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私の目の前の天安門事件 ――――― by hideおじさん

☆ 私の目の前の天安門事件(4) ―――――――――― 2005/07/01
忘れもしない6月3日のことである。―――事態は膠着状態にあり、デモだけ
を取り上げても、少々面白味が失せてきた感があった頃である。学生・市民の
中でも、それぞれ言いたいことを言っている連中が増えてきており、中だるみ
のような雰囲気になっていた。

朝飯を済ませ、今日も仕事にならないなと思っていたところに、友人がホテル
に飛び込んできた。ーー「やばいぞ!人民解放軍が出動する!」

「何かあったらこのホテルに逃げ込んでくるからよろしく頼む」と言いながら
飛び出していこうとするのに「ちょっと待て!俺も行く!」と二人で広場へと
向かった。

既に各メディアの陣取り合戦が始まっていて、我々が潜り込む余地など見当た
らない。するとーーーちょうどその時、広場から共産党の歌(?)を唄いながら
引き上げてくる集団があった。

民主化を叫びながら共産党の歌、というのも不思議だなと感じたが、花火大会
が終わった後のように静々と引き上げて行く。彼らが退いた隙をみて道路の前
に出ていってみると、数百メートル先ぐらいで、一人の学生風の男が装甲車の
前に立ちはだかっているのが目に映った。

装甲車が右を向けばその男も右に寄り、左を向けばまた左に寄って、トウセン
ボのようなことをしているところだった。それは数分ぐらいだったと思うが、
その男も周りから諭されたのか、装甲車の前を離れて群集の中へと消えていっ
た。
ーーーそしてそれが境のように、広場にたくさんいる群衆が、潮が引くように
広場から離れ始めた。

そんな光景を、民主化を叫んではみても、やはり「剣」には太刀打ちできない
のかーーーと、少々残念に感じながら眺めていたが、リーダー不在、ましてや
「剣」に対抗する「剣」を持たない彼らに、これ以上を期待しても無理だとも
思った。

―― しかしこれで終わりではなかった。

一旦広場を退いた群集は、街のあちこちで気勢を上げていたが、夕方になると
また広場へと集まりだした。ホテルの前の道路も、気勢を上げる連中やら、そ
れを煽る野次馬のような連中でごった返していたが、その騒ぎは夜が更けても
収まらなかった。

私は少々うんざりした気分で友人と話していたが、外の声がだんだん高くなっ
ていくのが分かった。部屋の窓から覗いてみると、さらに人が増えていた。そ
れを追いかけるようにメディアの連中が随いていくのも見えた。

友人も「悪いけど、じゃな!」と言って飛び出していったが、一人取り残され
た私は不安で、ホテルのロビーまで降りていった。少しでも人に囲まれている
と安心できると思ったのである。ーーーロビーは閑散としていたが、それでも
不安を解消してくれるに足るぐらいの人間はいた。

ボーーッ外を眺めていたが、戒厳令中だというのにこれだけ大勢の人が出てい
ても大丈夫なのかな?などとぼんやりと考えていた。そして、急に友人のこと
が心配になったが、いまさら彼を追いかけていったところで、この人混みの中
では到底見つけられるものではないし、
それに、
もしもこんなことで公安にでも捕まるようなことになったら、それこそ洒落に
もならないと思って自制することにした。

―― 日付が変わって暫くしてから、

友人が、疲れた顔をしてホテルに戻ってきた。やはり広場には近づくことがで
きず、諦めて途中から引き返してきたのだと言う。ただ、どこかのメディアの
話によると、広場の近くにはまたも相当な群集が集まっているらしいというの
だ。
友人は「チャンスは必ずまた来る、今無理をしても仕方ない」と言っていたが
中国が好きな彼としては口惜しさが滲み出ていた。

―― と、その時である。

欧州のメディアのヤツが「軍が動いている!」と叫びながらホテルに飛び込ん
できた。それまで三々五々ホテルに戻って来ていたメディア連中は、先を争っ
て長安街方向へと走っていく。群集心理ではないが、私もそれにつられて外へ
飛び出していった。

ゴーーッ!という鳥肌が立つような音を轟かせて、装甲車のような戦車のよう
な車輌が遠くで動いているのが見えた。デモ連中はこぞって何か叫んでいるが
私の位置からは良く見えない。伸びあがったり人を掻き分けたりしてみたが、
どうしても前には進むことができなかった。

業を煮やした友人は、「肩車してくれ!」と言って私の肩に乗り、写真を撮り
始めた。
「どんな状況なんだよ?」と下から聞いても「暗くてよく分らん。ただ学生が
軍の車輌に何かを投げているようだ」と教えてくれた。ーーー彼の体重に堪え
きれず「もう勘弁してくれ!」と彼を下ろした途端だった。

何処からかは分らないが、それまで聞いたこともない音が近くから聞こえてき
た。ドドドドド!というような音と、パンパンパン!という音が混じっていた
と思う。ーーーただ、先ほど遠くに見えていた(軍の)車輌からではなかった。

音のする方角が分れば落ち着くこともできたのだろうが、いったいどこから聞
こえてくるのか分らないだけに、自分が狙われているような不安感が周囲に充
ちて周りの連中が一斉に逃げ始めた。

友人と私は慌てて道路の脇に伏せたが、また別な方角からパンパンパンという
銃声が聞こえてくる。友人は青い顔をして「軍が発砲してると言ってるぞ!」
と叫んだ。
ーーーホテルへ逃げ戻ろうにも、銃声なぞ聞いたこともない我々は、何処から
撃ってきているのかが分らないし、ただその場所にアホのように縮こまってい
るしかなかった。

そんな中を、それまでヘラヘラしているようにみえた欧米のメディア連中が、
広場へ向かって走っていったのを眺めながら友人が

「怖くないのかな〜あいつらは」「俺も行きたいんだけど..足が動かねぇ〜」

と、情けない声を出し、「あいつらは場慣れしてんだろーよ」と悪態をつくの
がやっと、という有様だった。

                        = この稿つづく =
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