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┃ 時事事象私見: ――――――――――――― by gosakuさん
☆ 靖国神社参拝と日中摩擦を抉る(前編) ―――――― 2005/02/11

中国首脳陣は折にふれ、中国を訪問する日本の政治家に、靖国参拝問題の解決
を迫っています。
小泉首相が靖国参拝を止めれば、全ての問題は解決すると言っていますが..。

中国側は、日本の首相が靖国神社に参拝することは「過去の侵略戦争を美化し
軍国主義を復活させる態度」の表れだと決めつけています。第二次世界大戦の
戦争責任を問われた日本のA級戦犯が祀られている靖国神社への首相の参拝は
戦争行為自体の礼賛だと断じています。
いくら小泉首相が、靖国参拝の理由について「戦争に反対し、平和を祈って」
と言明しても全く無視されています。

そして中国側は、首相の靖国参拝が日本の歴史認識の誤まりを象徴するとして
非難し、「近隣諸国の国民感情を無視し、近隣国との政治、友好関係に影響を
与えている」と述べています。
が、執拗に非難を続けているのは中国と韓国・北朝鮮だけです。

韓国とは、歴史問題は歴史問題として議論はするけれど首脳の往来はチャント
続けています。そして 一部少数の人以外は靖国問題には言及しておりません
し、その他のアジア諸国からは抗議の声などまったく挙がっておりません。

一昨年10月の、バンコクでの日中首脳会談で、胡主席は「歴史を鑑み、戦争
被害国を傷つけないことが重要である」と述べ、このときは靖国参拝を名指し
て非難することはありませんでした。その姿勢が一転した背景には、胡主席が
国家、共産党に軍も加えた三権を掌握し、外交上で容易に譲歩できない立場に
なった事情があるのでしょう。

特に、抗日戦争の苦難とその勝利という歴史は、新中国建国の基礎にも関わる
だけに、「歴史問題で指導者が弱腰に映れば、国内の求心力を一気に失う」こ
とにもなるからという中国の国内事情によるものです。(中国外交筋)

靖国問題には、日中間に根本的な大きなすれ違いがあります。

日本側は、靖国参拝は死生観とか宗教観の問題だと主張しています。そういう
問題であるのならば中国側も文句をつける筋合いではありません。では、何故
中国が靖国問題は外交問題だ、というのか。それは靖国問題が中国の建国神話
に関わるからです。

中国共産党は、前次大戦で日本と戦い、国を守ったということで正統性を獲得
した政権です。その中国から見ると、対日終戦は1945年8月15日ではな
く、日中国交正常化が成立した1972年9月29日ということになります。

戦争責任については東京裁判で決着しているとし、賠償については周恩来が、
悪いのは日本の一部軍国主義者であって、日本人民も等しく被害者である、と
して賠償請求をしなかった。日本人民が共通の被害者であったとすれば、その
被害者の代表である日本の総理が、なぜ、東京裁判のA級戦犯をお参りするの
か。ーーというのが中国側の主張です。

しかし、この主張には重大な疑義があります。

ーー第一に、

日中国交正常化に、戦争責任に関する取り決めは一切ありませんでした。

ーー第二は、

東京裁判についての解釈です。サンフランシスコ講和条約をどう読んでも、A
級戦犯がすべての戦争責任を負う、などという解釈はでてきません。日本が受
け入れたのは、A級戦犯が処刑されたことについて賠償を求めない、また海外
に収監されている戦犯を日本が連れ戻したりする国際的請求権は主張しない、
ということに過ぎません。
それに、世界史上、いかなる講和条約でも、特定の歴史観の受け入れを規定す
るものなど存在しません。

「ではあの裁判が、戦争責任を追及したものでないのなら、では戦争責任はど
うなるのでしょうか?」
それは、賠償の有無や国際条約の中身によって、戦争責任がどちらにあったか
が決まります。誰が戦争を起こしたとか、その正義の是非といった歴史観を定
める条約はありません。

ーー第三に、

戦犯の名誉回復とそれに基づく合祀は、国内的にも国際的にも、正当なプロセ
スを経て行われたものです。日本国民の合意としては、昭和28年の国会で、
戦犯の名誉回復が決議されています。その上で、戦犯の遺族に年金を支払うこ
とが可能になりました。これは、国会で全会一致で採択されています。
A級戦犯の合祀も、基本的にはこの国会決議の延長上にあります。

ーー第四に、

A級戦犯が合祀さているのが問題だ、という論理は、最近になって中国が持ち
出してきた言い分に過ぎません。現に、78年にA級戦犯が合祀されたあとも
大平正芳、鈴木善幸と、総理の靖国公式参拝は行われてきたのに、中国からは
外交問題だという声は全く挙がりませんでした。
ーー中国が靖国参拝を問題にするのは、中曽根総理のときです。

