┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  迷子になったらここ!(^O^)  ━┓
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┃ 満州青春録 :―――――――――――――――― by 松本進さん

☆ トロッコ事件そして、脱走! ―――――――――――― 2004/01/09

―――― トロッコ事件

リー将校は日本語と英語が少し話せた。私が他の捕虜より中国語が少し分かっ
たせいか、リーさんはよく私を指名して買い物などに連れていってくれた。
会議のお供をして待たされたり、医療機具の注文行ったり、ときには買い出し
は口実で、昼食だけのこともあった。

またリーさんの乗る馬に一緒に乗ることもあった。怖いので馬を走らせないよ
うに頼むと、聞こえない振りをして勢いよく走らせ、何度もからかわれた。

リーさんは当時ニ十一歳で、私より一歳年上であった。
気さくで優しい女性で軍人としても誰からも信頼されていた。

ある日トロッコに乗って出かけた。

トロッコは高い山の中腹を急勾配に通っている線路の上を走る。リーさんは歌
を唄ってくれた。私にも歌えというので覚えたばかりの中国の軍隊を歌った。

そのうち、うっかりトロッコのブレーキの棒を落としてしまった!!
それを見たリーさんの顔が強ばって真っ青になった。トロッコはだんだん加速
してくる!!

!もう駄目だ、助からない!

そう思ったが、最後の賭けでリーさんを抱えてダッと跳び降りた。跳んだ拍子
に足を踏ん張ったので、トロッコはカタカタとバランスを崩し百メートル下の
谷に落ちた。

近くには大きな変電所があり、ここに落ちて爆発すると南満州の広範囲の電気
を止めてしまうことになったはずであった。

バウンドしながら落ちるトロッコの音を聞きながらリーさんを見た。グッタリ
して動かない。死んだ!?と思った。

困った、どうしょう....こんな状況を帰って話して信じてもらえるだろうか?
しばらく考えた。

このまま逃げようか....一度は決心した。

しかし捕まれば銃殺は間違い。"人間は正直でないといけない"、母がよく言っ
ていたのを思い出した。帰って一部始終を話そうと腹を決めた。

そして立ち上がろうとしたとき、もう一度と思い、リーさんの頬を叩き身体を
激しく揺すった。するとリーさんがゆっくりと目を開けた!

あー、、よかった〜〜、、私はしばらく声も出なかった。
りーさんを助け起し、トロッコが谷に落ちたことや変電所のことを話した。

「帰りましょう」そう言って歩こうとしたリーさんがよろけたので、背負って
帰ることにした。しばらくすると背中でリーさんが泣いているのがわかった。

さっきから黙ったままだ。さぞかしショックだったのだろう。何かと慰めなく
てはと思い歌を唄った。

♪泣くな妹よ 妹よ泣くな 泣けば幼いニ人して 故郷を捨てた甲斐がない♪

するとリーさんは少し明るくなり「もう一度歌ってほしい」と言う。

♪僕が心の夫なら 君は心の花の妻 遠く淋しく離れても泣くな相模の鴎鳥♪

もう歩けると言いながら、降ろすといつのまにか歩みを止めている。
どこか打って痛いのだろうかと心配になり、かなり長い間背負って歩いた。

やがて隧道のところまでくると、急にシャンとして歩き出したので、なんだか
背負って損をしたような気がしたが、将校という立場上気を取り直したに違い
ない。

帰ってマンモス部隊長に報告すると、
「よかったよかった。命に別状がなくて本当によかった!」
叱られることもなく、簡単に済んだ。

―――― 脱走!

