中国レポート ―――――――――― by 平野信幸さん
☆ 2003年勝手に中国10大ニュース ―――――― 2004/01/19

―― 1.中国電力事情
 
03年夏の猛暑によって電力供給不足が顕在化し、各地で計画停電が実施され
る。停電の実施状況は各地域のよって大きな格差が発生した。この状況はこの
冬にも問題視されており、過去数年間の著しい経済発展と市民生活の向上に、
電力供給が間に合わない状況となっている。

電力事情の改善は、2010年頃まで継続することも考えられ、中国進出の企
業においては自家発電等のエネルギー対策も必須な状況である。

―― 2.人民元切り上げ圧力

03年初頭より、デフレ輸出の元凶として「人民元の切り上げ圧力」が、アメ
リカ・日本を中心に政府高官の発言が相次ぎ、6〜9月には世界的な関心事と
なった。日本及びアメリカは、「通貨の価値を市場に委ねるべき」であり、国
が為替管理(介入)を行って「その価値を固定化すべきではない」と主張した。

これに対して中国政府は一貫して、「人民元切り上げ」の実施を否定し、為替
政策の独自性を守り続けた。12月末には、当局上層部から「人民元の為替メ
カニズムを改善と限定的な人民元切り上げを示唆する」異例の発言があった。

人民元の為替政策は当面現状維持であろうが「将来の切上げ」も視野に入った
ものと思われる。

▽ 日本の動き ▽

6〜9月末まで盛んに報道されたこのニュースは、日本(政府・メディア)から
の発信は9月下旬をもって終息した感がある。
それを裏付けるように9月30日、日本政府は円高対策として1兆円以上の資
金を投入して「ドル買・円売り」の為替介入を行った。

「人民元切り上げ圧力」を行った6〜9月間は、殆ど為替の介入をしなかった
が、2003年には通年で約20兆円(9月末から12月までに12兆円)もの
資金を投入して「円売り」の為替介入を行った。

この金額は過去最高だった99年(7.6兆円)の2.6倍にもなり、過去にも
例のない巨額な資金投入である。

巨額な資金を投入しても為替介入をしなければ、円高は更に加速していたとも
考えられるが(02年12月125円、03年12月末106円)、別の視点か
ら観れば、中国の為替政策を批判した(アメリカの政策に同調した)為に、為替
介入が遅れ(為替対策を見透かされ)、外国のヘッジファンドの餌食となって、
今回の円高を招いたとも言える。

―― 3.輸出還付税切り下げ

中国政府は「人民元切り上げ圧力」を和らげるために、付加価値税(17%、
日本の消費税に相当)の還付を輸出品目によって切り下げる政策を04年1月
より実施することを決定した。

この法律によって輸出品の価格は17〜3%程度の上昇が見込まれ、その割合
だけの「人民元切り上げ」と同じ効果を持つことになる。

―― 4.強制製品認証制度(CCC)の施行

中国ではWTO加盟に伴い、強制製品認証制度(CCC)を制定した。

本制度は、これまでのCCIBマーク(中国商品検験局が輸入時に製品安全に
係わる検査として実施していたもの)とCCIEマーク(長城マーク:質検局
が製品販売時に検査を実施していたもの)を統一し、

CCCマーク(China Compulsory Certification)として運用するも。

本制度は2002年5月1日から実施する予定であったが、SARSの発生に
よって混乱を避けるために8月に延期された。

―― 5.有人宇宙飛行成功

03年10月15日、有人宇宙飛行船「神舟5号」の打ち上げに成功、翌16
日には無事帰還を果たした。有人宇宙飛行は、アメリカ、ロシアに次いで世界
で3ヶ国目になる。

「神舟5号」計画が成功したことで、中国の航空技術は新たな展開が可能とな
り、今後は経済的支援が保証され、アポロ計画によって米国の航空技術産業に
与えた影響の大きさと同様に、中国の各方面に新たな技術的発展と経済効果が
期待できるであろう。

また有人飛行の成功は、世界市場における「メイドインチャイナ」の存在感を
知らしめた。

―― 6.「SARS」の発生

03年4月に、香港における集合住宅での感染が報道されたのが発端となった
「SARS騒動」は、サービス産業を中心として大きな経済損失(180億ド
ル、DGP1.3%)を与えた。

―― 7.携帯電話普及世界一となる

03年10月現在で、中国の携帯電話契約数は2億5千万件を突破、100人
当たり19.5台の計算となった。(都市部では100人当たり40台)

