竹下義朗さんの記事に対するコメントで、権兵さんと尊野ジョーイさんが応酬
なさっている「重慶爆撃」について、横から口を挟んで申し訳ないですけど、
ちょっと話をさせてください。
ーーー「戦争史上初の無差別爆撃」と槍玉に挙げられる重慶爆撃ですが、
尊野ジョーイさんが仰るように、一般住民が住んでいる同じところに、万を越
える兵士を混在させた国民党にもルール違反があった、ということを認識して
いないと、正しい判断はできないのではないかと思います。
ましてや、日本軍からの攻撃が明白であるにも関わらず、重慶の一般住民に対
する有効な手段を講じていなかった責任は、軽いとはいえないでしょう。
ーーーこれを踏まえた上で、少々理屈を述べさせていただきます。
日本のこの攻撃を、「ハーグ条約違反」だとの批判があることは間違いありま
せん。確かに陸戦法規では、
「防守せざる都市=無防備都市、村落、住宅又は建物は、如何なる手段に依る
も之を攻撃、又は砲撃することを得ず」となっておりますから、
一見すると日本軍の攻撃は「違反である」という認識になりそうです。
ただ、この陸戦法規の解釈に沿うと「軍事力の存在しない都市であれば、たと
えそこに武器弾薬などの軍事物資があっても攻撃できない」ことになります。
ところが、これは現実的ではない、不合理であるとして、空戦法規にある「軍
事目標主義」に沿って行われることを要件に、空爆は合法とされた経緯があり
ます。
ーーー誤解を招くといけませんので、もう少しお話ししますと、
そもそも攻撃目標となるものには「防守都市」と「軍事目標」というものがあ
ります。「防守」とは、都市の占領を企図して接近する敵に対し、軍隊が抵抗
することを意味しており、このような都市に対しては攻撃が認められる(陸戦
規約25条)とされております。
但し、同27条には、宗教施設・学術施設・医療施設などは、軍事上の目的に
使用されない限り、また、可能な限り被害を免れるように努力しなければなら
ないとする規定もあります。
一方「無防守都市=軍事力の存在しない都市」に対しての攻撃対象は「軍事目
標のみに限定」され、民間のものに関しては攻撃が禁止される。この原則を軍
事目標主義(Doctorine of Military Objective)といいます。
この解釈は陸戦だけでなく、海上や空中からの攻撃にも同様の制約があるとさ
れるので(海軍砲撃条約第2条・空戦法規案第24条)、空爆もこの解釈に沿っ
て行わなければなりません。
さらに、軍事目標への攻撃によって民用物に付帯的な被害が出ても、故意にな
されたものではなく、また、目標の破壊による軍事的な利益に比較して軽微な
場合には違法ではないとされています。
簡単に言うと「軍事目標主義」というのは、軍事目標=糧秣、弾薬倉庫なども
含む)があれば、防御の有無に関わらず攻撃の対象としてよい。但し、無駄に
市民を殺傷するような攻撃はやめましょう、という考えです。
ーーーこれらを踏まえて考えると、
重慶には多くの国民党軍兵士が存在しており、尚且つ軍事施設があり、さらに
重慶政府という中心があったわけですから、「無防守都市=無防備都市=軍事
力の存在しない都市」とはいえません。
攻撃しても違反ではない都市と解釈して問題ないでしょう。
さらに、第1議定書58条「軍事目標近傍からの文民の移動・人口密集地の軍
事目標設置の禁止」に反している国民党軍の行動を考えても、爆撃したことを
もって日本だけ戦時国際法違反であるという非難は妥当だとは思えません。
勿論、重慶爆撃は「絨毯爆撃」という方法で、一般住民に甚大な被害が出たの
だから、とても「軍事的利益に比較して軽微な場合とはいえない」ーーーいく
ら理屈を並べたところで戦時国際法違反であり、非人道的なことに間違いない
という批判は当然あるでしょう。結果、1万2千人以上の犠牲者が出たことは
事実ですから、日本に非がないとはいえません。
しかし、そもそも蒋介石軍は、相当数の対空砲台を、わざわざ飛行場や軍事施
設から市街地域に移動させ、また、軍需工場も地下に造成したため、日本軍は
やむなく市街地域の絨毯爆撃を決定した、といういきさつがあります。
