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八路空軍従軍記 ―――――――― by 大澄国一さん
| ☆ ユングマンを取りに敦化へ(2) ――――――――― 2007/01/12
その日の夕方、田さんが私の部屋に二人の日本人を連れて来て「面会したいと
言っている……」と告げた。見ると入り口に若い男と女の人が立っていた。
男のほうが入って来て「内田といいます、特操2期の出身です」と挨拶した。
話を聞いてみると、近くの収容所に居るそうだ。そういえば飛行場に行く途中
そんな建物があって、日本人が多くいるのを見たことがある。
「日本の航空部隊が民主聯軍に参加していると聞きましたので、私も入れて欲
しいと思いまして……」おとなしいものの言い方だ。女の人は奥さんだった。
結婚したばかりだという。よく聞くと宇都宮陸飛の特操であった。私も宇都宮
で助教をしていたので、懐かしく思って暫く宇都宮の話をした。
話しをしていて、堅実そうな人物なので入れてあげたいと思ったが、私の一存
ではできないので、訳を田さんに話した。「大澄[タードン]がいいと思うなら
責任者に話してみよう」と同意してくれた。内田さんには「明日もう一度来て
下さい」と言って帰って貰った。
翌朝、飛行場に出かける用意をしていたら、内田さんが訪ねて来た。手に飛行
帽を持っていた。終戦になっても未だ飛行帽を持っているとは……と感心した
が、操縦者としての愛着心からなのか…それとも航空隊に入れるという喜びで
持って来たのか…。
兎も角一緒に飛行場に行く事にした。そこへ田さんが来て
「参加が許可されたので、整備人員が引き揚げる時に一緒に牡丹江へ行く」
と知らせてくれた。内田さんに話してあげるとニッコリ笑って「ありがとうご
ざいます!」と大きな声で言った。
飛行場で彼は――私はユングマンに乗っていました――と、ユングマンについ
て色々話してくれた。飛行準備ができたので、私と田さんが乗り込んだ。田さ
んが前席、私は後席で操縦することにした。
エンヂンは快調、整備員に見送られて離陸、牡丹江に針路を合わせ上昇、街を
離れて高度300mぐらいに達した時、エンヂンが突然異常音を発したと思っ
た瞬間、大きなショックを受けて機体がひっくり返った!!
びっくりしている間などない、失速状態に入ったと直感し……体勢を取り戻し
た時は機首はまっ逆さま!!直ぐ正常な降下姿勢に戻して前を見た。……エン
ヂンはまだ廻っている。しかしスロットルを操作しても回転は上がらずスロー
の儘で大きな振動が伝わってくる。
!不時着!‥‥を決心して地上を見た‥‥。
一面の畑だ。高度50m、そのまま降下……割合余裕のある着陸をした。転覆
もせず滑走して停止した。エンヂンはまだ廻っている。機から飛び降りてエン
ヂンを見た。
思わず、ワァッ!と叫び声が出た。慌てて田さんに「スイッチを切ってッ!」
と叫んだ。プロペラは止まった。見ればクランクケースが大きく割れて、そこ
からロッドが突き出ていた。
降りてきた田さんに「これを見ろ!」。田さんは「アイヤ〜!?」と言ったき
り黙って見ている。近付いて良く眺めた。ポッカリ空いた穴から中のクランク
が見える。胴体一面にオイルが塗ったように流れている。二人は顔を見合わせ
……こりゃあ凄い……と頷き合った。
着陸地点を調べるために後戻りして歩いてみた。かなり凸凹のあるジャガイモ
畑だ。よくまあひっくり返らなかったものだとつくづく幸運を感じた。田さん
も同じ畑を見て「[イ尓]的技術很好!太好了!」(君の腕は大したものだ!)と
無事を誉めてくれた。
間もなく大勢の人が寄って来た。物珍しそうに機体と私達を見ながらガヤガヤ
と話していた。公安局の者が銃を持って走って来た。田さんが彼らに話して、
機体の周囲を警護してくれるよう頼んだ。二人の公安員が群衆を遠ざけて私を
守るようにしてくれた。
田さんが「応援が来るまで待とう」と言った。頷いてその場に座り、飛行服か
らタバコを出して吸った。
30分程したら、応援の整備員が自動車で駆けつけてくれた。相談の結果、こ
のまま機体を押して飛行場まで帰る事になった。小さな機体なので大人5人ぐ
らいで押せば軽く動いた。
街の道路をゴトゴトと飛行機を押していくのは、生涯で初めての経験である。
同時に街の人も道路を行く飛行機を見るのは初めてであろう、大勢の人がゾロ
ゾロとついて来た。
飛行場に着いて、検査の結果、エンヂンを取り替えなければならぬが、2日は
かかるというので待つことにした。2日後、取り替えが終わり、試運転の後、
田さんと私は再びユングマンで飛び立った。
天候は良かった。牡丹江まで200キロ余り。一気に上昇、山脈の上に出る。
全く良い視界だ。遙か彼方に鏡泊湖が見える、一昨日の事故が嘘みたいだ。
通化から一度飛んだことのあるコースなので気楽に飛べる。2時間余りで牡丹
江に着いた。部隊本部の上を一周して帰った事を知らせる。海浪飛行場に降り
たら殆ど人影はなかった。飛行場長が2、3人の部下と共に出迎えてくれた。
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