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心が元気になる話 ――――――――― by hideおじさん

☆ 白磁の人(朝鮮の美を世界に伝えた日本人) ――――― 2009/05/11
首都ソウルの近郊「忘憂里[まんうり]」に、一人の日本人が眠っている。

その墓碑にはこう刻まれている。
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韓国を愛し、韓国人を愛し

韓国の山と民芸に生涯をささげた日本人

ここに韓国の土となる
└--------

彼の名前は「浅川巧[たくみ]」という、兄の「浅川伯教[のりたか]」とともに
朝鮮工芸(特に磁器)研究の第一人者として、今でも高い評価を受けている。

戦後韓国では、多くの日本人墓地が破壊され、無縁仏として埋葬され直したり
したが、巧だけは韓国人有志により移葬され、現在の地に今でも手厚く守られ
ている。

山梨県北杜[ほくと]市出身の「伯教」と「巧」は併合時代朝鮮に渡ったのだが
まず伯教[のりたか]は、師範学校を出て京城の尋常小学校の教員となった。

もともと芸術に強い興味を持っていた伯教だったが、ある日京城の街中にある
古道具屋の前で、薄明かりに浮かび上がった「白い壷」に目を奪われた。
----甲府のキリスト教会で、友人が持ってきた陶磁器を目にし興味を持ったと
いう説もある。

この壷との出会いが伯教と巧の運命を変えることとなる。

当時=併合間もない頃「高麗青磁」は既に美術品としては一級品の地位を占め
ていたが、「白い壷=朝鮮(李朝)白磁」は見向きもされず、それこそ二束三文
で叩き売られていた状況であった。

伯教は、この白磁に興味を持ち、すぐさま教師を辞め朝鮮工芸に身を投じるこ
ととなる。

昭和6年までの3年間を掛けて、朝鮮全土の窯跡700箇所を詳細に調べ上げ
その記録が広く認められ「朝鮮古陶磁の神様」と称されるまでになった。

一方、浅川巧は、そんな兄に影響され、もともとは朝鮮総督府の山林課で下級
技術者として働きながら、朝鮮白磁の研究に兄以上に没頭していった。兄の伯
教、そして民芸家として有名な柳宗悦を通じて、日本に朝鮮の民芸品を知らせ
る役割を果たすことになる。

さらに彼ら3人は、1924年(大正13年)に、朝鮮民族初の美術館「朝鮮民
族美術館」をソウルの景福宮内に造ることになるのだが、その道のりは平坦で
はなく、朝鮮人からも拒否されたり疎まれたりした。

しかし浅川らの情熱が、美術館設立という形で実を結び、朝鮮の芸術が日の目
を見ることになるのである。

浅川巧は兄以上に朝鮮工芸に没頭し、特に李朝白磁の芸術性にほれ込み、朝鮮
からも全く無視されていた白磁を、歴史的、体系的、さらに技術的にまとめて
いったのである。

巧は朝鮮語を自由に操り、朝鮮人に溶け込んで、白磁だけでなくその他民芸品
をも世に紹介していった。

さらに巧は本業の林業においても「朝鮮松の露天埋蔵発芽促進法」を開発し、
禿山が多かった朝鮮の山々への植林技術の向上に多大な功績を残している。

総督府の下っ端技術者の安月給で、朝鮮の民芸品を集め研究し、さらに同じ山
林課で働く朝鮮人子弟に援助したりと、「清貧に安んじ、働くことを悦び」と
いった戦前の理想的な日本人そのものだったのかもしれない。

地位も名誉も富も求めない浅川巧の生き方そのものが、まるで白磁の「白」を
連想させられる。

巧は、急性肺炎の為42歳という若さでこの世を去ったが、彼の葬儀の際、地
元朝鮮人がこぞって彼の棺を担がせて欲しいと懇願してきたエピソードをみて
も、白磁のような彼の生き方が朝鮮人から愛されていた証左なのではないだろ
うか。

ちなみに現在韓国で、朝鮮白磁の人間国宝クラスの芸術家は、浅川兄弟の影響
を受けているいって過言ではない。ある陶芸家は「浅川先生がいなかったら、
朝鮮白磁は消えていただろう」と語っている。

来年には、浅川をモデルにした「白磁の人」という映画が製作予定とのことで
あるが、大いに期待したい。

日本の歴史には残らなかった「朝鮮を愛する日本人」がここにもいたことを、
私たちは忘れてはならない。

                        = この稿おわり =
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