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八路空軍従軍記 ―――――――― by 大澄国一さん
☆ 八路軍に参加(2) ――――――――――――――― 2006/11/10 格納庫には未だ九九高練と九四式偵察機があった。全部修理して運ぶのだそう だ。聞くところによると、満州全域の飛行場や航空廠から、残っている日本軍 の飛行機や航空機材を集めているとのこと。
各地の航空機材を馬車で運ぶ
3回目の連絡で鉄西から営口に飛んだ時、航路半ばを過ぎた頃、突然エンヂン の調子が変わってきた。振動が出て回転が下がった。慣れていない機体なので 良く分からない。あれこれ調べたが、それ以上悪くならない様子なので細心の 注意で高度保持に努めた。 それ後10分程飛んだ時、エンジンが更に悪くなった。見るとエンヂンから油 が漏れている。それが風防ガラスに当たり、段々前が見えにくくなってきた。 あと少しで営口だ……何とか持たんかな……!と祈りながら飛行を続ける。 高度が少しずつ下がり始めた。少し機首を上げ高度保持に務める。スロットル を操作しても回転は上がらない、むしろ却って調子が悪くなる。万一に備えて 不時着地点を見定めておく。 高度は更に下がっていく。前方にやっと営口が見えてきた。もう少しだ! しかしエンヂンは更に震えだした。水平飛行不能の回転まで落ちてきた。失速 ギリギリの速度まで落とし機首をあげた。前面の窓は油で全く見えない。側方 窓から前を見る。 高度は既に400mまで下がった。飛行場がハッキリ見えた。風向など構って おれぬ!ーーーこのまま直進で降下する以外ないと判断……幸い地上はみな畑 いつでも不時着は出来る。 機首を左右に振りながら、側面窓から進入方向を確かめる。もう少し……もう 少し……行け行け…とイライラしてくる。エンヂンは只回っているだけでもう 推力はない。フラップが無いから揚力を増すこともできない。 高度が下がって、地上の樹がハッキリ見える程になった。もうちょっとだけ行 ってくれ!…と怒鳴りたい気持ちになった。高度がゼロになるのと飛行場の端 に接地するのとが同時であった。ホーッとする。 直ぐスイッチを切りそのまま滑走……停止してからやれやれと座席に座り直し た。 異常に気付いたのか後ろから人が走ってきた。機から降り立って手を振った。 走ってきたのは田さんと宋さんだった。状況を話したら田さんに通訳した。 「**********」田さんが何か私に話しかけたが分からない・・・・ 「よかったですよ無事で!……機体は押していきますから休んで下さい!」 宋さんが通訳してくれた。まもなく日本人整備員も駆けつけてきた。 食事を済ませてから、機体のところへ行ってエンヂンを調べてみたら、シリン ダーヘッドのバルブカバーのパッキンが破れてオイルが噴き出していた。田さ んに故障箇所を指さした。彼は「直せるのかな?」と心配していた。宋さんを 通じて「何とかするから」と安心させた。 それから格納庫、倉庫と物色しながら歩いて、自動車庫で自動車のエンヂン用 パッキンを見つけた。持ち帰って格納庫の作業台でそれをバルブカバーの形に 合うような部分を切り取りナイフで仕上げた。 試運転したらエンヂンは快調であった。田さんは喜んで私の技術を褒めてくれ た。……我ながら巧くいったもんだと嬉しかった。 2、3日逗留したが、資材不足のため今後の修理は続行不能ということで営口 を引き揚げることになり、田さん宋さんをスーパー機に乗せ瀋陽[シンヨウ]= (中国文字:沈陽)に帰った。----この頃から私は奉天とか新京とかの旧名を使 わなくなった。 久しぶりに街に出てエミちゃんの家を訪ねた。Aさんも来ていて家に遊びに来 いというので家へ行ってみたら、二階に住んでいて、私らを強盗だと讒訴して 牢にぶち込んだ中国人が、私の事を知ってその報復を恐れてか?公安局の制服 を着て銃を持っていた。 私は、彼をチラッと一瞥しただけで黙っていた。三階の部屋に上がってあの時 の光景を思い出し嫌な気分になった。Aさんはすっかり元の気持ちを取り戻し 朗らかに接待してくれた。 聞けば、下の中国人はアヘン患者であるとか……そういう人間は、アヘンが切 れると異常な行動を取るそうで、あの事件の前までは仲良く話して遊んでいた のに……と、全く不可解だった行動がようやく分かったような気がした。 要するにあの晩、異常な精神状態の時に私達男3人がドヤドヤと訪ねてきて泊 まった為に恐怖感を抱き、発作的に私達を強盗犯に仕立てたという訳らしい。 あまりここに長居は出来ないので、直ぐエミちゃんの家に引き揚げた。そこへ 宇田さんが来合わせた。彼は神妙な顔して言った。「俺………八路軍辞めるわ ……あの娘と結婚して日本に帰るまで瀋陽に残る事にした……」私は別に驚き はしなかったが、少し考えてから 「あんたの好きなようにしたらいい、もし兄に会ったらよろしく伝えてくれ」 と答えた。宇田さんのいうあの娘とは、エミちゃんの友達で、いつも一緒に過 ごしていた女の子で、名は忘れたが私ともよく話した美人の温和しい娘さんで ある。――――付き合っているうちに宇田さんは惚れたのだろう。苦境の生活 の中では女の情が欲しくなったのだと思う。 そこで宇田さんと私が入れ替わるため、宇田さんが着ていた将校服と長靴(上 着には東北民主聯軍の軍章が付いていた)と私の服と交換して着替えた。 「それじゃ元気でやれよ……」――――簡単に別れた。 その翌日、奉集堡に集合の指令を受けて、単身歩いて鉄西飛行場に向かった。 その途中、馬車に乗った糾察隊に咎められ、威嚇発砲されて「お前は日本人だ ろう!」と寄ってきて、私をジロリと睨[ね]めつけて、腰に吊っていた拳銃を 取り上げた。 鞄の中も調べてもうひとつの拳銃も取り上げようとしたので、胸の軍章と護照 =身分証明書)を見せたら黙って立ち去っていった。……なんだあいつらは、 物盗りと変わらないじゃないか!……と舌打ちしながら歩き続けた。 飛行場の入口に来たら、門のところで八路の衛兵が銃に手を添え私に敬礼をし た。思わず挙手の答礼をした。同じ将校服を着て軍帽を被っているのに、さっ きの者とは全然違う。やっぱり軍隊はしっかりしていると思った。 スーパー機の傍に行ったらもう準備が出来ていた。整備員二人を乗せて奉集堡 へ向かった。                   = この稿つづく:次の記事へ = ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘ └→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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