中国レポート ―――――――――― by 平野信幸さん
☆ 中国視察懇談 6.質問に対する所見(4) ―――― 2004/07/12

2004年3月、地域振興に関るシンクタンクと日本国政府機関の方々による
「中国進出企業の実態と、今後の日本企業の中国進出」に関して、現地調査の
ご来訪を受けました。

ご来訪に際しまして「事前の質問」があり、また小職の中国進出実体験として
の「中国レポート」を資料として提出しました。
ご来訪関係者のご理解を得まして、資料及び懇談内容(小職の回答)を「中国レ
ポート」として連載してまいりましたが「中国視察懇談」は、今回が最終のレ
ポートです。

―――― 1.中国脅威論と楽観論について

「日本では、中国脅威論と楽観論が言われていますが、そのことについてどの
ように思いますか?」

中国の経済発展にともない、日本国内には「脅威論と楽観論」が並立している
現状は、嘗て日本が経験したことのない事実に戸惑っている証左であると思わ
れます。これまでも多くの人たちは、未体験の事態に遭遇した場合、「感動と
恐怖」を同時に体感したのではないでしょうか。

「感動と恐怖のどちらが強いか」、また「その感じ方」は、個人の経験や好み
によって違うものと思われます。しかしその原因を追究すれば、その根は同じ
ものであることが多く、「未知なる故の恐怖、未知なる故の期待」、同じ「未
知」でも、人により相反する感情が生まれることは正常な感情だと思います。

「脅威論」を唱える人の根拠となるものは、13億の人口を抱える中国の経済
成長が将来に亘って継続すれば、日本経済は「龍に飲み込まれる」と感じてい
るのだと思います。そして、「楽観論の根拠」は、日本の技術の進歩は留まる
ことはなく、中国が日本の現在の技術に追いつく頃は、「その先に行けるだろ
う」という「漠然とした希望的な願望」なのではないでしょうか。

歴史的な事実から検証すれば、日本の経済・技術が中国より勝っているのは、
二千年余の歴史の中で、近代の百年間のみに過ぎません。

まずこの事実を謙虚に受け止め、将来のために「何をすべきか」を冷静に判断
する必要があります。1980年代後半において、日本経済は世界一といわれ
「もうアメリカに学ぶものはない」とまで論評された時期があります。

しかし、その後のバブル崩壊によって受けた打撃は、いまだにその後遺症を引
きずっています。その原因の一つは、日本人と日本社会が抱いた「驕りの帰結
だった」のではないでしょうか。

昨年は、「世界デフレの元凶」として、「人民元バッシング」が起り、「日本
へのデフレ輸出」と中国経済が「眼の仇」にされました。昨今の日本経済の復
調は「中国経済特需」とも言われており、「人民元切り上げ圧力」もいつの間
にか沈静化してしまった感があります。

また、中国が抱える問題として、沿岸地域と内陸部の「所得格差」が頻繁に指
摘されますが、中国では日本と違い、生活経済の環境は均一ではありません。
経済的に発展して上海や大連間においても、生活物価は2割程の違いがあり、
内陸部においては3〜5割以上の違いも特別なことではありません。
一律的に所得収入の格差で経済格差=不安定要因)と判断するのは誤りです。

中国に限ったことではありませんが、「一過性の現状に囚われることなく」、
大局を見極めて判断することが重要と思われます。発展成長を続けている中国
に「進出するもの、しないのも」、経営者の自己判断(=価値観)でしょうが、
それを判断するために正確な情報を提供することが、今最も重要であり、必要
ではないかと思います。

―――― 2.日本の地域振興について:再生事業特区企画の提案

「日本の地域振興について、ご意見を聞かせて下さい。」

日本では、昨年地域振興対策として、「経済特区」に関る特別法が施行されま
した。この制度を利用して、「地域(地方)・人材・資源の再生事業」を提案し
ます。

「資源リサイクル法」の施行に伴い、企業は市場に提供した製品のリサイクル
が義務付けられていますが、製品のリサイクルは、コスト的には、利益が出る
経済ベースに乗せることは大変困難な事業であり、それが「不法投棄や不法転
売」を生む要因になっています。

本来は、「受益者負担」として、製造者とその製品の利用者が負担しなければ
ならいのでしょうが、多くの海外製品の流入によって、製造者にその負担を負
わせるのが困難になり、国内の事業者に負担を強いた場合、競争力が失われて
産業の停滞に繋がる危険もあります。

「リサイクル法」を実現可能にするには「リサイクル費用の低減によってリサ
イクルを事業化する」のが最も重要な課題です。それを可能にするには「再生
事業特区」を設けて、破綻(塩漬け)した「地域開発区」に、社会に適合出来な
い(社会から受け入れられない)人材を登用し資源のリサイクルを行えば、「地
域・人材・資源」の再生が可能と考えます。

―― 1.概要

地域・人材・資源の再生を可能にする事業

―― 2.地域の再生

破綻した開発区や、塩漬けになっている地方開発区の、再生を可能にする事業
を展開。(例:苫小牧東部開発区)

―― 3.人材の再生

1)自己破産者 : 年間 240,000人
2)ホームレス : 全国  25,000人
3)受刑出所者 : 年間  27,000人
4)失業者   : 全国   300万人
5)自殺者   : 年間   8,000人(経済的理由)
6)高齢退職者 : 60歳以上の高齢者、約2,400万人(男子 1,000万人)
7)新卒未就職者(技術習得教育、インターシップ制)
8)フリターの再教育(技術習得機会の提供、インターシップ制)
9)過去の所業により社会的制裁を受けている優秀な人材

