すなわち、子どもにとって最も大切な勉強は、国語ということになります。
[1,p147]
└--------
子どもが算数が分からなくなるきっかけは、文章題を理解できないケースが多
い、と松永氏は指摘する。したがって算数を伸ばすためにも、まずは国語力を
鍛えねばならないのである。
冒頭にあげた「判断力」にせよ「コミュニケーション能力」にせよ、国語力が
基盤である。人の話を正確に理解できない人や、自分の考えを簡潔に表現でき
ない人が、立派な判断力やコミュニケーション能力を持てるわけがない。自己
表現をしたり、新しい分野の知識や技術を習得するにしても、同じ事である。
したがって、子どもを伸ばすには、まず国語力から鍛えなければならない。
―― 6.国語力は読書から
それでは国語力はどうやって身につけたら良いのか。
┌--------
これは決まっています。本をよく読むことです。しかも押しつけられるのでは
なく、自分からおもしろがって本を読むように仕向け、本を読むことが習慣化
される必要があります。 [1,p148]
└--------
読書を習慣づけするには、どうしたら良いのか。小さい頃は絵本をよく読むも
のだが、高学年向きの本にステップアップすることに失敗して、本を読まなく
なってしまう子どもはとても多い、と松永氏は指摘する。
絵本からやや高学年向きの本にステップアップさせるには、どのような本を読
ませたら良いか?あなたなら次のどれを選ぶだろうか?
┌--------
1)書店に行き、「学校推薦図書」「文部科学省推薦図書」と銘打ってあるも
のを目安に買えば間違いない。「○年生向け」は当然チェックする。
2)どんな本が読みたいのかは、自分にしかわからないものだから、子どもに
任せる。書店や図書館で子どもが自分で選び、読めばいい。
3)そのとき子どもが最も興味をもっていることについて書かれた本を、さま
ざまなジャンルから選んで与える。
└--------
―― 7.読書の習慣をつけるには
松永氏はこう勧める。
┌--------
最も効果的なのは、子どもが興味を持っていることが書かれている本を選ぶこ
とです。
野球が好きな子なら、『バッテリー』(あさのあつこ著)を与えてみる。動物が
好きな子なら、『シートン動物記』を与えてみるなど、短くても手頃なものか
ら始め、徐々に手ごたえのある厚さと内容のある本を与えてみるなどは、とて
もよい方法です。
子どもが「これっておもしろそうだね」と興味を示した本や事柄があったら、
少なくとも次の日までに手に入れて子どもに渡すことも重要です。どんな場合
でも、子どもが興味を示したときが最大のチャンスなのですから。 [1,p92]
└--------
したがって、(3)を選ぶのが子どもを伸ばす親である。(1)の「推薦図書」は
良書の目安ではあるが、子どもに興味のない本を無理矢理読ませることで、本
嫌いにしてしまう危険性がある。
また(2)の「子どもまかせ」はあまりにも手抜きである。これでは子どもがど
のような事に興味を持っているか、親自身が知ることができない。
松永氏は、家族揃って、月に一度、書店に行って、全員が自分の読みたい本を
買うことを勧める。そして、買ってきた本をリビングなど家族の集まる場所に
置いておく。すると、子どもとの間で「この本面白かった?」「こういう本が
好きなら、次はこれがお勧めよ」などと会話が増えていく。また子どもが親の
読んでいる本に興味を示す可能性もある。
―― 8.ゲームばかりやっていると変な顔になる
そうはいっても、読書よりもテレビ・ゲームのほうに興味を持ってしまう子ど
もは多いだろう。子どもがゲームに興味を示したら、ゲームをやらせればよい
のか?