司令官として、一般住民が巻き添えになることが明白なのにも関わらず、敢て
市街地に軍事施設を置いたことは、一般住民が犠牲になっても構わないという
認識であろうことは疑いようもないことで、
国民党軍の国際法違反も、十分認識しなければならないことだと思います。
自国民軽視ともいえるこの行動こそ「非人道的」と非難されても仕方がないの
ではないでしょうか。
= この稿おわり =
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┃●┃ 読後感アンケートの結果。
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◇ 国民党軍のほうが悪い! ------------------------------ 70人 (74%)
◇ どっちが悪いのかな? -------------------------------- 20人 (21%)
◇ 日本軍のほうが悪い! -------------------------------- 4人 ( 4%)
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┃●┃ お寄せいただきましたご意見や感想。
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┌──────────「張宋援さん」
「軍需工場も地下に造成したため」とありますが、何か資料はありますか?
ーーー今でも工場跡地はあるのでしょうか?
└──────────
▼
┌──────────「hideおじさんから」
地下軍需工場のことは、以前月刊「正論」の記事で読みました。また前田哲男
氏の「戦略爆撃の思想」という本にも簡単ではありますが書かれていた記憶が
あります。
現在跡地(当時その多くが防空壕であった)がどうなっているか、詳しい資料は
ありませんが、戦後は共産党軍の武器工場として使われたとか、一部は遊戯場
として使われていた、または現在バイク工場があるとか、いろいろな話があり
ます。
直接は関係無いかもしれませんが、北村稔・林思雲氏の「日中戦争」なども参
考になるかと思います。
└──────────
┌──────────「緑の保守派の尊野ジョーイさん」
蒋介石に、一般市民を守るなんて意識なんか最初からありませんよ。
彼は、退却中に日本軍を攪乱するために川にコレラ菌をばらまいています。
=最初に細菌兵器を使ったのは支那国民党軍である。川下にいる支那住民が被
害を受けることなどはお構いなしです。
台湾でも、3万もの知識人を虐殺しています。権力のためなら、一般市民の犠
牲など何とも思わない、冷酷な性格の持ち主なのでしょう。----毛沢東にはか
なわないけど――――。
歴代の支那皇帝も一般市民には圧政を行ってきました、今の中共と同様です。
天皇と皇帝の統治は、月とすっぽんぐらいの差がありますね、日本に生まれて
良かったです。
└──────────
▼
┌──────────「hideおじさんから」
まさに仰るとおりです。さんざん日本軍の残虐さを訴えておきながら、自分が
やっていることはそれ以下のことです。
重慶に退却する際に、追撃を逃れるため黄河をわざと決壊させ、32万人もの
犠牲者を出したこと。重慶の前にも、上海の租界を空爆し欧米人も含めて百人
単位の犠牲者を生んだことなど、無差別爆撃を言うならこれも批判されて当然
です。
許せないのは、国民党はこれを日本軍の仕業と虚偽の宣伝を行ったことです。
自分の違反行為は棚に上げて、さらにそれを他人のせいにする。戦争のルール
を守れというのならば、国民党こそルールを守れということです。
ーーー少なくとも日本軍は、自国民が黙って犠牲になって良いなどとは考えて
もおりません。
重慶爆撃があったから広島・長崎、東京などの大都市空襲があったのだとか、
東京裁判で重慶爆撃を問題にするとこれらの空襲も批判されるから、というよ
うな意見もあります。だから日本が悪かったのだとなるのでしょうが、
私は、このような方々はアメリカを知らないのではないかと思います。
