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中国レポート ―――――――――― by 平野信幸さん
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☆ 中国視察懇談:5.質問に対する所見(3) ―――― 2004/06/21
2004年3月、地域振興に関るシンクタンクと日本国政府機関の方々による
「中国進出企業の実態と、今後の日本企業の中国進出」に関して、現地調査の
ご来訪を受けました。
ご来訪に際しまして「事前の質問」があり、また小職の中国進出実体験として
の「中国レポート」を資料として提出しました。
ご来訪関係者のご理解を得まして、資料及び懇談内容(小職の回答)を、5回に
亘り「中国レポート」として連載します。
―――― 金融資産の還流
中国は急激な経済発展にともない、社会インフラの整備が緊急の課題となって
います。また、2008年の北京オリンピックや、2010年の上海万国博覧
会と、世界的規模でのイベントも計画されており、それらの国家プロジェクト
は100件近くに上ります。それらの総事業予算は、50兆円以上といわれ、
世界の金融界は、これをビジネスチャンスと観て中国において活動を始めてお
ります。
―― 自主開発企業企画<自己完結型工業開発区プロジェクト>
―― 1.中国進出の課題
1.中小企業の中国進出
日本の中小企業が置かれている現状は、「中国進出を検討したいが情報もコネ
もなく、時間も資金もない」というのが実態であろうと思われます。しかし、
技術大国としての日本経済の発展の原動力となり、根底から支えてきたのは、
創意工夫に富み、優秀な技術を保有してきた中小企業ではないでしょうか。
相次ぐ取引先の中国進出によって市場を失い、アジア各国の技術レベル向上に
よって世界での競争力も失いつつあります。これらの企業の中にも、中国進出
における様々な障害が除かれ、経験がなくても中国進出が出来る体制があれば
将来の展望を見出すことが出来る企業が多くあると思われます。
今後、中国進出を最も実現しなければならないのは中小企業であり、それらの
企業には、残念ながら多くの面で「失敗しない中国進出を実行する要素が不足
している」のではないでしょうか。
資金も時間も限られた企業が中国進出を実現するには、その受け入れを可能に
するステージを構築する必要があります。それを実現するには、日本の企業・
団体が、自らの知恵と資金で工業団地を開発し、日本国内での生産拠点と同じ
ような状況・環境を創出することではないかと思います。
2.中国進出時における懸念項目
中国進出で懸念される重要な事柄は、安全と食生活・言葉・文化、そしてコス
トとリスクです。これらの諸問題を解決できる事業プランがあるとすれば、海
外進出、中国進出と意識することなく、「多くの中小企業が最低限の決断で中
国進出を可能とする」のではないでしょうか。
中国では、毎年8%以上経済成長が継続し、昨年来電力エネルギー問題が中国
進出企業の懸念材料になっています。この電力問題を解決するためには、コー
ジェネレーションや先進的省エネシステムの導入、風力・ソーラー発電等の事
業を共同で行うことが肝要と思われます。
――懸念項目――
1)販売方法と回収問題
2)単独では経験・ノウハウがない。合弁では、相手先に不安がある。
3)中国を任せる、人材がいない。スタッフの確保と教育の問題
4)人材と技術の流出に不安。
5)駐在員費用とコストメリット。
6)協力工場とその技術レベル。中国国内部品の品質と安定供給
7)工場の選定・インフラの問題。
8)許認可・手続きの方法・法律の問題。コネがない。
9)法律・制度の変更について。
10)将来の人民元の切上げによるコストアップ。
12)進出の資金調達と投資の回収方法
13)反日感情
14)情報の信頼性(政府発表)
15)電力エネルギー問題
―― 2.共同開発事業プロジェクト
1.共同開発事業目的
1)中国進出中小企業:初めての中国進出でも不安のない支援体制、情報・人
材の共有
2)中国駐在員 :安心・安全・安価で快適な住居環境の提供と現地生活
サポート
3)人材の確保 :共同による人材の育成
4)事業機会 :開発区内(500社)での事業機会
5)共同事業 :販売・購入・設備利用・事務会計・資金調達・法律・
