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┃ 時事事象私見: ――――――――――――― by gosakuさん
☆ 靖国神社参拝と日中摩擦を抉る(後編) ―――――― 2005/02/18

もともと両国首脳の相互往来を止めてしまったのは、江沢民前国家主席です。
しかも、後のことも考えずにかなり感情的にやってしまった、対話を拒絶して
しまったところに江沢民氏のカードの切り間違えがあったのです。胡錦濤氏に
してみれば、靖国問題があっても、小泉首相に中国に来てもらって改めて抗議
する、というほうがずっと有効に靖国ガードが使えたと思っているはずです。

けれど往来をやめてしまったら、小泉首相が靖国参拝を中止するか、A級戦犯
を分祀する、といった極端な方法でなければ解決できないことになってしまい
ました。
では、胡錦濤氏が何らかの譲歩をして軌道修正を計れるかといえば、それも難
しいでしょう。なぜなら胡錦濤体制はまだそれほど基盤が強くなくて、中国の
最高決定機関である中央政治局常務委員会でも胡錦濤のグループはまだ少数派
です。
対日問題を材料に政敵を批判するのは、過去の権力闘争の常套手段ですから、
胡錦濤氏も簡単に弱みを見せるわけにはいかない。だから、水面下でシグナル
を出し、日本側に何とか譲歩してほしい、というのが本音でしょう。

江沢民氏の場合には「靖国問題があるから日本は謝れ!」という非常に感情的
な主張をするばかりでそこで対話はストップしてしまいました。それに対し、
胡錦濤政権になってからは、「靖国問題が解決すれば、他の問題も解決する」
というメッセージに変わってきています。

つまり、江沢民氏は無条件降伏を求め、胡錦濤氏は取引を持ちかけている、と
解釈できます。日中の関係を修復、発展させたいという意志を持つ胡錦濤政権
は日本にとってはまたとない相手だと思います。それが対日問題で追い詰めら
れる局面になれば、日本も何らかのボールを投げる必要があるでしょう。

しかし、そのボールが靖国でなく、例によって、ビジネスを優先して、納得も
していないのに譲歩したり、取り敢えずの謝罪を繰り返す従来の手法では将来
に大きな禍根を残すだけでしょう。

外交には、取引できる問題と取引してはならない問題があります。国のアイデ
ンティティや主権に関わる問題は、原則原理を貫き、絶対に取引などしてはな
りません。それが一番大事なことです。
戦死者の追悼というのは、国家としてのあり方の根本原則に関わる問題です。
そこを譲ってしまったら、国家としての日本はどこかで壊滅的に崩れてしまい
ます。

しかし、もうひとつの見方としては、靖国については一歩も譲らない、という
こともひとつの国益でしょうが、何事も経済が優先する現代で、暗礁に乗り上
げている問題、例えば日本新幹線方式の採用問題などを解決することも、やは
り国益だという声も経済界から上がっています。

----この二つの折り合いが難しいですね。

中国経済が急速に台頭するなか、周辺アジア諸国はみな「中華秩序の再来」め
いた重圧を感じています。そこで民族としてのアイデンティティをどのように
保っていくかは、非常に重要な課題です。日本としては、繁栄を維持して次の
世代に引き渡すことも現世代の責任であり、そのためには中国から顔を反らし
ているわけにはいかない、という声もあります。

――「反日」運動の正体は「反共産党」運動である!

いま、中国国民にとって最大の不満の対象は、外資と結託して勝ち組にのし上
がった一部の共産党幹部です。彼らに対する反発をストレートには表せないの
で、形を変えて噴出しているのです。中国社会もようやく「世論」というもの
を表現できるようになり、しかも、政府をも動かせると知った“興奮”です。

いま中国で最も表現しやすい世論はなにかといえば、それは「反日」です。
「反日」でさえあれば、どんなに過激なことを言っても大丈夫だからです。
さらに、
日本人からすれば意外かもしれませんが、反日活動家にいわせると「日本は怖
い」のです。世界第二位の経済力を持ち、通常兵力も世界第二位、原爆だって
すぐ作れるだろう、という国が隣にあるーー彼らは本気で日本を怖がっている
のです。

