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私の目の前の天安門事件 ――――― by hideおじさん

☆ 私の目の前の天安門事件(5) ―――――――――― 2005/07/08
それからも散発的に銃声が聞こえてくるのだが、時間が経つにつれて不思議と
落ち着いてきた。近くで銃声のような音が聞こえるとさすがに首を縮めたが、
実際に弾が飛んでくる訳ではないので、比較的冷静に群集の流れを見ていられ
たように思う。

5分か10分ほど経ったころだろうか、長安街から我々がビビッて立っていた
路地に、ひときわ大勢の群集がなだれ込んできた。ーーその後ろから!!今度
はハッキリと!!装甲車が迫ってくるのが見えた。

日本のどこかの新聞社だったと思うが「逃げろ!」と叫ぶ声で我に返った私た
ちは、装甲車とは反対方向へと走り出した。怖いとは感じなかったが、やたら
喉が乾いて、コーラが飲みたいな〜などと考えていたのを思い出す。

数十メートルも走ったところで、血を流して倒れている男が目に入った。銃弾
でではないと思うが、腕から相当な出血をしていた。このままでは群集に踏み
潰されると思った我々は、邪魔だと思うのもあったが、急いで彼の両脇を抱え
引きずるようにして逃げた。

助けた男が「もういい、もういい」と言っているのに気づき、一休みして後ろ
を振り返ると、人間だけが走っていて装甲車は見えなくなっていた。

ホッとしたところでその男の様子をよく見てみると、ガラスかなんかで切った
のだろうか、二の腕がザックリと裂けていた。

友人がカメラのバンドで止血をしていると、その男は「日本人か?」と聞いて
きた。「そうだ」と答えると「日本は我々を応援してくれるのか?」と聞いて
きた。
私たちは彼のその問いに答えることが出来なかった。友人は「黙っていろ!」
と彼を諌めるだけだったが、私は彼の言葉が耳から離れなかった。

何がどうできるのか?ーーー何をどうしたら彼らのためになるのか分らない。

むやみに答えられる質問ではなかった。友人は何か彼につぶやいていたが、男
はそれを聞くと「謝謝」、そしてカタコトの日本語で「ありがとう」と微笑ん
でいた。「もう大丈夫だ」と言った彼は、怪我をした反対の腕を振りながら別
れていった。

名も分らないし、その後も彼とは会っていない。無事でいてくれることを祈る
ばかりである。

次の日、事務所から「連絡が取れなくて心配したぞ!」と大目玉をくらった。
とっさに「怖くて知り合いの部屋に泊まっていた」と嘘をついてしまったが、
所長はそれが嘘だと感じたのに違いない。

たった1日が過ぎただけなのに、まるで祭りの後のように北京は静かになって
いた。ーーー昨日までの喧騒が夢のように感じられた。

―― それから1週間後、

「まだ取材を続けるよ」と言っていた友人を残して北京を離れた。

一抹の不安を感じながらも、あの群集の熱気に感動したのは確かであった。

歴史が変わると思ったのも事実である。しかし、あの日を境にして急激に静か
になった北京を見ると、この国には「民主化」というのが似合わないような気
がしてならなかった。

帰国後、暫くして趙紫陽総書記が解任されたことを知った。北京にいたときは
ニュースがまったく入らずイライラしていたのに、日本ではほぼリアルタイム
にニュースを見れるのが不思議でならなったが、改めて平和な日本を有り難い
と思った。

あの天安門事件をきっかけに、欧米マスコミが虐殺だとか大騒ぎしたが、私が
知る限りでは、直接人民解放軍が民衆に発砲した現場は見ていない。確かに銃
声は聞いたが、それが誰のものなのか分らない。それこそ虐殺などなかったと
断言できる。
ーー後日、誤報であったと修正されたが、この事件をきっかけにして、欧米が
対中経済制裁を加えることになったのは周知の事実である。

日本は、彼ら欧米とは足並みを揃えなかった。この事件に関しては中国政府は
無実だと思うし、日本のその時の判断は間違っていなかったと思う。
ーーその後中国政府はこのように言った。

「これで誰が本当の友人かが判った」

しかし、日本の期待をよそに江沢民政権が生れ、急激な反日教育が進められよ
うとは想像だにできなかった。そして今、ーーー反日を叫ぶ学生たちを見るに
つけ、
・
あの日、あの場所で見たものは、幻ではなかったのかと不安に思えてしまう。

                  = 私の目の前の天安門事件完 =
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