中国レポート ―――――――――― by 平野信幸さん
☆ 中国視察懇談:2.中国進出失敗の要因 ――――― 2004/05/16

2004年3月、地域振興に関るシンクタンクと日本国政府機関の方々による
「中国進出企業の実態と、今後の日本企業の中国進出」に関して、現地調査の
ご来訪を受けました。

ご来訪に際しまして「事前の質問」があり、また小職の中国進出実体験として
の「中国レポート」を資料として提出しました。
ご来訪関係者のご理解を得まして、資料及び懇談内容(小職の回答)を、5回に
亘り「中国レポート」として連載します。

―― T.中国進出の失敗要因

中国進出におきまして、事業の推進が困難になる要因には、幾つかの共通した
問題があります。

1)進出目的が明確でない。

中国進出の目的は、事業利益を出すこと。計画性をもって投資し、計画と実態
を常にチェックして修正を行うことが肝要である。「捨てる心算の投資」は、
結局捨てることになり、その以上のマイナス要因も発生する危険がある。

2)適材適所な人材でない。

将来における中国事業の期待度によって、その期待に見合う人選をする必要が
ある。決して、リストラ対象者や退職間近かな者を中国駐在員として派遣して
はならない。
この人選問題は、中国進出をする経営者が犯している最も大きな過ちである。

3)現地責任者を過度に信頼する。

自社の中国人スタッフや、友人・知人を現地の責任者として選定する。
過度に信頼をして全ての権限を委ね、事業を失敗させる事例も多い。
日本において「実印を預け、権限委譲が出来る人材かどうか」で、判断しなけ
ればならない。

4)人材育成をしない。

技術の流出を恐れるあまり、スタッフの育成に力をいれない。人材育成を怠る
と、継続的に日本人駐在員の派遣が必要になり、その費用が大きなコスト負担
となって事業利益が上がらない。

5)中国の市場を観ない。

自社の技術に驕り、中国の市場に合わない製品を販売する。(=押し付ける)
日本で受け入れられる機能・性能が、中国では通用しない場合もあることにも
留意が必要である。

―― U.中国進出失敗事例

事例その1 <中小企業・製造業>

知人の中国人の案内・紹介で、中国への訪問2回のみで中国進出を決断。
派遣した駐在員=日本人)が中国の生活に馴染めず、離職。事業継続に困難を
極める。

原因:中国での事業経験・情報収集の不足・駐在員人選の誤り。

事例その2 <中堅企業・製造業>

ユーザーの中国進出・要請により進出を決断。
事業規模がそれ程大きくない為に、進出企画責任者は関連企業との合弁、又は
委託を提案。帰国後、社長の決断により独資進出を決定。
ーー事業の収益(投資回収)に全く目処が立っていない。

原因:中国進出の目的が経営者の面子維持に変わってしまった。

事例その3 <大企業・製造業>

製造コスト削減の為に、中国国営企業と合弁事業を決定。
工場建設当初から、計画遅延・建設コスト上昇に悩まされる。 
機材購入決定権がなく、事業計画予算の変更を余儀なくされる。

原因:日本のトップ企業としての驕りがあり、緻密な情報収集をしなかった。

事例その4 <大企業・製造業>

新事業展開のため中国進出を決定。
事業計画(売上と利益)に不釣合いな投資を実施。追加の投資必要性に迫れられ
る。

原因:中国進出の目的が、企業の体裁保全に優先された。

事例その5 <中堅企業・製造業>

社内に在職していた中国人スタッフに、全権委任で中国進出。
2年足らずで事業継続困難になる。

原因:過度の信頼が破綻を招いた。
  --通訳としての資質を事業経営の能力と混同した。

―― V.中国進出時における懸念事項

1)販売方法と回収問題
2)単独では経験・ノウハウがない。合弁では、相手先に不安がある。
3)中国を任せる、人材がいない。スタッフの確保と教育の問題

4)人材と技術の流出に不安。
5)駐在員費用とコストメリット。
6)協力工場とその技術レベル。中国国内部品の品質と安定供給

7)工場の選定・インフラの問題。
8)許認可・手続きの方法・法律の問題。コネがない。
9)法律・制度の変更について。

10)将来の人民元の切上げによるコストアップ。
11)進出の資金調達と投資の回収方法
12)反日感情

13)情報の信頼性(政府発表)
14)電力エネルギー問題

―― W.中国進出が有利な事業

1)人件費のコストウエイトが高く、高度な設備・技術を必要としない事業
2)現在、取引先及び製品の60%以上が中国向けの事業
3)独自の技術・ノウハウがあり、類似品が脅威とならない事業

4)現在、中国に競合がない事業
5)中国の将来に大きなマーケットが生まれる可能性のある事業
6)コスト削減によって、日本の市場獲得が可能な事業

7)投資の回収が5年以内に可能と見込まれる事業
8)現地調達率が60%以上を実現できる事業

―― X.事業規模による中国進出形態

1)進出後3年以内に、駐在員・出張者の経費を除いて事業利益が1億円以上
  可能な場合、独資による事業展開を計画する。駐在員派遣は、事業利益5
  千万円で1名程度を目標とする。

2)駐在員・出張者の経費を除き、事業利益が1億円以下と推測される場合。
  合弁事業により中国進出をする。常駐の駐在員は1名。

3)事業利益5千万円以下と推測される場合。
  合弁事業により中国進出。駐在員は派遣しない。

4)当面の事業利益は3千万円以下と思われる場合。
  当面、委託生産により事業を行い、将来の中国進出の足がかりにする。

中国進出の計画に際しては事業の規模ではなく、事業利益の可能な額によって
進出の形態・投資可能な金額を検討すべきです。技術指導・移転には事業内容
によって相違があり、充分な試算の元に少なくとも3年後には事業黒字を達成
して、その後「5年以内には投資を回収出来る見込みが立てられる事」が肝要
です。----捨てる心算で来ると、それは現実となる----

そして事業推進に際しては、中国進出の目的と計画を充分に理解(計画を立案)
し、それを実行できる人材を現地責任者に任命することが、極めて重要な課題
となります。

―― 雑感 中国電力事情

中国では電力不足解消のため、発電施設の建設規模が急速に拡大しています。
中国での発電施設建設プロジェクトの拡大は、日本や、韓国などの海外企業に
とってもビジネスチャンスとなり、その結果、発電設備の輸入価格上昇を招い
ており、海外から輸入される発電設備の価格が急騰。「従来の2倍近くにまで
上昇している」と4月5日付で新華網が伝えました。

中国では、毎年、約3000万Kwの新規発電所の建設計画が予定されておりま
すが、その一方で、老朽化した設備の運転停止もしなければならず、実質的な
電力設備の増強は3000万Kwには及ばないものと推測されます。

2003年末の中国における発電能力は、約3.85億Kwで、昨年の電力需要
の伸びは約15%に及び(約5000万Kw)、04年の伸び率が減少したとして
も、近い将来において電力事情が改善することには期待を持つことが出来ない
状況です。

中国進出企業にとっての短期的な解決策は、自家発電機の導入が最適な選択肢
なのですが、企業が独自に発電機を導入するには設備導入の認可や燃料の確保
等、数多くの問題があります。

上海では4月23日、最高気温32度を記録し、今夏の電力不足問題が懸念さ
れるところです。

                        = この稿つづく =
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   上海平野(瑞穂)磁気有限公司
       平野 信幸
  mail: shhirano2001@yahoo.co.jp
   HP  : http://www.shmagtec.net/
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