政治家や外交官の「反日」発言は、実は日本にではなく、中国国内に向けて発
せられたもので、日本に対して弱腰ではないというアピールなのです。今中国
では、「親日」というレッテルを貼られると非常に大きなダメージですから、
「親日」といわれないように、必死で「反日」パフォーマンスをしなければな
らないのです。

中国政府は、政権の求心力を高めるために「反日」という万能薬を多用し過ぎ
た結果、政府の思惑を超えた暴走が起こったり、対日外交の選択肢を極端に狭
めたりといった“副作用”に悩まされているのも事実です。

―― では日本は、

中国という巨大な隣人と、どのように付き合っていけばよいのでしょうか?

一つの例として、これまで中国に進出した企業が失敗するのは、中国に行って
も、日本国内にいるのと全く同じやり方を通そうとするからです。ムラ社会の
ままなんです。董事長(会長)も総経理(社長)も日本人。
ーー他の国で、こんな馬鹿なことをやっているところはありません。ドンドン
現地スタップを使って出世させています。

日本人が中国と本気で付き合おうと思ったら、むしろ中華世界の一員になるぐ
らいの覚悟が必要でしょう。遣唐使のように、もう日本には帰らない、墓も向
こうに作る、という覚悟を持って臨むというのもひとつの道です。

しかし一方、自分は中国人にはとてもなれない、なりたくないというのであれ
ば、日本人は、もっと大きなユニバーサリズムの立場に立つ事でしょう。中国
とは常に適切な距離を保ち、東南アジアや欧米、インドなどをも視野に入れな
がら付き合っていく。言い換えれば、日本人が中国に呑み込まれないためにも
常にグローバル・スタンダードで付き合うということです。

―― 中国の若い友人と話していると、

彼らにとって、この前の日本との戦争といえば、日本と中国との間の戦争しか
意識にないようです。僕が、対中戦争と同時にアメリカとも戦ったせいで日本
は存亡の淵に立ったと説明すると、意外な話を聞いたような顔をします。

僕は、もっと生身の日本を見てもらう努力をすべきだと思います。ささやかな
ことですが、観光客を増やす――といったことでも日本を知ってもらう効果は
意外に大きいのではないでしょうか。中国の反日感情をけしからんと怒ってい
てもはじまりません。むしろ必要なのは、中国の「反日」の実態・背景につい
ての徹底的な分析と研究です。

99年にNATO軍がユーゴスラビアの中国大使館を空爆したとき、反米デモ
が起きました。当初は中国当局がやらせたのですが、やがて学生が騒ぎ出し、
政府のコントロールを超え、抑え切れなくなりました。そのときアメリカは、
ハーバード大学に中国専門家、学者たちを集めて、どうしてこういう反応が起
きたのかという調査・研究を行ったのです。

日本には、こうした機関や取り組みは残念ながら皆無といっていいでしょう。

これまで、日本で中国との交渉を担当してきたのは誰かといえば、自民党経世
会の政治家、外務省のチャイナスクール、そして財界などの日中友好屋さんた
ちです。ーーこれは、外交でもなければ、戦略などもありませんでした。

あるのは、ゼネコンに公共事業を回すのと同じ利権だけです。我々は、彼らに
日中関係をいわば「丸投げ」してきた。ーーそこに間違いがあったのです。

―― しかし、長い目では決して悲観していません。

ようやく日本にも、中国に対して原理原則で当たっていこう、という世代が現
れてきています。

いま、靖国問題や東シナ海問題で日中に摩擦が起きています。これはある意味
でいいことだと思います。これまで譲れない対立があっても、無原則に対応し
てズルズルと譲ってきた。そこをようやくキチンと対応するチャンスが来てい
るのですから、目の前の摩擦に過剰反応して、これまでと同じことを繰り返し
てはいけないと思います。

小泉首相も、日中関係の見取り図について、もっとキチンとしたメッセージを
出すべきでしょう。
ーー「中国は脅威ではない」、といった最初の政治家なのですから。

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