謝謝と言われる女 ――――――――――─ by しえらさん
☆ 2004・ペテンな正月 ―――――――――――― 2004/01/05
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│皆さん始めまして。「しえら」と申します。
│
│今回は江口朋行さんがお正月のためお休みですので、私が代わりに書かせて
│いただきます。
│
│私「しえら」もメルマガを出してますのでよろしくお願いします。
│----詳しくは本文下に----
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クリスマス、年越し、元旦。
日本では一年で最も忙しく、楽しく、心浮かれる日々。

しかし私のように、その辺の枯れ枝に無理やり電球を引っ掛けたツリーの前を
通り、大晦日も朝8時から出勤しなくてはならない人間が心浮かれるためには
なんとか自分で自分を盛り上げる必要がある。

特別な気分を無理やり出すため、何か普段はしないことをしようと思い、今回
私はクリスマス&年越し&お正月イベントとして、メガネを新しく新調するこ
とに決めた。

さっそく市内で一番の繁華街にある一軒のメガネ店に入った。さすが有名店で
ある。わりと気に入ったフレームを見つけることができ、気分よく視力検査の
ための検査室に進んだ。

もちろん検査室には、眼科医が待機している。

「アナタ、ニホンジン?」

その男は小太りで目がグリグリとしていて、やたら薄笑いを浮かべながら怪し
い日本語を話してくる。おそらく誰かに「ペテン師を演じて下さい」と言った
ら、このような感じになるだろうと思わせる男だった。