情報収集
6)離職者 :再挑戦のための就業機会の提供
7)中国留学 :インターシップ制による就業機会で、中国滞在費用の
捻出
2.プロジェクト参加企業が受けるメリット
1)中国での経験・ノウハウが不必要
2)多くの専門家・コンサルタントの助言が得られる
3)人材の確保・合同教育
4)駐在員の費用が安い
5)売掛金回収問題の解決
6)許認可・手続きの方法・法律の問題解決
7)工場の選定・インフラの問題解決
8)開発区内に協力工場があり、ビジネスチャンスがある
9)共同販売・共同購入・情報の共有・高精度設備の共同利用
10)安全と安心の享受
3.事業概要
1)開発面積 :100万平米
(建蔽率50%、容積率200%、工場面積100%)
2)総資金 :約330億円(約3億ドル、約24億元)
(プロジェクトファンドで資金調達)
3)参加企業 :500社 総売上(約2000億円、推定)
4)開発場所 :新開発区
(土地は購入せず、中国側の提供により共同事業とする)
5)総従業員数:約5万人(日本人駐在員数約1500〜2000人)
4.開発区内付帯事業
1)受託生産・販売代行・貿易・資材購買・部品調達・市場開拓・研究開発
2)物流・出版・印刷・広告・通信・インターネット・システム開発
3)通訳・翻訳・税務会計・法務支援・コールセンター事業
4)人材派遣・コンサルタント・M&A・展示イベント企画・モニター
5)ベンチャーキャピタル(創業支援)・保険・金融・エネルギー・レンタル
事業
6)不動産・施設管理・警備保障・病院・リハビリ更生施設
7)旅行・ホテル・飲食・小売・農産物生産(無農薬野菜工場)
8)小学校・中学校・国際学校
9)技術学校・通訳養成学校・管理者教育学校
―― 3.共同事業
1)売掛金保証事業(代金回収・支払い保証システム)
中国進出している外資企業にとって、中国国内での取引の代金回収問題は最も
大きな課題である。この問題を解決するために、回収・支払いの保証システム
を構築する。
<保証システム>
・日本の企業が中国で商品を販売する時、購入企業は保証会社に代金を前払い
する。
・保証会社は代金の預かり保証書を発行する。
・日本企業は製品を顧客に納入する。
・購入企業は製品を受け取ると、性能・数量を確認して、受け取り確認書を保
証会社に送る。
・保証会社は、その確認書によって製造企業に製品の代金を支払う。
この保証システムによって、製造企業は代金の回収が保全され、購入会社も製
品の仕様・性能に関して保証が受けられる。保証料は、販売・購入企業から、
それぞれ1%とする。(最近、日本の銀行が始めた債権買取制度は手数料5%
債権取立て代行は15〜20%)
2)人材の育成(技術学校の創設)
中国進出の企業にとって、日本の商習慣を理解したスタッフの確保は最も大き
な課題である。技術・物造り教育機関を創設し、継続的に優秀な技術者の育成
を行う。修了者は開発区内に就業出来る機会があり、参加企業にとっても安定
的な人材の確保が可能となる。
管理職養成学校を創設し、管理職の教育・育成を行う。
語学教育のための制度を設け、技術力も備えた高いレベルの通訳を養成する。
日本からの留学生を受け入れ、インターシップ制によって開発区内の企業での
就業機会を提供し、留学費用を免除する制度を設ける。
3)人材の共有
通訳・翻訳・税務士・弁護士・コンサルタント等の人材を共有する。
4)共同事業
物流・出版・印刷・広告・通信・インターネット等の共同事業を行う。
5)共同研究開発事業
参加企業のノウハウを活用して、中国国内企業や大学・研究機関との共同開発
・研究を行い、双方に成果がある事業を行う。中国企業の技術導入支援および
中国・日本双方の合弁を希望する企業に対し、その紹介・支援を行う。
6)エネルギー対策
共同事業によって、環境・エネルギー問題を解決し、先進的モデル構築する。
7)奨学制度
経済的に恵まれていない地域の小学・中学・高校の児童・生徒に対し奨学を行
い、希望する者には開発区内での就業や技術学校に受け入れを行う。
8)中国−日本の交流支援
この開発区の実現は斬新な事業モデルとなり、日本及び世界各国からは多くの
見学者が訪れることになると思われる。その来場者によって、中国と日本及び
世界各国との交流が可能となる。
9)その他支援事業
中国や日本の各機関の要請を受けて、社会システムの研究や開発・モニター等
