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┃ :中国への熱い思線: ――――――――――― by けんさん
┃ (けんさんの日中友好コーナー)
☆ センチメンタル漫遊記:その三 旅順の巻 ―――――― 2003/12/31
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┃念┃のため、
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大連駅前の公安詰め所で旅順は開放されたか尋ねたら、まだ開放されていない
と言う。ビックリして「本当ですか?」と更に尋ねたら、貴方達に嘘を言って
なんになるといった表情で「本当ですよ。でも貴方達は、いけないと言われた
ことをしなかったらいいのです」と言う。
なんだ。制限付きだが開放されているのだ。
今日は国慶節連休の一日で家族連れが多い。
「203高地も案内します」と客引きのガイドが寄ってくる。日本とロシアの
激戦地203高地に、中国人はまず関心を示さない。
小池先生はどこから見ても日本人だから、それを知った上での勧誘である。
車も新しいというのでこの一行に加わることにした。
ところがこの20人乗りのマイクロバス、交差点で止まってギアをローに入れ
る度に噛み込み、凄い音を立て、ときにエンストする。
これは無事持つのかなと心配していたら、果たして旅順まで全行程70キロの
20キロ程残した黄泥河トンネルに差し掛かったときだった。
トンネル内は交互通行になっていて、折りしも赤信号で停車。例によってガリ
ガリやっているうちにバッテリーが上がってしまった。
乗客の携帯電話を借りて本社に連絡していたが、元々代車なんかあったらこん
なボロ車を配車するはずがない。運転手君ボンネットを開けて悪戦苦闘するが
どうにもならない。
「これは、押さなくてはどうにもならないね」と、先ほどの携帯電話を持って
いた乗客に言ったら「運転手が何か言うまで待とう」と言う。この人を含め、
乗客は誰も文句を言わない。
一時間もモタモタしただろうか。運転手君申し訳なさそうに、男の人は降りて
押してくれと言う。女子供は降りようとしないから「皆降りて」と私が言って
も、姜さんが「私達は乗っていてもいいでしょう」と不服げな顔をする。
押す人の身にもなってみろというのだ。「駄目、皆降りて」と今度は日本語で
語気鋭く言ったら、一人の子供を除き皆アタフタと降りて来た。
トンネルは全長約150メートル。中腹までは登り、ギアーはニュートラル。
中腹過ぎ、ギアーを入れると同時にブルンと軽快な始動音がした。やれやれ、
第二のトラブルもなんとか解決。もう何が起こっても驚かないぞ。
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┃旅┃順口砲台、弾薬庫、万忠墓と見学したところで昼食。
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私達は皆が昼食をしている間、昼食抜きで203高地に登る。ところが今度こ
そ車が徹底的に壊れてしまった。幸いタクシーが拾えたのでそれで登る。
海抜203メートルのなんの変哲もない丘。
乃木大将が名付けて「爾霊山」=にれいさん)。
この丘の中腹の小さな谷を、日本軍一万の将兵の屍が埋めたのだ。
「もし、この戦争に日本が負けていたら、日本はどうなっていたでしょうね」
と姜さんが問い掛ける。問いの意味は、日本の近代化、軍国化がどうなったか
だが、歴史に「もし」は無い。私は敢えて別の返事をした。
「分かりません。しかし間違いなく言えることは、私も貴女もこの世に生まれ
ていなかったということです」
この戦争の帰趨は、極東の歴史を大きく変えた。
それはまた、この地に生きる全ての庶民の上に、荒波のように襲い掛かり新し
い運命を作った。
―――― その四 再見大連の巻
幾度もの車のトラブルで、予定の時刻は大幅に過ぎ、大連に戻るなり夕食をと
る。小池先生が「彼女達日本語教師としての実地研修の意味で日本料理はどう
だろう」と言う。日本料理は値は張るが大連なら本場物を食べられるはずだ。
私も賛成したのだが、これは彼女達にとって有り難迷惑だったようだ。デンと
丼一杯持ち込んだキムチが日本料理を押しのけるようにテーブルの中央に鎮座
し、一種異様な雰囲気を醸し出す。
彼女達はこれでご飯。味噌汁、茶碗蒸、それに天婦羅の一部には箸をつけるが
刺し身と寿司には眉をひそめる。おでんも駄目。まあ私達だって正直犬料理に
は抵抗があるし、蛙そのままの鍋物となると聞くだけでぞーっとする。
しかし食べる。この娘達に同じことを期待するのは無理だろう。
彼女達は「折角日本語を勉強したのだから日本で働きたい」と言う。それで、
保証人になってくれとは言わないが、なって欲しそうな口振りをする。
保証人は何を保証するのか。
日本の法律を遵守し、風俗習慣を尊重できる人であることを保証するのだ。
刺し身を食べることが風俗習慣の尊重とまでは言わないが、眉をひそめなくて
はいけない程嫌な異国文化の中で暮らさなくてはならないなら、その人にとっ
て不幸である。キムチを持ち込めば解決する、といった問題ではない。
久し振りの日本酒、それに白酒・ビール。最後に、ホテル最上階の展望食堂で
葡萄酒をやったのがいけなかった。
ーーグダグダになって醜態をさらしてしまった。
