「ロシア政治経済ジャーナル」No.287より転載
by 北野幸伯(きたのよしのり)さん
☆ プーチンさんの大改革2 ――――――――― 転載 2004/10/11
     ――「ロシア政治経済ジャーナル」No.287 2004/09/23
           購読は → http://www.mag2.com/m/0000012950.htm

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★ロシアにはまだ進出するな!

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いまロシアに関して、二つの全く異なる情報が飛び交っています。

1.肯定的な情報
・ロシアはここ5年間でGDPが30%も成長した!
・今年も7%程度の成長は確実!
・トヨタは、5年間で年間販売台数を11倍加させた!
・日本の商社もメーカーも売上が急増中!

2.否定的な情報
・テロが多発
・ユコス問題
・中央集権化が進んでいる

この二つの情報に接して、社長さんは「どうしたらいいんだ〜!」と悩んで
おられることでしょう。

「進出した会社は儲かっているみたいだし。。。」「でも怖いし。。。」

悩みの根本は何でしょうか?

理由は様々あると思います。しかし、一番大きな理由は、「ロシアのことが
よく分からない」、だから駐在員を派遣しないといけないが、「その費用も
バカにならないし、それだけの価値があるのか分からない」ということでは
ないでしょうか?

そうです。

駐在員を一人派遣するというのは、大変なことなのです。

本社の負担は、事務所開設費・駐在員の給与・危険手当(現地支給分給与)・
住居費・事務所代・日本語の話せるロシア人スタッフ・秘書・自動車代等、
かなり大きなものです。さらに、本社から優秀な人材が一人いなくなるとい
う問題もあります。

皆様がロシアへの進出をためらう理由はわかります。

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(役に立ちません)
・極東に事務所があり「モスクワでも事業を」とお考えの企業は歓迎します。
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★ プーチンさんの大改革2

(前号まで)

プーチンさんは大規模な国家機構改革案を発表しました。

で、欧米はこれを批判している。

今回は、駆け足でロシアの歴史を振り返りながら、改革の背景に迫っていきま
す。

▼ ゴルバチョフの時代(=物不足)

私は、ゴルバチョフの時代からモスクワに住んでいます。
だから、ゴルバチョフー・エリツィン・プーチンさんの違いを直接見ている。

私にとってゴルビーは(私の)人生を変えた人物。なんといっても、彼に憧れて
モスクワ留学を決めたのですから。

ところが来て見てびっくり。

ロシア人はゴルバチョフが大嫌いだったのです。なぜか?

ーー物不足。

ソ連末期の90年91年は、物不足が本当に深刻でした。ちょっとした食料品
を買うのにも1時間・2時間は平気で並ばされる。
どんなに国際社会でいいことをしたとしても、国民を食わせられない大統領は
人気を保てないのですね。

▼ エリツィンの時代(=カオス)

ゴルバチョフは共産主義者。で、物不足。

これに対してエリツィンは「市場経済と民主主義」をスローガンに登場してき
た。それでソ連をぶっ壊したわけですが、彼自身「これからどうやって国家を
運営していこう」というプランが全然なかったのです。
ただ、なんとなく「市場経済・民主主義がいいな〜」と。

結果は悲惨。

改革がスタートした92年。国内総生産(GDP)はマイナス14.5%(!)
インフレ率は2600%(!!!)

エリツィンは、最大の産業である石油業界を民営化。民営化した石油会社は、
エリツィン一家に賄賂を払って税金を払わなくなってしまった。彼らは、力を
蓄え「新興財閥」になっていきます。

また、「民主化」という甘い言葉に騙されて、強い自治権を連邦構成主体に与
えました。その結果、地方自治体の首長たちの力は強大化し「小皇帝」と呼ば
れるようになる。あたかも、ロシア連邦内に、独立国家が乱立するような構造
が生まれてしまったのです。エリツィン末期の状況は、大統領がほとんど何も
自分で決められない状況になっていました。

それでも決めている人が、善人ならいいですよ。
----エリツィンは酔っ払いで、判断能力が弱ってるかもしれないし。。。
ところが、大統領の周りは、自己の利益のみを追求し、国益をかえりみない人
ばかり。

具体的には?

・新興財閥軍団(ロシアの主要産業を牛耳り、圧倒的政治力を持つ)

→エリツィン一家を取り込んで税金を払わない→ロシアは借金大国に
→エリツィン一家を取り込んで政治力を持つ→首相を誰にするかも彼らが決め
 る

・連邦構成主体首長(上院議員を兼任)

→強い自治権に守られ自己の権力を拡大。地方経済を一手にコントロールし、
 巨富を築く
→汚職の限りをつくす
(賄賂なしでは事業が進まない。騙される外国企業続出)
→大統領の言うことを聞かない

・下院

→国民のエリツィン嫌いが原因で、共産党が最大勢力に→法案が全然通らない

というわけで、エリツィン時代というのは「市場経済・民主主義」という名目
でしたが、、国全体でみると全くのカオス(混沌)状態だったのです。

私は、2度のクーデター(91年93年)もハイパーインフレ(92年〜)も金融
危機(98年)もモスクワで体験しています。

だから、ロシア人の気持ちがわかる。

ロシア人は「市場経済=絶対善」「民主主義=絶対善」という宗教を信じてい
ません。だから、彼らはプーチンさんを支持しているのです。


▼ プーチンさん(=秩序の回復)

さて、プーチンさんが大統領になった時、周りは敵だらけでした。

しかも、敵を放置しておいたら、ロシア経済はどんどん沈んでいくし、大統領
は何も決められない。

敵とは?

