中国レポート ―――――――――― by 平野信幸さん
☆ 中国電力事情V ―――――――――――――――― 2004/04/04

―― T.中国電力現地調査ミッション

04年3月14日〜20日の間、日本の経済産業省・ジェトロ・国際協力銀行
・海外電力調査会・日中経済協会、そして電力関係機関や企業からなる「中国
電力タスクフォース」による現地調査と、北京(鈞魚台)において「日中電力セ
ミナー」(16日)が開催された。

訪問先は、北京の政府・関連機関(国家電力監督管理委員会・国家電力網公司
・国家発展改革委員会)と、省政府・関連機関(江蘇省・浙江省)で、各機関の
責任者の同席を得て情報交換を行った。

「日中電力セミナー」においては、日本企業から電力システム技術、電力の平
準化、夜間電力の有効利用と電力関連投資協力、そしてジェトロ上海からは
「華東地区における電力不足の状況とその対策提案」の発表があった。

情報交換においては、昨今の電力不足は認めているものの、近い将来において
根本的な解決がされるような政策は示されず、「深刻化している実態の認識は
低い」との印象を受けた。

―― U.自家発電機の導入問題

日本企業が電力不足対策として求めている、「自家発電の導入」に関しては、
「殆ど不可能といわざるを得ない回答」であった。自家発電導入は「コージェ
ネ」が原則で、導入の条件は「発電容量5MW以上、熱利用50%以上」で、
この条件に合致する事業所は極めて限定されている。

また、発電機の出力は電力網との系統連携が求められ、その電力は電力網に組
み込まれて、自社使用の電力であっても配電料を徴収される可能性もある。
更に切迫した電力不足の事態には外部への供給協力要請も考えられ、自家発電
導入対象の企業であっても、自社の発電装置が自由に利用出来ない状況も想定
される。

今後の中国進出において、電力エネルギーが事業推進に重要なファクターを占
める産業では、「極めて高いリスクが存在している」ことを、留意しなければ
ならず、現地の情報収集が更に重要である。

―― V.中国進出企業の現状

現在、中国進出企業にとって、電力不足における最大の問題は「計画的な生産
が出来ない」ことで、これは直前の通告や、通告のない停電によって「工場の
稼動に大きな支障をきたすため」である。

また、外部の協力企業が受ける停電は、必要な資材調達が出来ない状況の発生
も考慮しなければならず、これらの問題によって在庫増加が必要となり、コス
ト負担(資金負担)増も懸念される。

中国の電力事情は、現在の電力不足が近々に解決される情勢ではなく、自家発
電の導入による自己防衛対策も実行出来ない現状において、日本企業が選択出
来る対策は極めて限定されている。

―― W.中国進出企業の対策

1)省エネ技術の導入

積極的に日本の優れた省エネ技術を導入して、電力消費の削減に努める。
中国の事業所には、生産に必要な限られた人員しか派遣されておらず、省エネ
技術の導入には、日本の専門家による「省エネ支援サービス」を受ける必要が
ある。

省エネ技術導入によって、最大使用電力の削減を実行して電力不足問題に些少
であっても貢献をし、率先して協力する姿勢を示す。

2)自主的電力供給制限

開発区内(近郊地域内)の企業間調整によって、自主的に電力受給制限を実施す
る。
各企業間の調整は容易ではないと思われるが、休日や操業時間の変更を調整し
て、主体的に供給制限を受け入れる。電力供給の逼迫状況に応じた段階的受給
制限対策をまとめ、先の省エネ技術の効果と共に、30〜40%の制限が実施
されても事業の推進が出来るような体制を構築する。

自主的な電力供給制限は生産計画の立案が容易となり、電力不足で最も大きな
問題の解決になる。

3)非常用発電機の共有利用(外部委託)

自主的な電力供給制限を受け入れると共に、電力を止められない設備や、生産
中止が困難な事業において、非常用発電機の共有によって、電力不足対策を行
う。

94年以前に中国進出をした企業は、中国の電力不足は前提条件であり非常用
発電機を設置していた。しかし限られた人員において、発電機の保守管理や運
転に伴う経験不足、また事業内容の変更によって、設備はあっても稼動してい
ない、稼動することが出来ない事業所もある。

同一地区内において、日本企業同士が自主的電力供給制限を受け入れ、計画的
な停電対策として可搬式の非常用発電機を共有することができれば、実質的に
停電が回避できる。
非常用発電機の使用制限は示されておらず、共同利用(外部委託)は、燃料供給
やメンテナンスも含めて多くの問題が解決でき、発電装置導入の資金負担が必
要でなくなる。

4)ESCO(エネルギーサービス事業)の設立

非常用発電機の事業は、ESCO設立によって解決する。

エネルギーサービス事業は、サービス産業であり日本独資での事業展開は困難
と考えられ、信頼出来る中国側のパートナーが必要となる。
ESCO事業は、先述の省エネ支援も行い、日本の省エネ支援サービス会社や
電力供給を受ける企業等の出資によって設立する。事業計画は数年後の電力事
情の緩和を想定し、期間を限定した事業として解散も視野にいれた計画を立案
する必要がある。

―― 雑感

今回、日本の政府機関や関係企業団体が中心となった「中国電力現地調査ミッ
ション」に縁あって参加させて頂きました。現在及び将来の「中国電力事情」
に関して、現場から省政府、中央政府と距離が離れるほど、その危機感は薄く
なっているように感じました。

日本側の技術や資金協力も「肩すかし」の感が在り、改善の対策も皆無に等し
く、自家発電の導入には「熱利用を主体としたコージェネ、5千KW以上」と
の条件が付加され、極めて困難な印象でした。

