寄稿転載記事 ――――――――――― by 岡崎溪子さん
☆ 防衛省は賢い商売人になれ ――――――――――― 2009/01/05

日本の自衛隊は、世界最高のレベルのパイロットと整備員を持っている。航空
自衛隊の主力戦闘機、F15J/DJ戦闘機を存分に使いこなしている。

日本は非常に優れたミサイル技術を持っており、それがある程度の周辺諸国へ
の抑止力になっている。

だが、周辺諸国も軍事技術の研究に余念がないことを忘れてはいけない。年々
歳々新型兵器が登場している。それだけ軍事予算を増やしているという事だ。

防衛は外交と表裏一体であり、「日本を攻撃したら報復リスクが大き過ぎる」
と意識させるためには、日本も迎撃ミサイルなどの性能をより高度化しなけれ
ばならない。憲法の壁で武器輸出ができない日本は、せめて最新鋭の兵器を買
うことになる。

だが「どうせ税金だから」と大名買いをしてはいないだろうか? もったいな
い使い方をしてはいないか?

―― ≪商社が儲け過ぎ≫

霞ヶ関の役所と取引するには、一般競争参加者の資格を申請して認定されれば
どこの省庁とも取引ができる。これは以外に簡単で、メールでも申請できる。

そして一般競争入札に参加して、最低価格であれば自社に仕事が落ちる。とこ
ろが、一般競争入札だとあまりに多くの会社が殺到するので、詳細に会社を調
査しないので、仕事を途中で放棄したり、手抜き工事や偽物をつかます会社も
出てくる。

ーーーそこで、信用できる会社だけを10社ぐらいだけ集めて入札させる。

これが指名競争入札である。なにかと不正が過去におこなわれていたので最近
は減ってきている。

ところが防衛省の場合は、武器や特殊車両なども多いため、生産するメーカー
や扱う商社が限られているので、一社を指名して随意契約を結ぶことが多かっ
た。

当然価格は高くなるが、防衛機密はほぼ守られる。

防衛省の2006年度の装備品調達の契約額は、約2兆1000億円に達して
いるが、随意契約が多いのが問題視されている。それは汚職につながり易い。

たとえば、防衛大臣が指示して随意契約を結ぶ会社を選んだ場合、その会社の
社長とか重役から見返りに賄賂が贈られているのではないか、と疑うのは当然
である。

護衛艦、潜水艦、掃海艇、輸送艦、哨戒ヘリ、観測ヘリなど、いずれも100
億円以上の高額なものばかりだ。これを自社の言い値で引き受けるのだから儲
けは大きい。しかも何度も随意契約をもらえれば、おいしいに決まっている。

実際に「大臣の指示」を多く使って国会で追及された大臣もいた。

マスコミの批判を浴びて大分減ったが、まださりげなく大臣が指名したい会社
を匂わせ、側近が気を利かせて指名することもある。この場合、一応指名入札
にしておき、4社ぐらい集めておき3社に断念させるようにやれば、結局随意
契約ができるのである。

―― ≪防衛省ワシントン支局で直接交渉≫

防衛省が海外の軍事関連メーカーと契約したい場合は、商社を代理店として立
てている。しかし、アメリカの最新軍事技術は国家での機密だから、製品化さ
れていても日本が買うことはできない。

日本は今、F−22ステルス戦闘機がほしい。

ステルスの元々の意味は「こっそりとする」「隠れる」である。つまり、レー
ダーに感知されにくい構造になっている。これからの戦闘機はステルスが主流
になるといわれている。1機が1億2000万ドルもするのだが、アメリカは
日本に売りたくない。最新鋭の軍事技術を他国に公開したくないからだ。

その技術を応用して新しい製品ができて、やっと商社経由で買うことになる。

しかしアメリカの軍事技術はどんどん進んでいるから、防衛省が買うことを決
定したころにはすでに古いものになっている。それでも、契約だから高い手数
料と、すでに中古品なのに高い値段で購入する羽目になる。