それからしばらくは平穏に過していたが、私と山下が脱走しようと言い出し、
七名で脱走を企てた。私ばかりでなく、いくら社会主義に共感したとはいえ、
戦後一年以上も経てば、故郷にいる家族に会たくなるのは当然のことだ。

日一日と日本への想いが大きくなって、誰もがどうしようもなくなったのであ
る。ここは朝鮮だ。南鮮に続いている。今が脱走のチャンスだ。

暗いうちは歩哨が立ち見張られているので無理だろう。逃げるとき裏山を登ら
ないといけないが、昼間はまる見えで見つかってしまう。

見張りはいるが、夜明け前の水汲みを装って脱出を試みた。
雪の降る十二月のことであったと思う。

峠を越え、相談してニ人ずつの組になり五十メートルの間隔を開けて年の順に
進むことにした。先を歩く者の姿を頼りに歩いていたが、ふとした隙に見えな
くなった。

どうしたことかと思っていたら、谷の、深い雪の吹き溜りに滑り込んだのだ。
ーーどうすることもできない。

無事を祈りながら、打ち合せどおり先へ進む以外にないのだ。ここで立ち止ま
るとみんな捕まってしまうかもしれないからだ。

どんどん谷を越え谷を渡って進んで行くうち、北朝鮮の兵が山から追ってきて
撃ってきたが、深追いはせずしばらくすると向こうへ行ってしまった。
私たちは山の中腹まで上がり、辺りに用心しながら持ってきた食料を食べた。

また間隔を取りながら再び山道を歩いた。谷を見下ろすと汽車の路線が続いて
いる。気がつくと、向こうから白い服を着た朝鮮人が来る!!
ーー近付くにつれ、どうも朝から酔っぱらっているらしいことが分かった。

「おまえたちは中国人か?日本人か?」

「私達は日本人です」

「なんでここを通っている?今までどこにいた?」

「中国です。日本に帰ります」

「嘘を言うな。本当のことを言わないとどうなるか、わかっているのか」

酔っているからいろいろと絡んでくる。挙げ句の果てに水を汲んでこいなどと
命令しはじめた。殺して谷に放り込めという者もいたが、山下さんと私が止め
た。

言いたい放題の話を一時間半ほど聞かされて、やっと無罪放免になった。

その間に、昨日雪の中に消えたニ人が無事に脱出して追いついてきた。

・・私達はここで間違った選択をしてしまった。

「山の上を歩くのを止めよう。汽車の線路を歩こう」

さんざん酔っぱらいに絡まれて、山道を歩のが嫌いになったのだ。線路を歩く
ほうが人にも遭わず楽で近道だということになった。脱走した者が七名いると
いう連絡が各駅に入っているということが計算できなかったのである。

我々は線路を歩き始めた。百メートル間隔ぐらいで、やはり二人ずつ歩いた。
私は三番目だった。

しばらく歩き続けたが、昼前の頃、先を歩くニ人が見えなくなった?!
線路協の家のところまで行ってみると、家の陰から鋭い声がかかった!

「コラ!止まれ!止らないと撃つぞ!」

                     = 満州青春録:つづく =
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┃┃ お便りで頂きました感想。
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┏━━━━━━━━━━「坊主2さん」男性@六十代@山形

―― 満州青春録「トロッコ事件」を読んで

すばらしい記録ですね。あなた様しか書けないことです。宇宙が出来た頃から
全ての物事に無関係な人はいない、というのが仏教の見方です。

つまり、五重の塔の最先端にあなたは今いらっしゃるということです。親がい
て、兄弟がいて、親戚がいて、周りにも下の屋根には、前の代の人々がいて、
前の世代の先々が皆いて、人類全てがいて、万物がすべていて、大地があって
それが銀河につながり、バランスよく融合しあって共生している、というわけ
です。

ごめんなさいよ。すぐ説教じみてしまって。それほど自分・人間・個人が宇宙
の最先端にいると自覚すると、己の人生の値打ちがオンリーワンであり、貴重
なものとなります。あなた様の歴史の証言はこれからの人々に、わたしのとっ
てかけがえのないものです。
あなたしか書けないことをもっともっと書いて教えてください。

利根川の歌を歌ったとありますが、どうぞ歌詞もすこしは書いてください。
どうぞ、これからも書き続けてくださいますようお願いします。

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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。 

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