しかし、今後の電力供給制限問題は中国進出の日系企業にとって、事業継続に
大きな障害となって、死活問題にも発展しかねません。「上に政策あれば、下
に対策あり」といわれる中国において、現制度の範囲内において可能な対策を
早急に検討しなければならない状況であると思われます。

それには、個々の企業において行える対策は限られており、人脈やコネで行う
には問題が大きすぎると考えられます。一部の企業では、この存在が危機意識
を希薄にしている感もあります。現時点においては、企業間調整などの様々な
障害もありますが、省エネや風力発電なども含めたESCO(エネルギーサー
ビス)を共同事業して推進する事は、日本企業が実施出来る「数少ない対策の
一つではないか」と考えます。

このESCO事業は、緊急用の電力供給資源として、中国の省・政府にも提供
可能な計画も視野に入れ提案・申請を行えば理解が得られると期待できます。
現状は、中国の制度や法律の不備を非難しても解決できる問題ではなく、不用
意なベクトルの圧力は関係悪化・障害の増大を招きかねません。

中国においても、再生可能エネルギーの利用は計画されておりますが、経済的
効果の期待出来ない太陽光発電や、風力発電の設置・稼動は困難と推測されま
す。これらのシステムや運用技術の支援と共に、電力の平準化を目的とした蓄
熱・蓄冷を行う夜間電力の応用技術、更に日本の先進的な省エネ技術の導入は
中国の社会に貢献し、「将来、必ず感謝される事業である」と確信します。

中国進出の日系企業が、「自らが率先して、問題解決に当り」「相互理解と互
助の精神を以って決断する」ことが、今後の電力事情対策に求められる「危機
管理能力」ではないでしょうか。

省エネ支援や発電機の共同利用を含むESCO事業は「中国電力タスクフォー
ス」の理念に合致した事業であると思います。

「官民一体となった組織力が、今こそ必要とされる事態ではないか」と、感じ
ております。

                        = この稿おわり =
┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┃┃ この記事にお便りを頂きました。
┗━┛
┌──────────「たろおじさん」

平野様、電力問題について、現地に行っての調査結果を初めて見ました。
深謝します。やっぱり、かなり問題があるようですね。

そうなんですよね。電気は足りないからといって、自家発電すりゃいいやって
訳にはいかないシロモンなんです。全く100%自家発ならば、出来ないこと
もないでしょうが、電気の一部を自家発電で補充しようということになると、
電気の特徴がモロに邪魔するんです。
ーー自家発電を起動させるにも、通常の電力が必要です。

電気の特徴・・・それは、保存が効かない・・電線でつながってるので周波数
と電圧が狂うと供給側をも巻き込んで系統全体が大変なことになる。立ち上げ
や立ち下げなどの大変動も、数秒以内に完全マッチングさせないといけない。
周波数波形なんかは、常時完全に同期してないといけないはず。

だから、単純に足し算で足りないから、ちょっと不足分を作ればいいんじゃな
いの・・・とは、ならないんですよ。

知人が自家発電を導入したのですが、その関係で大変苦労していました。
日本でさえ、普及はしてきましたが技術上はいろいろな問題があるようです。
自分のとこだけじゃ済みませんから。

上の人と庶民が知らないだけで、技術担当の人はそれなりに苦労しているはず
です。

└──────────
 
┌──────────「平野信幸さんから」

嘗て中国では電力不足は日常的で、電力関係機関は「電虎」と呼ばれ、近寄る
と(=異議を申し立てると)怪我をするといわれていたようです。

その権威が97年頃から電力不足解消で低下し、それが昨年の電力不足で復権
した為に、容易に市場の要望には応じて頂けない状況になっているようです。

日本では6千ヶ所以上の事業所で自家発電が導入されており、ご指摘の電力網
との同調は全く問題ありませんが、中国の設備では技術的な問題があるのかも
しれません。

概に中国進出をしている企業は、この夏の電力危機対策が必須だと思いますが
昨今の燃料不足もあり、問題山積です。

└──────────
┌──────────「ゆあささん」男性@六十代@神奈川 2004/12/06

―― 「中国レポート:中国電力事情」を興味深く読みました。

民生分野も同じです。

今年の夏まで約2年間、杭州近郊の高級中学で教師をしておりましたが、昨年
夏頃から、ウィークデーは停電が頻発し、冬には朝8時頃から夜9時頃まで、
昼と夕方に各1時間ほど通電するだけで連日停電し、暖房も動かず、暗いやら
寒いやらで生活環境は最悪でした。

日本の一般紙は、今夏の電力不足は猛暑のためとか、中国当局のコメントを鵜
呑みにしておりましたが、特派員は何をしているのか?ーー勉強不足ですね。

└──────────
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
↓
 ***********************************
   上海平野(瑞穂)磁気有限公司
       平野 信幸
  mail: shhirano2001@yahoo.co.jp
   HP  : http://www.shmagtec.net/
 ************************************

――「中国レポート」に関する、ご意見・ご感想、そして異論・反論をお寄せ
   下さい。
メールアドレス:shhirano@mbb.spacetown.ne.jp shhirano2001@yahoo.co.jp

ウェブに記載されております中国レポートは、無断転載・コピー・無断借用、
自由です。(「成功ノウハウ」「ザ・レポート」を除く)

ご利用に関し、データー・人物・歴史・時代検証等につきましては、
ご自身で調査・判断・責任をお持ち下さい。

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。 
寄稿転載記事集の目次に戻ります

みなさまからのご寄稿をお待ちしています!!
詳しくはこちらを覗いて下さいね〜。







SEO お金 無料レンタルサーバー ブログ SEO