もしも、商社に仲介を頼まず、防衛省の人間が直接アメリカのメーカーと交渉
すれば、値段が安くなると同時に、さまざまな情報も手に入れることができる
かもしれない。

人間同士、仲良くなれば世界の軍事情報のヒントぐらいは教えてくれる場合も
ありうるではないか。世界の表に出たニュースよりも、水面下での情報を早く
キャッチすることこそ重要なのだ。

情報戦争は日々行われているのであり、日本の防衛に欠かせない仕事である。
日米安保条約もあり、ほとんどの軍事物資をアメリカから購入しているのが現
実なのだから、直接交渉ができるように、防衛省の支局をワシントンに置いた
ほうがいいのではないか。ーーー天下りの温床にならないように小さなオフィ
スでいい。

おそらく1000億円以上は国民の税金を毎年節約できると思う。米軍への思
いやり予算についても、検討するチャンスが多く生れるだろうし、ペンタゴン
(米国防総省)と本音で議論できるようにもなってもらいたい。

日本は海に囲まれているので、領海侵犯とともに領空侵犯を防がなければなら
ない。

海上自衛隊は潜水艦に対する能力を向上させ、イージス艦、護衛艦、哨戒機な
どを充実させた。それでも長い海岸線の防衛には陸、海、空の自衛隊が協力し
さらに海上保安庁、警察と一体になる必要がある。

実際に、中国の蛇頭の密入国のほとんどが海からやってきている。しかも太平
洋側が手薄だと狙われている。

大規模な合同訓練の必要性を痛感する。

防空については、特に東シナ海での中国の領空侵犯は「定期便」と呼ばれるほ
ど頻繁である。また、ロシアも北海道はもとより小笠原諸島まで領空侵犯をし
ている。これらに有効なのは、追撃・戦闘能力と共に、空母のレーダーに写ら
ぬステルス機でのすばやい対応である。

写真・ビデオ撮影などをして日本のテレビで公開し、相手国に抗議したり、国
連に訴えることもできる。要は侵犯行為をオープンにすることである。

ステルス機を国産すべきだとの意見もあるが、F22に関しては開発費が莫大
なので買ったほうが安くつく。「売り惜しみするなら思いやり予算はなくしま
す」とアメリカに言い切る度胸のある防衛大臣が就任して欲しいが、

歴代の大臣はアメリカの言いなりになる「ポチ」ばかりである。防衛省の役人
はもっとダメーーーならば制服組に交渉能力のある人間を探してみたくなる。

―― ≪天下りの構造≫

日本の防衛予算は、2008年度は4兆7436億円、その45%は人件費・
糧食費で、残りの物件費2兆6486億円のなかには燃料費・教育費なども含
まれるから、主要装備に回る予算が少なくなる。

天下りやムダ使いは許されないのだ。「守屋疑獄事件」はその意味で重大であ
る。

汚職を防ぐには、本来ならば、兵器その他を注文する側と、それをチェックす
る管理監督側がいなければならない。ところが防衛省内の実力者がその両方を
握っていたら、管理監督がまったく機能していないことになる。

そして、退職後の自分の天下り先を物色するため、先に天下っている防衛省の
先輩たちの意向に迎合するようになる。

下の表に、「日米平和・文化交流協会」に参加している主な会員企業16社が
過去6年間に防衛省から受注した金額と、各社に防衛省から天下りした人員を
示す。
企業名のうち、IHIエアロスペース社は石川島播磨重工の100%子会社で
ある。

受注金額は2001〜2006年の期間、天下りは2000年7月〜2006
年12月の期間で防衛省承認分を累計している。

【日米平和・文化交流協会、主な会員企業の防衛省からの受注金額と天下り】
┌--------
受注企業名       受注金額(億円) 天下り人数
三菱重工----------------16951------38
川崎重工---------------- 7935------18
三菱電機---------------- 6045------24
日本電機---------------- 4440------27
東芝-------------------- 2671------14
石川島播磨重工---------- 2640------17
富士通------------------ 1564------14
富士重工---------------- 1414------10
日立製作所-------------- 1151------14
伊藤忠商事--------------  980------ 3
IHIエアロスペース----  972------ 8
三菱商事----------------  539------ 3
住友商事----------------  273------ 3
山田洋行----------------  226------ 4
神戸製鋼所--------------  131------ 2
丸紅--------------------   47------ 2
└--------

