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八路空軍従軍記 ―――――――― by 大澄国一さん
☆ 凌源・承徳へ飛ぶ(1) ――――――――――――― 2006/11/24 畑の中にある長さ500m程の小さな飛行場だ。着陸降下に入ってふと前方を 見ると、飛行場手前に小屋と樹がありこれが邪魔している。 復行してもう一度やり直す……その正面を外して降下するが、着陸地が狭いた めどうしても翼端が樹に引っ掛かりそうだが、ここしか降りる方向がないので 慎重に降下する。翼端を接触させぬように注意、しかし、気にし過ぎるあまり 目測が高くなり、接地点が前に伸びた! いっぱいにブレーキを引いて滑走したが及ばず、飛行場の端を越えて畑の中へ ドドド……50mほど入って停止した。ホーッとして冷や汗ものだった。見る と、顧さんは青ざめた顔をしていた。無事に止まったのを見てニッコリ笑って 私の顔を見た。 180度旋回して畑の中をゴトゴト滑走していたら、右側の畑の溝の中に白の スーパー機が転覆していた。あれーっと思った。上空からは気が付かなかった のに? 顧さんが「この前佐藤さんと来た時に失敗したのです……あなたは上手いです よ」と誉めてくれた。「運が悪けりゃ俺もやったのに…」と内心余り嬉しくな かった。 草地の真ん中まで来てエンヂンを止めた。そして外を見てびっくり…黒い人間 が大勢走って来る。帽子も服も靴も皆真っ黒である。銃を持っているから兵士 だと直ぐ判ったが、何か異様な姿に見えた。 降りた私達を兵士が取り囲んだ。その中から隊長らしい人が出て来て顧さんと 何か話していたが、やがて積んできた無線機を降ろしてその人に渡した。渡し 終えたら、その隊長は私のほうへ寄って来て握手を求めた。私は握手をしなが らただニコニコ笑っていた。何か喋ったがサッパリ判からん。ーーー多分お礼 を言っているのだろう。 それから、顧さんは隊長と連れだって近くの民家のほうへ歩いて行った。私は 機体の傍らに腰を下ろし、タバコを吸いながら一休みした。黒服の兵士達は飛 行機を囲み、私の顔と機体をシゲシゲと見ている。何か話をしているがサッパ リだ。……こんな田舎では、目の前に飛行機を見た事がないのだろう。 この飛行場も、よく見れば常用ではなく不時着用としか思えないほど貧弱だ。 小一時間程したら顧さんが戻って来て、「今から承徳まで飛んでくれないか… ここの幹部を一人送り届け、帰りに承徳から日本人を連れてくる。向こうには 佐藤さん達がいる」という事である。私は一寸思案した……時計を見たら4時 だ。 「もう日没まで時間がない、無理だと思うが」……ためらいながら返事した。 「何とか行けないか、、幹部は是非と言っている」 私は仕方なく返事をした。「行くけど、駄目なら戻って来るよ」 あまり気乗りはしないが、行くなら一刻も早く飛ばないと陽が落ちる。顧さん を急かして準備に掛かる。10人程の兵士を集め顧さんがパチンコ始動の要領 を教えている。 私は操縦席に入ってスイッチを入れて待った。 「1…………2…………3!」と叫んだ。 ブル……ブルルン……エンヂンは一発でかかった。 飛行場の一番端まで行って停止、ブレーキをめいっぱいに効かしてエンヂンを 全開にして飛び出す。草地をほぼいっぱいに使って離陸、そのまま承徳へ進路 を取る。計算では到着まで1時間余り。 凌源を飛び立つと直ぐ山岳地帯、目標となる大きな街はない。山また山の上を 飛ぶ。……顧さんが地図と地上を交互に見ながら航路の判定をしている。 30分程したら陽は前方の山に沈みかける。冬の陽がおちるのは早いというが 本当だ。スロットルを開き、少し速度を増した。山の陰が大きくて地形がハッ キリしなくなったので、航路を外さぬように鉄道に沿って飛ぶ。列車が通って いるのか線路が光ってよく見える。 やっと平泉の町を見る。‥‥あと30分程だ‥‥山が段々険しくなってくる。 辺りが少し暗くなって遠くがハッキリ見えなくなった。只ひたすら鉄道を見失 わないように飛ぶ。鉄道以外に目標は何もない。顧さんが少し心配そうにして いる。 「大丈夫…この鉄道の先に承徳がある…」私は彼を落ち着かせた。 太陽が全く地平線から消えた。急に暗くなったように感じた。‥‥これはいか ん..間に合わないかもしらん‥‥私は更にスロットルを開き速度を増した。 地上も空も真っ暗になった。夜間飛行というより暗中飛行だ。未だ承徳は見え ない。私は焦ってきた、時計を見た。……もう承徳に着かねばならぬ時刻だ。 ガラスに顔をくっつけるようにして前下方を見たらすっかり闇である。鉄道の 燈火も民家の灯すら見えない。航路は間違っていない……鉄道も間違っていな い……なのに目的地は見えない。私はかなり動揺した。 そのうち肝心の鉄道も闇に消えた。速度と時間からいっても、もう到着してい なければならんのだ……高度が高くて下がよく見えんのかも知れんと、山頂近 くまで降下し、谷間を這うようにして飛ぶ。 顧さんはすっかり青ざめているようだ、私の顔と外を見比べている。私は前方 の山を目を凝らして見つめた。このまま行けば山は高くなり衝突する。地図上 の地形から判断してこの辺に間違いないと思った。機の真下を確かめるため、 大きく傾けて旋回した。                   = この稿つづく:次の記事へ = ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘ └→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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