03年には日本の携帯電話市場に匹敵する6300台の市場が創出され、04
年も5000万台以上の増加が見込まれている。これは全世界市場の約60%
にもなる規模である。

―― 8.外資導入世界一となる

<今年の契約ベース外資導入額1千億ドル突破>
03年1〜11月に設立を認可された外資系企業は36,616社となり、前
年同期に比べ19.3%増加した。
外資導入額は
契約ベースで1005億200万ドル、
実行ベースで471億5400万ドル。

今年11月末までに設立を認可された外資系企業は累計460,812社。
累計外資導入額は
契約ベースで 9285億6200万ドル、
実行ベースでは4951億2000万ドルに達した。 

―― 9.年間貿易額8,000億ドルを突破
 
<1〜10月期輸出入総額 昨年度総額を上回る>

03年1〜10月期の中国輸出入総額は6823億3000万ドル(前年同期
比36.4%増)で、輸出・輸入とも昨年の通年実績を突破した。

輸出額は3486億ドル(前年同期比32.8%増)
輸入額は3337億3千万ドル(同40.4%増)
貿易黒字は148億7千万ドル。

通年で8,000億ドルを突破し、世界第4位の貿易国になった。
(外貨準備高、約4,000億ドル)

―― 10.自動車市場400万台を越える(鉄鋼生産世界一となる)

<自動車生産台数400万台を越える>

今年1〜11月における自動車生産台数は、400万台で前年同期比35%増
となった。このうち乗用車は同64%増の180万台となった。
(トラック13万台、バス107万台)

販売台数が30万台を超えた自動車メーカー5社は、第一汽車集団、上海汽車
集団、東風汽車集団、長安汽車集団、北京汽車集団。
これら5社の累計販売台数は189万台となり、全体の48%に達している。

中国自動車業界は成長軌道に乗っており、来年の生産台数は500万台を突破
し、2010年には1000万台に達して日本と同程度の市場規模になると予
測されている。

<1〜11月度鋼鉄生産量 2億トン突破>

鉄鋼生産量は1〜11月度累計で2億トンを超え、年度末を待たずに年間生産
量の世界新記録を達成した。

最新統計によると、今年の11月までに中国の原油輸入量は8187万トンに
達し、史上最高を記録した。また、来年の原油輸入量は9000万トンに達す
る見込みで、日本を抜いて世界2位の原油輸入国になると思われる。

―――― 04年に持ち越された課題

1.電力不足とインフラの整備
2.北京−上海高速鉄道計画
3.中国−ロシア原油パイプライン構想
4.人民元の切り上げ
5.金融制度改革

―――― 雑感

2003年の中国経済は「SARSの発生」「電力不足」の問題にも関わらず
8.5%の経済成長を遂げた。海外からの投資の実行は、通年で500億ドル
を越え、この勢いは04年以降も継続し、今後数年間、中国の経済発展・成長
は疑いの余地はない。

しかし、急激な経済発展にはその歪も生まれており、貿易相手国からの「人民
元切り上げ圧力」と「電力事情の改善」は、今後の中国経済にとって大きな課
題である。

特に「電力事情の改善」は、既得権益の復権によって柔軟な対応が阻害されて
いる感がある。中国では1990年代中頃まで慢性的な電力不足が続き、電力
供給関連の団体(個人)は強大な権力(権益)を握っていた。

その権力が電力不足の解消によってこの数年間低下してきた状況があり、昨年
からの電力不足によってそれが復活した。一度失ったものを取り戻した現状に
おいて、再び失う様な状況を作ることに大きな抵抗をしているとも思えるよう
な事例もある。

04年夏の電力不足は、華東地区の上海、江蘇省、浙江省のみでも、1千万Kw
と予測されている。この改善には自家発電の導入以外には、短期的に解決でき
る方法はないと思われる。

しかし企業の自家発電の導入には、新たな制度と電力供給関係部署の理解・協
力が必須であり、また導入に際してその資金が大きな問題である。
中国では企業の設備投資は、自己資本の範囲内でのみ可能で、概に進出してい
る企業においては、新たに資本増資をしなければ自家発電のような高額な設備
の導入が出来ない。

「SARS騒動」における対策で採ったような「敏速で柔軟な政策の制定・施
行」そしてその実行が、今後の中国経済の継続発展に「大きな鍵となる」ので
はないだろうか。

                        = この稿おわり =
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       平野 信幸
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