この「日米平和・文化交流協会」に参加している主な会員企業16社の6年間
の受注総額は約4兆8千億円にものぼり、防衛省が発注した装備品などの大部
分を会員企業が占めていることがわかる。

また、16社が防衛省から受け入れた天下りは合計201名に達している。

ーーー理事には防衛族議員がずらりと顔をそろえている。

防衛省の健全化こそが、旧軍化しないことのためどうしても必要なのである。

                           = おわり =
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ 読後アンケートの結果。 ┗━┛
◇ そうだ!まさにこのとおり! -------------------------- 41人 (85%) ◇ よくわからない -------------------------------------- 3人 ( 6%) ◇ そうじゃないと思う ---------------------------------- 4人 ( 8%)
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ┃┃ お寄せいただきましたご意見や感想。 ┗━┛
┌──────────「細野孝司さん」 電源開発に対して言わなければならない事があるのではないですか。 └────────── ┌──────────「防衛太郎さん」 防衛省との取引に関しては、話題性が大きいことから単純に儲けが大きいと思 われがちですが、指名競争、随意契約に関わらず、契約前の見積段階で積算根 拠を経理部原価計算部門から求められるため、 民間での商取引ではほとんど開示されることのない製造(仕入れ)原価と営業粗 利をある程度提示しなくてはなりません。更に、契約段階で官側の値引き要求 =指値が入りますので、利益はかなり圧縮されてしまいます。 装備品や提供サービスによっては、特注品となるため、以後指名されるか否か に係わらず、開発費や機密保持にかかわる費用や、その他の関連費用がかかり ます。 また、専門性が要求される物やサービスが多いため、専門のスタッフを配置す る必要もあります。 商売としてはある程度安定しているとも言えますが、要求事項や持ち出しも多 く、トントンだと思います。 天下りに関しては、防衛省側もかなり神経質になっており、以前ほどではない とおもいます。専門性と各部隊要望を適切に把握し、最適な製品・サービス提 供を提供するには、ある程度必要かと思います。 └────────── ┌──────────「hideおじさん」 いろいろ調べられていているなと思いますし、取り上げている数字もほぼ正確 であり、非常に感心させられました。 少々付け加えさせて頂くと、現在のシステムでは汚職の構造が生まれ易い面は 否めませんし、随意契約にもマイナス面があります。何かと問題があるのは事 実ですが、関わっている企業(商社を含む)が儲け過ぎというのは一概には言え ません。 日本の武器にしろ、輸入される機器にしろ、価格が高くなる理由というものが あります。ーーーその点を正確に把握しないと、日本がおかれている現状とい うものが把握できないのでは ないかと思います。 私企業ですから、どんな商売においても利益を確保することは当然であります が、それが直ちに「仲介の企業が儲け過ぎている」には繋がるというわけでは ありません。何故なら、日本の兵器産業というものには非常に多くの制約が科 せられているということが挙げられます。 本来ならば自前で研究・生産できるものが、大戦後の取決めにより自主生産が 禁じられてしまったことにあります。勿論全てのものが対象ではありませんし 現在においては自前のものもたくさんありますが、基本的な構造は変っており ません。 要は、日本が兵器を作って戦争ができる国にさせない、という連合国の意思に よるものと言ってよいでしょう。その結果、戦前の全ての兵器産業が破壊され 「兵器」は外国から購入せざるを得ないという状態になったことです。 良い例が航空機です。「YS11」という民間機を作ったものの、長年生産は 勿論、研究でさえ許されておりませんでした。 結局、現在では、自前で研究するよりアメリカから購入したほうが時間的にも 費用的にも良いのではないかということになってしまっています。ですから、 売るほうとしては言い値で売ってくる訳です。 日本で生産できたとしても、非常に高いライセンス費用を支払わなければなら ないという構造もあります。