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┃ 満州青春録 :―――――――――――――――― by 松本進さん
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☆ 初めての外出 ――――――――――――――――――― 2003/10/10
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数十日経って、班長が明日は外出と言ってくれた。ただし引率外出だ。みんな
飛び上がるほど大喜びだ。まるで学校時代の時のようにはしゃいでいる。嬉し
さでついつい話し声も大きくなる。
「うるさい!」と何度も怒鳴られたが、この日ばかりは誰も殴られなかった。
私も興奮したまま床に入った。満州には来たものの、列車の中と城壁の中しか
知らない。明日こそ満州に来たことを実感できる日だ........そう思うと尚更
眠れない。
「どんな物を売っているのかな?満人の言葉は全然わからんが手真似でも通じ
るかな?満人は優しいと聞いているから、きっと親切にしてくれるだろう。
思いきって何でも話してみよう。明日は珍しい物をいっぱい買おう。お父さ
んのもの、お母さんのもの、清ちゃん、武やん、末広の分も両手いっぱいに
持って帰ろう!」
想像がどんどん広がり、家に土産をいっぱい持って帰った時のことをあれこれ
と考えた。涙が溢れてきてどうしようもなかった。
翌朝、起床ラッパで飛び起きた。点呼、食事、身の回りの整頓、外出の準備を
する。制服、制帽、新品の靴、ゲートルを丁寧に巻き、手に手に弁当(ハンカ
チに包んだやわらかなパン)を持ち集合命令を待った。
宿舎前に全員集合して
「前へ進め!」
「歩調とれ!」
そして衛門を出た。
初めて見る光景に、みんなはしゃぎだす。まるで放された籠の鳥のように嬉し
かった。線路を越えてしばらく行くと河がある。私は橋の上に立ち、水の流れ
を見下ろした。
子どもの頃毎日通った我が村の久谷川を見ているような気持になり、一瞬故郷
を思い出した。
「松本、いくぞ!」
立ち止っている私に誰かが声をかけた。
コーリャン畑の中を通り抜けると街の広い道に出た。
行き交う大車、二つ車の荷馬車など、見る物すべて珍しい。
しばらくして街に入ると、露店が並び、物を売り買いする人の声で実に賑やか
だ。建物も、着ている服も日本とは違う。昼前のことで、食べ物を売る人の声
がいっそう大きくなる。
せいろで芋や餅を蒸す湯気があちこちに立ちのぼり、屋台の立ち食いに人が集
まる。我々日本人にも声をかけてきているのがわかった。しかし慣れないこと
で、怖くて近寄ることもできない。みんな優しいそうな人ばかりだ。
数人で一緒に恐る恐る近寄ってみた。しかし結局その日は何も買えずじまいで
丘の上で持ってきた弁当を食べた。
その時、日本から来たという巡業相撲を見掛けた。日本から来たとはいえ、私
はそれまで相撲など見たこともなかった。筋肉を鍛えた大きな力士が、大木を
ドーンドーンと突いている。
友達が「千代の山じゃと」「あれは、豊の........」と、力士の名前を話して
いた。遠い異国の地で初めて日本の相撲を見たという印象的な出来事だった。
= つづく =
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