松永氏は、パソコン・ゲームや携帯ゲームなどを長時間やらせることに反対す
る。子どもの健全な成長にとって「意味のある遊び」かどうか、という点から
考えなければならない、という。
┌--------
「意味がある遊びかどうか」を見分けるには、子どもの表情をよく観察するこ
とです。目がキラキラと輝いていたり、見たこともないような真剣な顔をして
いたら、それは続けさせるべきでしょう。 [1,p121]
└--------
逆にゲーム中毒の子は、変な顔になると言う。
┌--------
それに、私が観察したところ、ゲームに夢中になっている子どもというのは、
全体的にどんよりした雰囲気になる、目つきが悪くなるなど、どこかおかしな
顔つきになる傾向が強いものです。
私が指導している子どもたちに「クラスでゲームに夢中になっている子の顔を
思い浮かべてごらん。みんないい顔しているかな?」と聞くとほぼ全員が「変
な顔をしている」と答えることからも明らかです。
└--------
だから松永氏は、子どもたちに「ゲームはいいものか悪いものか、わからない
けれど、少なくとも変な顔になるよりは、やらないほうがいいんじゃない?」
と聞くと、ほとんどの子どもは納得してくれるという。
心の有り様は、自ずから顔つきに表れる。
「好奇心の対象を常に見つけることができ」「常に自分が成長し続ける習慣が
ついている」ような人は、活き活きとした顔つきになるものだ。リンカーンは
「40歳になったら、人は自分の顔に責任を持たねばならない」と言った。
―― 9.家庭教育こそ国を興す基
「伝説のカリスマ家庭教師」として、数百人の子どもを一流高校、大学に送り
込んだという松永氏の勧める内容が、単に受験術のテクニックではなく、子ど
もの健全な発達をベースにしている、という点が興味深い。そしてそれは『風
姿花伝』や素読など、日本の伝統的な教育思想に通ずるものがある。
周りの声が聞こえなくなるほど遊びに熱中したり、自分の興味ある分野でどん
どん本を読んでいくような子どもが、勉強に向かえば、一流校に入れるような
学力も身につくのだろう。
逆に、だらだらとテレビ・ゲームを長時間やっているような子どもに、いくら
塾に通わせ、家庭教師をつけて、受験のテクニックを教えこんでも、真に頭の
よい子には育たない。
一流校を卒業し、一流企業に就職できても、「適切な状況判断ができない」と
か、「人とのコミュニケーションが苦手だ」では、立派な仕事ができるはずも
ない。学校の成績や学歴は、子どもの健全な成長の結果としてついてくるもの
である。そして子どもを健やかに伸ばすには、何よりも親の観察力と愛情が必
要であり、それは教室で多人数を教える学校教師に任せられない事である。
こういう家庭教育が広がっていけば、活き活きとした顔つきの日本人が輩出し
よう。家庭教育こそ国を興す基である。
(文責:伊勢雅臣) = おわり =
この記事は、出版社「学研」の学研教室「学研EDUメール」で紹介して頂きました。「学研EDUメール」はインターネット
情報の中から優れた教育関連情報を選出し、紹介を分かりやすくダイジェスト版にした内容で広く紹介していくという趣旨で
学研教室が提供しています。
┌──────────「ダイジェスト版の紹介文」
★頭の良い子にするには、《読書》中心に国語力をつける★
「頭の良い子を作る家庭教育法」について、伊勢雅臣さんが、カリスマ家庭教師として名高い松永暢史[のぶふみ]さんの言葉を
引用しながら解説している。
家庭教育は、必ずしも早期に教育することがいいわけではなく、その子の発達段階に応じた教育が大事で「今はどのような発達
段階にあり、どんな事に興味を持っているのか、よく観察することが大切」だと説く。
「子どもは夢中になって遊んでいる時に伸びていく」ものだから、「遊び」も大事だと説く。「子どもに読み書きへの興味を持
たせるには」、親が率先して、本を声に出して呼んだり、一緒に字を書いたりすることを奨める。
頭の良い小学生にするには、「すべての学力は国語力が基盤になっていること」を認識すべきで、国語力の養成には《読書》が
一番、「自分からおもしろがって本を読む習慣」が付くといいと説く。
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関連リンク:
a.JOG(546)『論語』が深めた日本の国柄〜岩越豊雄著『子供と声を出して
読みたい「論語」百章』
『論語』の説く「まごころからの思いやり」は我が国の国柄を深めてきた。
b.JOG(320) 子どもを伸ばす漢字教育
幼稚園児たちは喜んで漢字を覚え、知能指数も高まり、情操も豊かになっ
ていった。
参考書籍:(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
1.松永暢史『親がお手伝いをさせた子どもは絶対に頭がよくなる』★★★
アスコムH19
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