一時的な理由で社会から受け入れられない、経営者・弁護士・医者・経済学者
・教育者・警察官・犯罪者の家族等、一般社会での生活が困難となった人材に
(過去の経歴、環境等を不問として)活躍の場を提供する。

上記の人材が活躍出来るステージを設けて、再生・育成を図る事業を行う。
衣食住の保障で格安の人件費(特別法)によって実現する。(対象者の入所・
出所は、個人の自由意志を尊重し、保障する。)

―― 4.資源の再生

― 資源リサイクル事業
リサイクル法が制定されて、多くの産業製品のリサイクルが義務となりました
が、リサイクルには多額のコストが掛かり、通常の営利事業としての可能性は
困難が予想されます。

再生に必要なコスト(インフラ・人材)の削減を可能にすれば、家具・家電製品
・車両・ゴム・プラスチック・紙等の資源再生を事業化することが出来ます。

―― 5.再生事業の目的

再生事業を、格安の場所(破綻開発区)で、格安の人件費(上記人材)によって可
能にします。

一時的に様々な理由で、一般社会に適合出来ない人々(社会的制裁を受けてい
る人)は、安定した衣食住の提供を行えば、その能力を発揮できると確信しま
す。過去の社会的な責任から彼らを保護し、再スタートの機会を与えることは
極めて意義のある事業であると思います。

上記人材には、優秀な人材も含まれており、その人材の経験・技術を活用出来
ます。
事業所内には、受刑者更正施設を併設します。
必要な設備は倒産・廃業企業の設備やリース終了品を、格安で活用・再生利用
します。

再生された製品は、教育機関への寄付(国の買い上げ)・発展途上地域への贈与
(国の買い上げ)・インターネットでのオークション等により収益を確保して、
自主運営を可能にします。

一般社会の自由競争に影響を与えない事業の推進によって、地域・人材・資源
の再生を図る事業

上記人材において、懸かる事業企画が実現すれば、その希望者は数万人に達す
ると思われます。地方自治体によって企画された塩漬けになっている開発区は
全国にあり、土地・人材・資源の再生事業は、現在の日本にとって必要で価値
のあるビジネスモデルではないでしょうか。

1事業所5千人規模としても10ヶ所以上で再生事業を実現することが可能。

リサイクル事業の他に、時間や費用等が問題で一般に事業化が困難な事業を行
う。

― 人材の育成事業

盲導犬・介護犬の飼育・訓練、訓練士の育成
農業開発・研究
その他、開発・研究の受託

―――― 雑感・山西紀行

山西省は、北京より南西へ約500キロ(省都、太原)に位置し、南北約600
キロ(東京―青森)、東西約300キロ(東京―新潟)で、太原周辺は山に囲まれ
た広大な盆地になっています。(東北・上越・関東の総面積とほぼ同じ、標高
約1千メートル)

この地域を発展させた歴史は2千年以上に遡り、金融システムの発祥地で商業
文化が栄えた所であるといわれています。太原は古き都西安と、新き都北京の
ほぼ中間に位置しており、さらにその線上を南西に辿ると、三国志の「西の雄
・劉備玄徳」が蜀の都をおいた「成都」があります。

「成都―西安―太原―北京」は、一直線上にその距離もほぼ等しく位置してい
ます。その距離は東京―大阪間とほぼ等しく、これは偶然の一致というよりも
過去の為政者が選択した必然的要因(支配的理由による文化的な隔離政策)なの
かもしれません。「成都」と「太原」は2千年前からその地名が変わらず残っ
ており、歴史的に重要な地域であったことが伺い知れます。

気候は内陸性の気候で、11月〜3月までは冬で、5月〜9月までは、日中の
気温が30度を超えることもあり、日本の夏を思わせるが、湿度が低く、日の
沈みと共に気温が下がり、大変過ごし易い気候です。

降雨量は少なく(年間降雨量約500mm)、河川の殆どは水無し川となっていま
す。――地元の人の説明では、鉱山開発により、水脈が消えたとのこと――
河川敷が畑に利用されているところから観ると、季節的要因ではなく、かなり
以前から水が消えたと思われます。水道水は上海のような消毒臭もなく、非常
に美味しい水でした。

山岳には、樹齢50年〜100年の、松・白樺・ブナ類の木が茂った地域もあ
り、水無し川の要因には、森林の伐採によって保水力が減少してしまったこと
も一因ではないかと思われます。

農耕地は、小麦が多く栽培されており(稲作は見かけなかった)、りんご、葡萄
や桃等の果樹の栽培も盛んであるようです。気候、環境の要因から見ると、日
本の葡萄、桃、梨、サクランボ等、高級・高品質の果樹園事業には魅力的な地
域であると推測します。
農産物は安価で(上海の市場の50%以下、日本の20分の1程度)、一般住宅
も極めて安く(上海の1〜2割)、空気が乾燥している為に、少々埃っぽい気が
しました。

生活・産業用のエネルギー源として、石炭・練炭が多く使用されており、いた
る所で野積みされた石炭を見ることが出来ます。そのため、空はガスがかかっ
た状態で、満天の星空は期待出来ませんでした。

12時〜14時30分までは、昼食(三食の内で、最も重要な食事)と休息の時
間となっており、殆どの人が自宅に帰り(就学の児童も帰宅する)、家族団欒で
食事を取り、その時間を大事にしています。

事業所の就業時間は、8:00〜12:00、14:30〜18:30

住民は「質素な生活を尊び」、儒教的精神が息づいており、親族の結束が強い
そうです。
太原の南100キロの平遥には、古い城壁市街が現存しており、観光地として
も一見の価値があります。

                        = この稿おわり =
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