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┃昨┃夜の酒がまだ残って、疲れも溜まり体調は最低。
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彼女達は益々好調。出発までの寸暇を惜しんで、海産物市場で買い物をすると
いう。私は宿で待たせて貰う。
例によって、発車3分前乗車。いざとなれば高速バスで帰ればいい。もう私も
イライラしないことにした。
列車は各駅停車の鈍行。座席はグリーン寝台のコンパートメント。
皆さんは、これで明日の朝延吉に着く。私は沈陽で途中下車。7時間掛かる。
小池先生が煙草を吸おうとしたら、寝そべっていた金さんに「駄目!」と足で
煙草を蹴落とされた。やってくれます。これは流石にお嬢さん達も気が差した
のか、自分で自分のお腹を抱えてケラケラ笑う。
第一楽章を、明るく軽快なアレグロで始まった「センチメンタル漫遊記」は、
彼女達の身の上にはまだ明るく続いている。しかし私は笑いを合わせる元気も
無くなっていた。
確か保証人の話しから、必要な書類の一つとして戸籍を記載した住民票が要る
といったことが話題になったときだったと思う。小池先生が無国籍者になりた
いと言う。
いかにもコスモポリタンの小池先生らしい考えだが実際問題としては難しい。
第一パスポート無しでは、明日から中国にも居られない。無国籍、即ち全ての
束縛からの解放を願う男のロマン。
一見奔放豪快に振る舞っているこの先生の、この矛盾と葛藤は何処から来るの
だろう。小池先生とは中国で4年以上のお付き合いだが、お互い立ち入った話
しはしていない。
先生の心の襞を一瞬垣間見た思いがした。意外に寂しい人なのだ。
二人共無言で車窓の景色を眺める。
突然「長崎は今日も雨だった」の日本の曲が車内放送で流れて来た。
思わず個室内のボリュームを上げたら「喧しいから小さくして」と金さんが言
う。
確かにこの曲はピアニッシモで聞くほうが良い。車輪の音にかき消される寸前
までボリュームを落として、むせび泣くようなブルースに旅の感傷を重ねた。
「漫遊記」は哀調とともに幕を降ろそうとしている。
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┃旅┃は寂しかるべき
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唐土の地に「長崎の歌」聞きて心湿らす
渤海の明珠大連は、我が故郷長崎を結ぶ地なり
アカシアの並木道は、母と馬車に揺られしところ
卵石を拾いて海辺に遊ぶ
ときは流れり、人は去れり
潮騒かそけく、遠く病める妻の吐息を運ぶ
嗚呼、旅は寂しかるべき
= この稿:完 =
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┃★┃ 読後感アンケート結果。
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◇ 面白かった (^○^) -------------------------------- 10人 (67%)
◇ まあまあかな(゜.゜) -------------------------------- 4人 (27%)
◇ ツマラナかった(-_-) -------------------------------- 1人 ( 7%)
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┃★┃ コメントボードに頂きました感想。
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┌--------「気分は情報無限さん」
いやはや何と申し上げたら良いのか、本当に「センチメンタル漫遊記」でした
ね。
年代と国籍の差は如何ともしがたい様ですが、外国の方との接し方を考える上
で大変参考になるところの多いお話でした。
次回から始まるお話も大変興味深い内容なので、心して拝読したいと考えてお
ります。
それにしても不思議なのは、何故また中国の人は日本に留学したり日本企業で
働きたがるのですかね?
無論、日本人相手にアメリカに留学する相談などする筈が無いのは分かってお
りますが、ただ単に日本企業が現地に進出しているだけで、そこまで中国の人
が日本に関心を抱くものなのでしょうか?
└--------
▼
┌--------「けんさんから」
今中国人に一番人気があるのは、やはりアメリカではないかしら。
遣唐使の昔は、日本から命がけで留学しました。
日本に留学に来てくれるうちが花です。
そのうち、ロケット技術を学びに中国留学なんて寂しい話になって欲しくない
ですね。
中国旅行記、暫くネタが切れました。また仕入れてきます。
「中国人取調室見聞録」実は今日も、就学生の万引き事件で警察に行っていま
した。
日中友好の陰の部分ですが、出来るだけありのままに書いているつもりです。
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└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。

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