だいたいアメリカが、人道的でフェアプレーであるならば、最初から原爆など
使用しなかったでしょうし、大都市空襲もしなかったでしょう。
アメリカというのは「やられたら徹底的にやり返せ」の国です。今でも多くの
アメリカ人が「原爆攻撃」は是としているのです。それが、重慶を取り上げる
と原爆も批判される、などというようなセンチメンタルな気持を持つはずがあ
りません。
1940年代の週刊誌「ライフ」では、日本人を「インディアンと同様で排除
して構わない人種」とする記事を出しております。こんな認識の国が、重慶と
原爆を比較して弱気になどなるわけがないのです。
冷酷だというのなら、中国がそうであり、アメリカがそうであったのです。人
を虫けら同様に考えていたのはどちらか、その反省なくして何の反省になるの
でしょう。
└──────────
┌──────────「げさん」
重慶爆撃を正当化することは、広島・長崎の原爆投下、東京やドレスデンの空
襲を正当化する輩にお墨付きを与える、ことに他なりません。
我々の、過ちは過ちとしてきちんと反省し、その上で、先の大戦における米英
の過ちをも追求することが必要なのではないでしょうか。
└──────────
▼
┌──────────「hideおじさんから」
げさん、コメントありがとうございました。
本文をお読み頂ければ理解いただけると思いますが、日本の重慶爆撃は正しい
とは申しておりません。理由はどうあれ、この攻撃によって多くの一般人が犠
牲になったことは疑いもないことですから、日本に非がないとは申せません。
しかし、何ゆえこのような多くの犠牲者が生まれたのか、日本が「侵略戦争」
といわれるものをしなければこんなことが起こらなかった、という見方だけで
は、悲劇の原因とするには無謀であると思います。
戦闘を行う当事者は、ルールを守る義務があります。ーーー戦争は単なる殺し
合いではなく、国際法で認められた武力を使った政治に他ならないのですから
為政者は特に慎重であるべきです。
それを、わざわざ犠牲者が出るように仕向けた中国の指揮官が無罪と言えるの
か、責任を日本に押し付けるだけで、彼らの行動が正当化できるのか、大いに
疑問を持っております。
ルールを守らない戦闘は、敵であれ味方であれ、勝者であれ敗者であれ、同罪
ではないのではないでしょうか。
このことを明確にしないと、広島・長崎の原爆も、東京大空襲、ドレスデン空
襲も、勝者の論理でしか語られなくなるのだと思います。
└──────────
┌──────────「hideおじさんから」
さぶろうさん、書かれていたコメントがその後見当たらなくなりましたが、何
かの手違い? 失礼があってもいけませんので、ご返事させていただきます。
陸戦協定は所詮「戦争のルール」であって「平和のルール」ではありません。
それを考えると、どんなに理由のある攻撃であろうが不合理であり、悲劇を生
むことには変わりません。
戦争のルールでは「よい」からといって、平和のルールでも「よい」ものなど
ないでしょう。逆に考えれば、そもそも不合理である戦争を平和のルールで判
断しても、双方相容れるものではないと思います。
そういった矛盾があるからこそ、指揮官はどんなルールであれ厳守する義務が
あるのだと思います。それを考えると日本軍は無罪だとは言えないでしょうし
連合軍とて無罪だとは言えません。
戦争に勝ったから無罪で、負けたから有罪、という理屈などありえないのでは
ないでしょうか。
重慶を考えた場合、住民が犠牲になるのが明らかであるのにも関わらず、敢て
一般住民の住居の傍に対空砲や軍需工場を郊外から移設した国民党軍は、住民
を盾にしたとしか考えられません。
さらに、重慶の前に「以水代兵」ということで、蒋介石が黄河を意図的に決壊
させ、一説には32万人の犠牲者を出したことにも触れておくべきでしょう。
このような自国民軽視の作戦が果たして許されるものなのか、日本軍が侵略し
たからこうなった、という問題ではないはずです。他人のルール違反を責める
のは簡単ですが、自分たちのルール違反によってより多くの犠牲が出たことも
指揮官は大いに反省すべきだと思います。
└──────────