中国からすると、遣唐使の昔から“まつろわぬ国”日本への危機感が底流とし
てあるところに、経済的には戦前以上の大国となった日本に中曽根総理が登場
し、「戦後政治の総決算」を唱える。そこに85年8月15日の終戦記念日の
公式参拝がリンクしたことに非常に強い警戒と拒否反応を起こしました。

加えてそこに、中国国内での権力闘争が絡んだので「靖国参拝」を外交問題と
して大々的にクローズアップしました。中曽根首相は、当時の胡燿邦党総書記
を助けるため、結局、翌86年の参拝を止めました。
ーーそのあとに、私的参拝、公式参拝という言い方が出てきます。

では、中曽根首相がやったように小泉首相も参拝を止めたら、それで問題は全
て解決するでしょうか?ーーいや、それはあり得ないでしょう。むしろ問題を
先送りし、潜在する矛盾をかえってこじらせるだけでしょう。さらに心配なの
は、中国が、靖国に替わる新たな歴史問題を持ち出してくることです。

中国のこれまでの主張から考えて、仮にA級戦犯を分祀しても----一旦祀った
ものを分けることがどうなのかは別問題として----次は、B級戦犯、C級戦犯
を祀っているのはけしからん、その先は台湾問題、そして日米安保を強化する
な、という話がきっと出てくるはずです。

そうなれば、日本でも対中強硬論が突出してしまう可能性が危惧されます。
中国に「反日」があるように、日本にも「嫌中」という感情があります。
ーーこの扱いは大変難しいものです。

更に、靖国問題だけに目を奪われることなく、それよりもはるかに難しい問題
が日本と中国の間にはあることを忘れてはなりません。

―― 東シナ海の中間線問題です。

東シナ海における排他的経済水域(資源開発などの権利が認められている)をめ
ぐり、日本は両国の海岸線から等距離地点を結んだ中間線を境界線として主張
しているのに対し、中国は大陸棚が続いているという理由で、沖縄トラフトま
でを境界線だと主張しています。尖閣諸島も中国側に入ってしまいます。

これは、領土と主権に関わるだけに、靖国よりもはるかに難しい妥協の余地の
ない問題です。つい先日の日中実務者協議も物別れに終わりました。
靖国の次にターゲットとなるのは、尖閣諸島に間違いありません。

96年に、香港から釣魚島に上陸しようとした事件がありました。当時の香港
の報道はデタラメで、海上保安庁の巡視船が来ただけなのに、「日本の軍艦が
軍事力で排除した」と伝え、あの時、一人が勢いあまって海に飛び込み事故死
してしまったのですが、いま、中国で尖閣諸島をめぐる活動をしている人たち
の間では、国に殉じた英雄になってしまっています。

日本が十九世紀から領有権を宣言し、現在も実効支配している海域を、中国は
1970年代になって、突如、自国領だと主張し始めたわけですが、中国側に
は意外にも「日本が中国領を掠め盗ろうとしている」という強い被害者意識が
あります。近代的な国際法よりも「島を最初に発見したり、名前を付けたのは
中国人」といった、歴史が前面にでてくるのです。

中国は「政冷経熱」といって、政治が冷たいのは靖国問題のせいだ、と主張し
ていますが、しかし、日本から見れば最大の懸念は、中国が中間線を一切認め
ず、沖縄のすぐ沖合いまで大陸棚はすべて中国のものだという、非常に強引な
主張を繰り返し、実際に押し出してきていことです。

―― 話を戻して、

A級戦犯靖国神社合祀の背景を詳しく述べますと!

靖国参拝を批判する中国側の言い分の第一として、「A級戦犯を参拝するのは
侵略戦争そのものを肯定るものである」というものですが、では「戦争犯罪」
というのは如何なる罪でしょうか?

一般に、戦時国際法や(国内法の)軍事法に違反する行動をとり、軍事裁判によ
る審理の結果有罪と判定せられた事例を指していうことでしょう。その裁判が
国内で実行され、軍事刑法等の国内法に照らして犯罪とされた場合には、その
被告はたしかに国内法の枠内でみても罪人でしょう。
ーー罪人ならば、皇室からの御親拝が掲げられる格式高い神社に、御祭神とし
て祀るわけにはゆかないのが、当然自明の理です。

