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八路空軍従軍記 ―――――――― by 大澄国一さん
| ☆ 通化へ移動、2・3事件勃発(1) ―――――――― 2006/12/08
翌朝、顧さん・陳さん・勝瑞君等3人、その他に中国幹部とその夫人……合わ
せて一行7人が乗って帰ることになった。
幸い格納庫に‘92オクタン’のガソリンがドラム缶に1本あったので、それ
を補給する。もう外気は大分寒くなっているので、エンヂンが始動できるか?
一寸心配したがパチンコ一発でかかった。
600mしかない滑走路を、山に向かって離陸しなければならない。しかも人
員は定員いっぱいである。――――来た時と同じように、飛行場の端まで行き
ブレーキをいっぱいに引いてカタパルト式で離陸する。
格納庫すれすれに浮き上がった、直ぐ山が迫ってくるので危険だが、急旋回で
これを交わした。旋回を終わって下を眺めたら、居留民会の人たちが庭で手を
振っていた。軽く翼を振りながら別れの挨拶をした。……皆さんお元気で……
瀋陽に向けて一路上昇、ガソリンが良い故かエンヂンの力は大きく、グングン
上昇する。顧さんに回転計を見せながら「これは好調だ!」と互いにニッコリ
笑う。
天気は上々、視界も広い。途中で佐藤君が、客席からドアを開けて操縦室に顔
を出し菓子をくれた。客室を見ると皆ムシャムシャ楽しそうに食べていた。
来る時とは大きな違いだ、全く気持ちのいい飛行である。その後暫くして中国
幹部夫人が飛行酔いして大きなお腹を抱えながらゲーゲーと吐き出したのには
弱った。昼頃、無事瀋陽に到着、みんなを降ろしてから奉集堡に帰った。
奉集堡では、皆相変わらずブラブラ遊んでいた。……なんで俺ばかり動き回る
んだ……と少し不満には思ったけれど、それだけ俺は認められているんだとい
う自負で納得した――――。
宿舎に帰ったら整備の〇〇君が「腹が減っているでしょう、焼き飯を作ってあ
げますよ!」と、親切に食事を用意してくれた。??ところがこの焼き飯?、
食べてから口の中が妙にパサパサとへばり着く??変だと思ったがお茶を飲ん
だら直るので大して気にもしていなかった。
暫くして、先刻の〇〇君と田原さんが来て、私に頭を下げながら、
「大澄さん、大変済まん事をしました。変だと聞いて今調べてみたら、あれは
ローソクのローでした……済まん事です……腹、どうもないですか?」
言われてびっくり!一瞬「えーッ!」と声を出したが、食べてしまっているか
らもう遅い、どうにもならん……道理で冷えたら固まると思った……周りの者
がこれを聞いて大笑いしだした。以来、ローソク飯は有名な話になった――。
12月になって、国民党軍が瀋陽に進攻して来るという噂が流れた。
「間もなく全機飛行整備を完了せよ」という指令が出て、宮乃原・遼陽に散っ
ていた者も全員集合した。――――そして数日後、部隊は全機、全員、全機材
を「通化」へ移動すると命令が出た。飛行可能な機体は、全て整備を終えた、
隼、九九高練、スーパー、プスモス、患者輸送機、等があった。
私は森山君と二人でスーパー機の飛行準備をした。木布式の旧式機なので機体
の損傷があちこちにある。正規の資材、部品は無いので全て応急修理だ。汚れ
を取ったら前よりずっと綺麗になった。
12月〇日朝、全機出発。一機ずつ通化目指して飛び立つ。私は再度顧さんと
二人でスーパー機に乗る。エンヂンは快調だ。すっかりスーパー機に慣れたせ
いか、この機に愛着すら湧いてきた。航続時間も6時間はたっぷり飛べる。
通化への航路は山岳ばかり、川に沿って北東に飛ぶ。30分程飛んだら地上は
一面雪で真っ白になっている。谷間にあった川を雪で見失う――――。針路を
保って飛ぶも、全然目標が判らなくなる。
50分飛んだが「新賓」の町は見えない……こいつは失敗、航路が狂った……
承徳への飛行を思い出し、機の真下になっているかも知れんと大きく旋回した
が、下は山ばかり、仕方がないので鉄道を探すため右に大きく方向を変えた。
5分ほど飛んで大きな山を越えたら、ポッカリと盆地があり、鉄道の駅が見え
た。地図で「輯安」と判った。大分右に航路が外れている。進路を変えようと
大きく旋回した時、顧さんが手で下を見ろと合図する。見たら雪の畑の中に隼
が1機不時着している。高度が高いので誰か判らない。
顧さんは先へ行こうと合図する、そのまま機首を北へ向ける。測定したら航路
から大分外れた位置だ。風に流されたか、羅針盤が狂っていたか?――――
あと20分程の航程だ。白い雪の中に、黒い鉄道がハッキリ見えていて楽だ。
予定通り20分後に通化に到着、見るともう降りている機体が見える。川の中
州の飛行場だ。降下に移ったらまたもやエンヂンからオイルが漏れ出した!?
……周囲の山が邪魔になって進入が難しい飛行場だ。
オイルで窓が曇ってきたので、機首を左右に振りながら降下したが、目測が高
く失敗、やり直し……山スレスレに旋回、もう一度進入降下。オイル漏れがひ
どく前が見えなくなったので側面窓を開けた。凍るような風が入ってくるが我
慢する。
方向だけ定めて、横だけを見ながら接地、全くの砂地である。ドスン!…ゴロ
ゴロゴロと滑走する。……一番端のところまでいってようやく停止……
先着した者が迎えに出て誘導してくれる。河原の草地に停止、エンヂンを止め
る。風防ガラスは油を塗ったようだ。窓から顔を出して見ていたので鼻の頭が
凍ってしまったみたいに感覚がなくなっていた、、慌てて手で擦って凍傷を防
ぐ。防寒服に毛皮の飛行服、身体は暖かいが鼻だけが痺れていた。
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