簡単に言えば、日本は自前で何もできなくされて しまったというわけで、アメリカの兵器産業のお得意さんに成り下がっている といっても過言ではないでしょう。 いくらワシントンで交渉したとしても、「じゃ〜売らないしライセンスも剥奪 するから」と言われたらお手上げになってしまうのです。 また、兵器というものは非常に規格が厳重であり、刻印ひとつ、ネジ一本にま で仕様が決められていることにより、生産・管理工程が複雑になり価格が跳ね 上がってしまうということもあります。 このような仕様を満足できる企業というのは限られており、当然扱える企業も 限定されてしまうことになってしまいます。 何より大量生産できない、所謂手作業といっても過言ではないので、当然価格 は驚くような金額になってしまうのです。 これが他国のように、ひとつの産業として確立できるのであれば、大量生産の 道も開け、価格も下げることができますし、非常に高度な技術が要求される産 業ですから裾野が広く、雇用においても寄与できる可能性があります。 しかしながら、武器輸出が禁じられている日本においては、その可能性は皆無 といっていいでしょう。なにより、「兵器」と言っただけで拒絶反応が起きる 日本においては、輸出など机上の空論にすらなりえないかもしれません。 購入システムの問題、天下りの問題、さらに談合など、改善しなければならな い点は多々あるでしょうが、根本的に自前で何もできなくなってしまっている ことを変えなければ、岡崎さんが憂慮していることも変らないでしょう。 ひとつ判らないのが、 「防衛省の健全化こそが旧軍化しないことのためどうしても必要なのである」 ということです。 正直言って、戦前の日本軍のほうが規律的にもしっかりし ている部分もあり、自前でできたということからも、現在の防衛省よりしっか りしていたと言えるかもしれません。 天下り先を汲々と探すヤツや、お金をちょろまかすヤツを考えると、旧軍に見 習う点もあるのではないかと思います。
└────────── ┌──────────「岡崎けい子さんから」
はじめにお断りしておきますが、私は、まぐまぐからメールマガジン「救国の 提言」を書いており、9話、10話、11話に軍事関係のことを書きました。 今回掲載されたのは11話です。反論をお持ちの方は、是非9話10話も読ん でいただきたいと思います。特に10話には、私が現在の日本に一番大切だと 思っている「陸軍中野学校」の復活について書いています。 「hideおじさん」や「防衛太郎」さんのご意見は、防衛省を聖域化する危険が あります。 機密保持のもと、べらぼうな値段を承諾してはなりません。アメリカの死の商 人とよばれる武器商人は、相手次第で値段を変えます。「日本人は武器には無 知だ」と思っているのです。 日本独自の情報を取る努力をしなくては、もっと高い値段がつけられ、当然の ように防衛省は予算の増額を要求してくるでしょう。実際、20009年度の 予算は、庁から省に昇格したので増額する予定でした。ステルス機を売り惜し みされたので増えなかっただけです。 アメリカの商人は、敵対しているアフガニスタンにも武器を売っているのを私 は目撃しました。武器が溢れる中東では、ロシア製でもアメリカ製でも日本の 買う半値ぐらいであります。 「特殊な物は別にして、通常の射撃訓練に使うような武器なら別にアメリカ製 でなくってもいいんだけどなあ。国民が防衛費の膨張に不満を感じているので …何しろわが国は800兆の赤字ですから」 このようにアメリカ側に交渉した防衛省の人間がこれまで一人でもいたでしょ うか? もっと堂々とアメリカと交渉しろ、そのためには平時の情報戦が大切 ということです。 旧軍隊の軍人は、あまりに値段に関与しなかったために政商(財閥)をのさばら せました。 アメリカのポチではなく、せめてドーベルマンぐらいにはなりたいものです。 └────────── ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘ ▽  http://www12.ocn.ne.jp/~okazaki8/ 岡崎 けい子 okazaki88@mocha.ocn.ne.jp ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘ └→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。
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