とこらが、大東亜戦争で発生したいわゆる戦争犯罪人のすべては、交戦相手国
だった連合軍の軍事裁判によって裁かれた人々であり、それは平和条約発効以
前の、つまり、国際法的にはまだ彼我の戦争状態が継続している最中の出来事
です。
┌--------
│編集部注:
│国際法的には、日本と連合国との戦争は、昭和20年8月15日に“戦闘”
│状態は終結しました。しかし昭和27年4月28日のサンフランシスコ講和
│条約の発効までは“戦争”状態であったことになります。
└--------
殊に、刑死したり獄死したりした悲運な人々の場合を考えてみると、彼らはな
お彼我の交戦状態が続いている期間内に於いて、「敵」の手にかかって命を落
としたのです。戦争状態である時に敵の手にかかって命を落とす――「戦死」
まさに戦死なのであって、そうした扱いを受けるのが当たり前ということにな
ります。ーーつまり決して罪人ではありません。

合祀の形を以って御祭神に奉戴[ほうたい]すべき対象です。

昭和27年4月28日に講和条約が発効し日本が国家主権を恢復すると、戦犯
とされていた人々の靖国合祀は速やかに進展していきました。この講和条約に
は、第11条に、極東軍事裁判受刑者の赦免、減刑、釈放等についての約定が
あったからです。

まず昭和28年8月、戦傷病者戦没者遺族援護法という法律の一部改正が実現
しました。その結果、極東軍事裁判被告として刑死、獄死した人々の遺族にも
戦没者遺族年金と弔慰金が支給されることになりました。恩給についても昭和
29年、30年と続いて法改正があり、刑死・獄死した人の遺族に対して公務
扶助料の年額に相当する扶助料が支給されるようになり、また極東軍事裁判に
よる禁錮、懲役の刑を受けた人々に対しても、その拘禁期間を公務在職の期間
に算入するとされるようになりました。

恩給法という法律の第9条には「死刑または無期、若しくは三年を超える懲役
若しくは禁固の刑」に処せられた者は恩給受給権を失う、と規定してあります
が、極東軍事裁判での受刑者がこの規定の適用を受けていないということは、
即ちこの人々を国内法に基ずいて罪人ではないと法的に保証したことになりま
す。

当時、遺族援護法を熱心に推進した中心人物の一人に右派社会党の衆議院議員
であった堤ツルヨ氏がいます。
この人は、衆議院厚生委員会での主張開陳に当たって、殺されてしまった人々
の遺族が「未帰還者留守家族(拘禁刑受刑者の家族がこれにあたります)」に当
たらないため国家の補償を受けられないことの矛盾を突き--しかもその英霊は
靖国神社の中にさえも入れてもらえない--という遺族たちの嘆きを堂々と訴え
ました。

かくも簡潔な言葉ながら、これはおそらくは当時の日本人一般が、靖国神社と
いう存在に向けていた感情を最も素朴に且つ正直に表現したもの、といえるで
しょう。因みに堤議員の活躍が大きく貢献して遺族援護法が改正され、「旧敵
国の軍事裁判によって有罪と判決された人々を、日本の国内法では罪人と看做
[みな]さない」という、当然ではあるが画期的な判断基準が示される事になっ
た際の法改正議決は、第16特別国会に於いて、自由党、改進党、右派・左派
社会党と、与党野党あげての全会一致の可決だったそうです。

このことは何を意味するか。

現在の日本国は、議会制民主主義の政体を採用しており、且つそれは全国民を
挙げての合意の下にそうなっています。そうである以上、上記の国会決議も、
国民の総意によって支持され、この判断が確定したのだ、ということを認識す
べきです。

いわゆる戦争犯罪人とは、いずれからしても旧敵国からみての呼称であり、--
しかも不公正不当な審理によって生じた冤罪の事例や、単なる復讐心の発露と
しての刑殺という事例が実に多かった--日本政府は、立法府の議決に基づいて
この人々を犯罪人と看做していない、つまり、幕末維新期の殉難者達と同様の
「冤罪羅禍[えんざいらか]=無実の罪をこうむらされる」の事例と考えればよ
いのですから、我々が、一般的な「戦犯」という忌まわしい表現を使うことは
適当ではありません。ーーでは何と呼べばよいのか?

厚生省等の官庁では、この当時、この問題を取り扱うに当たって「刑死」とか
「被処刑者」という表現を避け「法務死」「法務死亡者」とした由です。
事務処理の上ではこれでよいのかも知れませんが、やはり死者に対してなにか
冷淡な表現である点が気にかかります。靖国の英霊は一般的に、その本来のあ
り方に則[そく]して、国事殉難者という概念で理解すべきでしょう。

戦闘での戦死者は普通に戦死者・戦没者と呼ばれていますから、それと区別し
た意味で法務死の人々は「国事殉難者」と呼ぶのが妥当ではないでしょうか。

                  = この稿つづく:次の記事へ =
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