1.新興財閥軍団
2.連邦構成主体首長(=上院議員を兼任)
3.下院

プーチンさんは決意します。

1.「新興財閥軍団を政治の場から追放し、税金をきっちり払わせるぜ!」

2.「汚職まみれの連邦構成主体首長から政治力と経済力を奪い、全部中央政
  府経由でやらせるようにするぜ!」

3.「反政府の共産党をぶっ潰し、与党を最大勢力にし、法案がちゃんと可決
  されるようにするぜ!」

言葉だけで終わらせず、実行に移すところが、プーチンさんのすごいところ。

実際にどうしたか?

1.新興財閥に対して

プーチンさんは、エリツィンと癒着し「クレムリンのゴッドファーザー」と呼
ばれた新興財閥のドン・ベレゾフスキー、メディア王グシンスキー(メディア
モスト社長)を国外追放します。
その後、反抗した石油王ホドロコフスキー(ユコス社長)をブタ箱に。
それでプーチンさんは、新興財閥軍団に税金を払わせるようにした。

ロシア経済はこれだけで一気によみがえりました。
プーチンさんになってから、GDPが30%以上も成長している。

2.連邦構成主体首長に対して

プーチンさんは、法律を変えて首長=上院議員を兼任できなくしました。
また、中央政府と89の連邦構成主体の真中に7つの連邦管区というのを新設
腹心を大統領全権代表に任命します。

これで、地方首長の政治力は一気に衰えました。

3.下院に対して

プーチン人気のおかげで共産党は衰え、与党「統一ロシア」が最大勢力に。

このように、プーチン改革の流れは、就任以降一貫して、「混沌のエリツィン
時代から秩序を回復する」方向に向かっているのです。

具体的には、

エリツィン時代 プーチン時代
・市場経済 → 統制経済 
・地方分権 → 中央集権
・言論の自由→ 言論の自由を制限
・民主主義 → 民主主義を制限

ですから、今回欧米から批判されている「地方首長任命制」も一連の改革の流
れに沿ったもの。
改革の流れを見ると、世界の潮流と全く逆方向ですよね?

でも、エリツィン時代と比べて、ロシアは格段に良くなっている。

これは、私自身の意見ではなく、ロシア人全体の意見であり、ロシアで事業を
営む外国企業の意見でもあります。(エリツィン時代はホントにひどかった)

次号では、「プーチンさんはどうして世界と反対の方向で改革し、うまく行っ
ているのか?」を分析します。

(つづく)

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☆☆ メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」

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☆☆ 発行者 北野 幸伯(きたの よしのり)
IMT(International Most Trading.,Ltd.) CO-OWNER&Vice-President

☆☆ 発行者プロフィール

1970年、長野県松本市に生まれる。
田中康夫長野県知事と同じ松本深志高校卒。

1996年、日本人として初めて、ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学
(MGIMO=注1)を卒業。政治学修士。

1996年、卒業と同時にカルムイキヤ自治共和国=注2)大統領顧問に就任

1999年4月、メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」を創刊。
「わかりやすい!」「笑える!」「予測があたる!」と話題沸騰。読者は、
国際金融機関・政府諸省庁・ロシアに進出している殆どの企業から主婦・女子
高生まで。ロシア関係のメルマガで配信数日本一を独走中。

2001年9月より、世界一予測があたる国際金融アナリスト増田俊男氏が
編集主幹を務める月刊誌「力の意志」(サンラ出版)でグローパルアイ・ロシア
を連載。

2001年12月、日本・ロシアのスーパーエリートパートナーと共に
HP「ロシア情報ステーション」を開設 → http://www.russigator.ru/

開設直後「あちゃら」「日経ネットナビ」等に紹介される。
「ロシア関係で日本一!」と評価され、各界から絶大な支持を得ている。

2003年9月、長年プーチン大統領のブレーンを務め、ロシアを奇跡の復活
に導いた男Z氏、ディープロシアを知り尽す唯一の日本人山内氏と共に、日本
人が安心してロシアに投資できる環境を整えるべく、投資コンサル会社IMT
(International Most Trading.,Ltd.)を設立。

注1)MGIMOは、ソ連時代「卒業生の半分は外交官に、半分はKGBに」
といわれた超エリート大学。現在もロシア外交官の大半は同大学出身者が占め
る。
注2)カルムイキヤ自治共和国は、カスピ海北西岸に位置する仏教国。
1993年、31歳の若さで同共和国初代大統領に選出されたイリュムジーノ
フ氏は、就任時、既にロシアで5本の指に入る大富豪だった。現在は国際チェ
ス連盟(FIDE)会長も務めるスーパー大統領。MGIMO出身で大の日本好き。

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                           = おわり =
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┃┃ この記事にお便りを頂きました。
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┌──────────「気分は情報無限さん」―――――― 2004/12/29

ロシアの政治経済だけでなく、国際情勢が幅広く認識できる少しハイレベルな
メルマガです。
考えて見れば当たり前の話で、ロシアはヨーロッパとアジア全域(アラブ諸国
を含む)に国境を接している上に産油国なのですから、ロシアの政治と経済を
語るならば不回避的に国際情勢を考えなければならないのです。

私は以前「地政学入門(曽村保信著:中公新書)」にて、ロシアは運河を通じて
外洋から首都まで船で行ける事を学びました。つまりロシアは、伝統的に水運
国家でもあって、ピヨートル大帝の時代から「造船」に国力を注いでいる国家
でもあるのです。

今後とも、日本とロシアには様々な問題が発生すると思われますし、日本のマ
スコミ情報を鵜呑みにしないだけの「見識」を培う為にも推奨したいメルマガ
の一つです。

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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。 
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