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八路空軍従軍記 ―――――――― by 大澄国一さん
| ☆ 1948年冬―1949年春 ―――――――――― 2007/04/13
11月初旬、訓練は予定通り終了した。全て順調で、最後の航法まで全課程を
教える事ができた。思えば2年がかりで乙班は卒業である。大変な時間と労力
であった。学生・教官・機械員の三者はそれぞれ1年の総括を行い、経験教訓
を引き出して来年度の訓練の改善に備えた。
総括が終わると、私は直ぐ東安へ修理完成機を受け取りに出張した。東安飛行
場で立ち会い検査の後、試験飛行を行う。結果は良好であったが機体はかなり
の部分が継ぎ接ぎであった。資材不足なのかと感じた。
翌朝東安を離陸、牡丹江に向け飛び立った。30分程は順調であったが、その
後エンヂンの調子が悪くなり、出力が低下しだした。高度は下がっていく一方
である。
林口を過ぎた頃には、回転1500でそれ以下には下がらないが、高度はかな
り落ちていた。そして「八面通」上空では、その西にある山の頂上すれすれに
なるまで高度が落ちた。
町の様子が手に取るようによく見える。何だか大通りに人が集まっているよう
だ……後日分かった事だが、この時地上の部隊は国民党の飛行機と思い小銃を
撃っていたという。……当たらなくてよかった。
いよいよ高度が下がってこのまま飛べば山頂にぶつかるは必定、何とかしなく
ては、、とにかく回転を上げるためにプロペラピッチを「低に」切り替えた。
そしたらエンヂンが回転を上げた。「しめた!」少しスロットルを開いてみた
ら、また少し回転が上がった。高度は下がらなくなった。よしッ!山頂にきた
……どうやら越えられそうだ……頂上の草原を20mぐらいの高さで飛び越え
た。
僅か20秒程の時間であったがハラハラした。その後もエンヂンは同じ状態を
持続した。ジワジワと高度を回復して400mまで上がった。これを保持して
一直線に海浪に機首を向けた。もう直ぐだ頑張ってくれ……
飛行場が見えた!滑走路に機首を合わせて直進、場周飛行もせずそのまま着陸
した。突然の着陸に警備隊がビックリしていた。兎に角任務を完了しホーッと
した。
エンヂンの状態を機械員に話して私は宿舎に帰った。
この月(11月)の初め、解放軍は全東北を解放した。
三大戦役の一つ、遼寧作戦を9月に展開してから僅か2ヶ月で、国民党の拠点
瀋陽を解放し、東北での戦闘は終わった。この貧弱な装備の解放軍がアメリカ
武装の国民党軍を破った事は驚きであった。
私が目撃した敵の攻撃は、この年たった2回。P−51による海浪飛行場銃撃
と、P−38の偵察飛行だけだった。
一昨年、東安で劉亜楼参謀長が私達に言った「我々人民の軍隊は、空軍が無く
ても国民党に勝つ事が出来る」……は真実となって現れたのである。
これによって私は、解放軍に対する信頼と敬服の思いが高まったことを自分で
ハッキリ意識したのである。この勝利の祝福を、日本人とではなく、中国学生
の部屋で話し合い喜んだ。………その頃の私の心は日本人というより中国人の
中に溶け込んでいたからである。
明けて1949年正月、牡丹江在留日本人の合同演劇会が催された。去年に続
くもので、航校の私達は嘗ての日本の流行歌を元にした歌劇風のものを上演し
た。東京ラブソディーの平和時代から、特攻隊・敗戦・八路軍参加までを歌と
踊りで表現して、画期的かつ珍しさも加え好評を得た。
正月を過ぎて、航空学校全員が特別学習に入った。これは、全国解放を間近に
控えて、航校の正規化・訓練態勢の強化を図るため、全員の思想意識を統一・
明確化して、今年度以降の訓練を充実させるためのものであった。
噂によれば、今後大量の飛行・機械学生が入ってくるそうである。それだけで
はなく、他に気象・飛行場管制・通信等の学生も予定されているとか。
この学習が終わると、日本人工作員(従事者)の「評級」が行われた。
評級とは、これは軍隊内での階級査定みたいなものだ。日本軍と違うところは
各部署全員による評定であること。先ず自分から皆に報告する。その内容は、
思想意識・技術水準・実績等を自己評価して〇〇級に相当しますと発表する。
次にそれを皆が審査・或いは批評して妥当かどうか、妥当でなければ1級下げ
て評定し、その結果を中国側の所属長に提出し、尚そこで検討されて決定任命
される。
私達飛行教官は「連級(中隊長級=中尉・大尉相当)」を基準に評定し、正副連
級に決定される。私は一つ下の副連級であった。因みに修理・機務・衛生等の
他部門の者は均しく「排級(小隊長級=少尉)」で評定された。
林さんだけは「営級(大隊長級=少佐)」であった。
= この稿つづく =
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