「ジャ、ソコ座テ。ハイ、アノネ、視力測リマス。」

今考えれば、この時点で私は店を換えればよかったのだ。

「ハイ、コレ。コレデネ、ハイ、マズ右目ネ。前ヲヨク見テ。」

私は、例のレンズ入れ替え可能なガリ勉メガネのような物をかけさせられた。

「ハイ、ジャ右目ネ、ドウ? 見エル? 一番上ノ段ハ、ドウ?」
「うーん・・・、少しぼやけます。」

「ジャ、(レンズを入れ替えて)コレハ? ドウ?」
「あ、さっきより見えます。」

「ハイ、ハイ、イイネ。(何か書き留めて)ジャネ、次コレ左ネ。ヨク見テ。」
「はい。」

「コレハ、ドウ? 一番上ノ段ハ?」
「あ、あんまり見えないかな・・・。」

「エ? エッ?? 見エナイ? 見エナイ?? ソンナ事無イデショ!!?
 モットヨク見テ!」

ずいぶん押しの強い眼科医である。だがよく見ても見えないものは見えない。

「ジャァ、コレト(レンズを換えて)コレ、ドチハキリ見エル?」
「右。」

「ジャァ、コレハ?(またレンズを換えて)両方同ジ、ハキリ見エル??」
「いや、今度は左の方がよく見えます。」

「エ? エェ!?? 左?? 左ハキリ見エル?? ソンナ事ハ無イデショ!?」

・・・いや、そんな事はある。

「ジャ、コレハ?」
「うーん、やっぱりこうすると左の方がはっきり見えますよ。」

「・・・フゥ。ソレハ困リマシタネェ・・・。」

ため息をつかれても私だって困る。困ってないで何とかして欲しい。

「ジャァネ、今度ハ、コノ線見テ。
(放射状に線が出ている図を見せて)ドノ線、一番濃ク見エル?」
「うーん・・・、大体同じかなぁ・・・。」

「同ジジャナイデショ??モットヨク見テ。」
「え?だって・・・。じゃぁ、強いて言えばこの、この角度かなぁ・・・。」

「ドレ? ドノ角度??」
「うーん、でも・・・。やっぱり大体同じ濃さですよ。」

「エ? エ? エ? 違ウヨ! 違ウデショ!? モットヨク見テ!!??」
「え、でも・・・。」

「モット!! モットヨク見テッッ!!!???」
「あ、じゃ、じゅ、10番が少し・・・。」

「ハイ、10番ネ。」

私は今までに何度もメガネを作ったことがあるが、こんなに乱視を強要された
のは生まれて始めてである。私が乱視だと、何か彼にとっていいことでもある
のだろうか。

その後彼はおもむろに自分が今書いたメモと、私が今まで使っていたメガネの
度数を見比べながら言った。

「アノネ、コレ、アナタノ眼鏡ネ、ドコデ作タノ? 」
「中国です。」

「イツ? 作タバカリ?」
「いえ、2年前くらいですけど。」

「ハハハ。アノネ、コレ違ウヨ。間違テル。アナタ、良クナイトコデ作タネ」

いきなりショッキングなことを言う男である。それでは私がこの2年間見てき
た世界は、一体何だったというのだ。

「アノネ、アナタノ乱視コウジャナイネ。コウ斜メデショ。デモ前ノ眼鏡、コ
 ウ水平ネ。間違テマス。」
「でもさっきの検査は、あまり正確とは・・・。」

「コレ、ニホンゴデ、シャランシ(斜乱視)ト言イマス。」

ーー人の話を、全く聞いていない。

「でも、この斜乱視のレンズ、グラグラしてあまり見えないんですけど。」
「エ? 見エナイ?? ウーン・・・。ワカリマシタ。ジャァ、コノ乱視ネ、
 全部取ッチャイマショウ。」

「えっ!?」

乱視だということがわかっているのに乱視用ではない眼鏡を新調して、果たし
て意味があるのだろうか??

「いや、あの、これ、もう少しなんとかならないんですか?」
「ダテ、アナタグラグラスルテ言タデショ?ダカラ乱視ナイ眼鏡作リマス。」

もはや乱視入りのグラグラ眼鏡か、または全く乱視無しの眼鏡を作るかの二択
となってしまった。こんな時、普通だったらまず専門家である眼科医に相談し
たいところだが、今、私を最も不安にさせているのが、この眼科医である。

私は困った。乱視も無いよりある方がいいのか。やはり眼鏡も大は小を兼ねる
のか??

「じゃぁ・・・、乱視有りで。」

中国の眼鏡は発注ではなくその場で作るので、1時間もあればできる。支払を
済ませ、前のケンタッキーでコーヒーを飲み、きっかり1時間後に受け取りに
行き、、、、そして、かけてみた。

「あっ・・・。」

結果、私の目の前にはグラグラとした世界が広がるのみであった。上下、左右
を見回すと、魚眼レンズのようでなんだか自分がお魚になった気分である。

「すいません、やっぱりグラグラして見えないんで、レンズ換えてもらえませ
 んか?」

「見エナイ? 見エナイ?! ハハハ。見エマスヨ。見エマス。アノネ、カケテ
 レバ直リマス。普通1ヶ月クライデ見エマス。デモネ、アナタズット見エナ
 イ見エナイト思イマス、ソシタラズット見エナイヨ。ハハハ。」

「それは・・・、つまりこの眼鏡が見えるかどうかは私の心がけ次第だという
 ことですか?」

「ソウデス。」(断言)

私のクリスマス。私の年越し。私のお正月・・・。

そして私には、彼が「間違っている」と主張する今までのメガネと、かけると
魚の気分が味わえる「グラグラ眼鏡」の2つのみが残されたのであった。

                           = おわり =
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┃┃ この記事にお便りを頂きました。
┗━┛
┌──────────「恵美さん」

初めまして、
最近このメルマガを読み出した者ですが、しえらさんの文章を見て思わず笑っ
てしまいました。

私も最近中国で眼鏡を作ったのですが、その時ちゃんと中国人の友達が付いて
きてくれたかいがあり、自分に合った物を購入することができました。

今年のクリスマスは、期末テスト準備で、お正月は期末テストで潰されてしま
いましたが、中国の春節は、餃子を食べようと計画している恵美でした。

それではこれからも、メルマガがんばってください!

└──────────
 
┌──────────「しえらさんから」

はじめまして。
お便りありがとうございます。

恵美さんはいい眼鏡が買えたとか。羨ましい限りです。
私はフレームだけ大事に日本に持って帰って、レンズだけ作り直そうかな
と思っています。

中国の美容院でパーマをかけた後、
日本の美容院に行くと必ず笑われるんですけど、
今回も日本の眼鏡屋さんに笑われること覚悟です。

それではこれからもよろしくお願いします。

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