の支援事業を行う。
―― 4.開発事業の推進
日本の自己資金によって、100万平米の自主開発を行い、500社の企業が
参加し、それが実現出来るならば、その開発区はあらゆる面で自己完結が可能
であり、サービス産業を含めた多くの業種の事業展開も可能となります。
(自己完結には、一定の規模が必須の条件となる。)
また、自主開発によって開発区内施設のコストの削減とリスク低減が可能で、
適正な利潤によって提供すれば、利用者にとって魅力的な価格で施設の利用が
実現出来ます。
現在、日本人スタッフを中国に派遣すると年間1500〜2000万円の費用
が必要といわれています。この費用の大半は、日本人コストと呼ばれている、
住宅費や食料費・教育費の高騰の為です。
自主開発によって住居建築を行えば、中規模住宅(100平米)で3000元≒
45000円)小規模住宅(単身者用60平米)は2000元≒30000円)
程度で利用出来ます。この価格は一般的な上海における日本人の住居費の約三
分の一であり、同様に食料費においても一日当り30〜40元≒450〜60
0円)で充分な食生活を送ることが出来ます。
(工場・事務所の賃貸料は300〜500円/平米)
単身者の場合、1ヶ月の必要経費は5万円程度で、15万円≒1万元)の収入
でも10万円の可処分所得を得られることになります。1年に2回の帰国費用
や年金・保険等と考慮しても、年間250〜300万円の報酬で雇用が可能で
す。(日本での可処分所得は、月数万円といわれている。)
充分な環境整備を行い、海外生活の諸問題を解決し、駐在員の滞在費用が削減
出来れば、中国進出の大きな障害が一つ除かれることになります。また、駐在
員が進んで中国駐在を希望するような環境整備を行うことは、中国進出事業成
功の為に「欠くべかざる要因」です。
そして、その実現には自己完結が可能な規模の自主開発を行うことではないか
と確信します。多くの企業が参加出来るプロジェクトには、中国に関して経験
豊かな専門家・コンサルタント、そして高度な技術を持った定年退職者や離職
者が集い、その技術・情報など多くのものを共有することが出来るでしょう。
この開発区が実現出来れば、概に中国進出を果たした企業の中にも、移転を希
望する事業所が出てくると考えられ、新しいビジネスモデルとして他に波及す
る可能性もあります。
開発事業は、情報・通信・エネルギー・保険・金融・保証システム等のサービ
ス事業を加えることにより、5年程度で投資資金の回収は可能です。将来的な
事業性も高く、日本が保有する金融資産の有効利用にも貢献出来るのではない
かと思います。
<共同開発事業推進に伴う中国の法律的問題の検証は終わっておりません。>
―― 雑感
この事業企画書を作成した経緯は、2002年初頭に、上海交通大学において
スピーチを依頼され、「中国磁石産業の現状と将来」について話をした時、会
場に日本政府機関の方が出席されておりました。後日、面談の要請があり、日
本の将来について意見を求められ「日本が持つ、最も有益な資産(技術と金融
資産)を活用する必要があります。」と、答えたのがその始まりです。
「技術と金融資産の活用を如何にして実現するか」という宿題を頂き、その後
1年間の考察を経て、03年3月にこの企画書を作成しました。
報告直後にSARS騒動と、7月には電力不足問題が発生し、企画書は残念な
がらペンデイングとなっております。
本年は、昨年以上に電力不足が問題となり、日本企業の中国進出は大きな困難
に直面させられております。上海地区では、企業間の利害調整は困難な状況で
日系企業が全体として電力不足を認識し、解決できる環境ではありません。
改めて、本企画のような「自らの選択と決断によって行動できる環境が必要な
時期ではないか」と思います。
くしくも本年3月には、日本の銀行により、中国進出支援ファンド(三井住友
銀行他、総資金約300億円)が発表され、日本国内においても理解が得られ
る状況になったのではないかと思います。
= この稿おわり =
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上海平野(瑞穂)磁気有限公司
平野 信幸
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