寄稿転載記事 ――――――――――― by 岡崎溪子さん
☆ 平頂山事件の真実 ――――――――――――――― 2004/09/20

私は今、昭和7年に起きた「平頂山事件」について検証しています。

―――― 平頂山事件概要:

満洲事変勃発後1年の1932年、全満州未だ治安は安定せず、撫順近郊にお
いても7月頃から事件が続き、炭砿襲撃の情報も頻々ともたらされていた。

9月に入って、襲撃の企図がはっきりしてきたので、軍守備隊・警察・防備隊
(在郷軍人にて編成)・消防団などの他、青年団・自警団に加えて中学生までが
動員されて襲撃に備えていた。

15日午後8時過ぎ、情報に基づき非常招集がかけられ、それぞれ配置につい
た。この夜炭鉱を襲ったのは、遼寧民衆自衛軍第11路軍約1000名であっ
たという。

午後11時40分頃、襲撃進入路と目されていた南方の谷間に向けて、守備隊
が山砲の砲撃を開始、一方、楊柏堡に侵入して来た約300の敵との問で火蓋
が切られ、各所で戦闘が行われた。

この戦闘では、残念なことに、
・社員の渡辺寛一楊柏堡所長以下、殉職4名・重傷2名。
・家族の死亡1名・重傷2名。
・守備隊の負傷2名。

という犠牲者を出すに至った。

施設は、楊柏堡・老虎台・東郷・東岡、各採炭所事務所を焼かれ、炭砿の機能
は停止し大きな損害を蒙った。

一方守備隊は、撫順内部のスパイから警備状況を通報されていたとして、来襲
の際に足だまりとなった平頂山部落を調査したところ、前夜の襲撃現場からの
盗品が発見され、部落民が行動を共にした証拠とした。守備隊は部落民を一々
尋問したが埒が明かなかったため、なお徹底的に調査すると称して、部落民を
西方約1粁の崖下に集め、機関銃によって殺害した。

その人数は諸説があってはっきりしないが、瀋陽裁判では1800余名として
いる。
その中には多数の炭砿工人とその家族が含まれており、会社社宅ではなかった
が、工人部落ともいえるものであった。恐慌をきたした各坑工人たちが逃げ出
し、炭砿操業に支障をきたすほどであった。

この事件は、折からジュネーブで開催中の国際連盟の会議でも問題になった。

―――― 裁判:

終戦後、中国側新聞が「日本人は中国に対して血債がある、この負債を返させ
るまでは日本に帰すな」と事件を大きく報じるようになったが、国民政府軍の
進駐後、平頂山事件戦犯容疑者として、

久保字元炭砿長(事件当時炭砿次長)をはじめ、加藤作三郎・山下満夫・満多野
仁平・西山茂作・金山弓雄・廣田繁の炭砿社員諸氏、ならびに元警察官坂本春
吉氏が、中国検察官の手によって瀋陽戦犯収容所に拘留され起訴、

さらに、遣送予定の留用解除者中より、久米庚子・有瀬貞雄・藤沢末吉の三社
員が追加起訴され、国民政府東北行轅審判戦犯軍事法廷で裁かれることになっ
た。

宮本炭砿長等幹部、及び日僑善後連絡処は、軍事法廷当局・炭砿管理者等関係
方面に陳情嘆願を重ねたが、1948年1月、久保・山下・満多野・西山・金
山・藤沢・坂本の諸氏に有罪・死刑の判決が下された。
----加藤・久米・有瀬・廣田四氏は無罪釈放。

東北行轅軍事法廷当局に対する度重なる陳情・嘆願もその甲斐なく、有罪が確
定し、蒋介石総統就任の前日、死刑が執行された。

軍関係者には手が及ばず、代わってその責任を問われた方々は、全くの冤罪で
ある。

判決は、炭砿は防備隊と称する軍隊を保有し、これの指揮・命令権は炭砿長に
あり、即ち久保氏に責任ありとした。

しかし、防備隊は炭砿社員を含む在郷軍人で編成されたが、炭砿の組織ではな
く、編成権も指揮命令権も軍にあり、武器の保管管理も軍が行っていた。
戦闘能力を有する組織団体を会社がもつということは、日本ではあり得ないこ
とであった。

また、久保氏が炭砿従業員・家族が多数いる部落民を殺害することには反対し
たと、中国側資料でさえ認めているが、この部落は前記のとおり炭砿工人部落
ともいえるもので、会社幹部がその従業員と家族の殺害を命じ、指揮実行する
こともあり得ない。

また、県政府参事官として責任を問われた山下氏が満洲国に出向したのは事件
後のことであり、当時は東郷坑労務主任であり事件には関係がなかった。

炭砿は、前夜の襲撃によって犠牲者を出し、大きな被害を被ったが、この事件
自体はあってはならないことであって、むしろ日本軍の残虐行為として汚点を
残すことになったのは遺憾というほかない。

久保炭砿長をはじめ、犠牲になった方々、平頂山部落の人達のご冥福をお祈り
する次第である。

中国側は、殺されたのは3千人であるとする『殉難同胞遺骨館』を建て、掘り
出した遺骨を公開展示している。

「シベリア決死行」/岡崎溪子 出版:アルファポリス

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 http://www12.ocn.ne.jp/~okazaki8/

  岡崎 けい子 okazaki88@mocha.ocn.ne.jp
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                        = この稿おわり =
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