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┃ :中国への熱い思線: ――――――――――― by けんさん                    (けんさんの日中友好コーナー)

☆ 「瀋陽―北京」銀輪旅行記:旅愁 ―――――――― 2004/11/15

―― 2004年9月10日。錦州〜興城。78キロ。晴れ。

錦州は、いまや東北地方沿岸部発展地域を代表する大都会である。
人口は300万人を越える。
胡蘆島はその一部、大型外航船が停泊できる港を持つ。

先にも書いたが、ここに引き揚げ船、高砂丸と興安丸が接岸し、多くの日本人
がここから帰国した。 当時は、一面の高粱畑しか印象にないのだが、いまや
高層ビルが立ち並び、広く整備された道路の脇には高級住宅が立ち並ぶ。道も
建物もみな真新しいのは、最近それもこの5年ぐらいの間に急速に発展したこ
とを物語る。

出発時間が、丁度通勤のラッシュと重なり、錦州市の活力を実感した。

郊外に出ると、葡萄畑が道の両脇にある。農民が道端で売っているのが一斤5
角。一斤は500グラムだから、キロ1元。日本円で15円である。お腹を壊
さないように心配しながら、それでも美味しいからつい食べ過ぎそうになる。

胡蘆島では海水浴場に立ち寄った。瀋陽の人達にとって、海を見ること自体が
憧れでもある。一生海を見ることがない人も少なくないのではないだろうか。

浜辺に、コールタールで真っ黒に塗られた漁船が並べられている。何故かその
横に「密航取締り」の立て看板があるのは世相だろうか。こんな船で、玄界灘
を越えるのは信じられない。

興城は、渤海湾に面する国家重点風景名勝区である。

面積42平方キロ。日本ならさしずめ国立公園というところか。
温泉もある。泉井は12箇所あり、摂氏70度前後の熱湯が毎日1800トン
湧き出ている。10世紀から13世紀にかけて、遼、金の時代に栄えた。

仏教遺跡も多く、中でも有名なのは白塔峪塔。八角十三層高さは43メートル
ある。仏教に関心の深い高坂さんが行きたそうにしたのだが、中国人の皆さん
は違う場所に行ったようだ。私はひたすら体力の温存に努めて、暇さえあれば
寝る。自転車旅行思い出の土地は、観光専門で、日を改めて汽車かバスでゆっ
くり回ることにしよう。

明の時代に寧遠衛城と呼ばれた城郭が、全国重点文物保護単位として保存され
ている。800メートル四方を、青レンガと巨石で囲まれた城郭は、文革で多
くを失った中国では、今、最も昔の面影を残した場所である。昔はこんな景観
が、撫順城を始め到るところで見られた。

宿は興城空軍療養院が5元でとれた。

ここは全ての面で、今回の最高の宿だった。大学のキャンパスを思わせる広い
敷地の、門から200メートルも入った所に、木立に囲まれた三階建ての楼が
宿泊施設。ゆったりとした四人部屋は清潔で、ベッドに蚊帳もついている。

コンセントが複数あって、持参したテーブルタップが不要だったのはここだけ
だった。中国の携帯電話は、電池の寿命が短い。だからしょっちゅう充電する
必要があるのだが、四人一度となると、テーブルタップが必需品である。

自転車旅行は、荷物を如何に減らすかに腐心する。その中にあって、中国のど
でかいテーブルタップは負担だが、やむを得ない。
10キロ弱の私の荷物は下着類が殆ど。パンツ、肌着、靴下が5着ずつ。長袖
衣類一組・薬類・辞書・文房具・地図・資料切抜き・カメラ+付属品・工具・
紐ゴム・パスポート等貴重品・テーブルタップ+携帯電話の充電器・石鹸タオ
ル。――必要最小限しか入れていないのだが、すぐ10キロ近くなる。

ゲンを担いで髭を剃らないことにしたから、剃刀も入れていない。歯磨きをし
ないから、洗面具もない。

食事の時、何の話題からだったか川本さんが、「奥さんは、ものが言える間に
優しい言葉をかけて上げなくてはいけませんよ」と言う。
あまり立ち入って伺ってはいないが、川本さんは前の奥さんを病気で亡くして
いる。最後の6年半は言葉も言えない状態だったそうだ。

自転車を三回パンクさせて、大笑いしている劉さん。
値切り上手で「太貴太太」(注↓)と呼ばれている奚さん。
┌--------
│太貴太太:値切り上手な奥さん。
│太貴は「値段が高い」の意味、値切るときに使う言葉。
│太太は奥さんの意味。
└--------
猿年で、お猿の真似をしてふざける周さん。
歌姫の綽名を持つ、張さん。

しんみりと聞いているが、家家都有難念的経(家にはそれぞれ、読みにくい経
がある。即ち、何処の家にも悩みはある)
「私達も、自転車旅行中は日頃の憂さを晴らしているが、いつもは大変だ」と
口々に言う。

50才から、勤めの休暇を利用して仏教大学に通ったという高坂さんも、道楽
で宗教に関心をもった訳でもあるまい。
「人並みにカネの悩みを持ってみたい」というような顔をして、一見飄々とし
ている福田さんだって、何か悩みはあるはずだ。

私に、悩みはない。食べたいときに食べ、寝たいときに寝る。しかしこの習慣
は好きで出来た習慣ではない。与えられた運命を甘受して、ひとつの健康法と
思っているだけである。
 
久しぶりに静寂を味わう。

これも久しぶりで、潮の香をかいだせいか故郷を思う。

妻はある病で身体が不自由である。しかしなんとか自分でやっている。
介護保険のお陰で、重い家事労働はヘルパーさんがしてくれる。
私が家にいても、できることは、落とした物を拾ってやる・ビンの蓋をあける
・窓の開け閉め・カレンダーの日めくり・・・。

そんなつまらないことでも、俺がいないと不自由しないかと思う。

「心配ないから中国でも何処でもお行き。もう帰らなくていいよ」と送り出し
てくれた妻。ーー旅行中一度だけ老妻の夢をみた。

                        = この稿おわり =
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┃┃ お便りで頂きました感想。
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┌──────────「気分は情報無限さん」

――☆「瀋陽-北京」銀輪旅行記:旅愁2004/11/15を読んで

何だか広大な中国の情景が目に浮かんで来るような文章ですね。

最近、日本の有名観光地でニセモノ温泉(水道水を沸かして温泉のモトを入れ
た)が発覚して問題になっていますが、中国でそんな事件は起きていない事を
祈ります。
しかし、旅先でお家に残してきた奥さんの事を思い出すとはロマンチックです
ねえ〜。

└──────────
 
┌──────────「けんさんから」

いつもご愛読、心から有難うございます。

家に居ると喧嘩ばかりしていますが、外に出ると妙に愛しいものです。
女房も、もう帰らなくていいと憎さを言いますが、帰ると嬉しいようです。

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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。 

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