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┃ :中国への熱い思線: ――――――――――― by けんさん
┃ (けんさんの日中友好コーナー)
☆ センチメンタル漫遊記:その二 大連の巻 ―――――― 2003/12/24
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┃旅┃遊特急「遼東半島号」沈陽北駅8時発。
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「6時半にロビーに集合」と言ったら、金さんが「早すぎますよ!」と言う。
「貴女は北駅が何処か知っていますか」と意地悪く尋ねたら、勿論知らない。
実は私も昨年までのことしか知らないが、環状線工事とラッシュが重なると、
車が動かなかった記憶がある。私も年を取って走ったりは絶対にしたくない。
それに私は日本人だが、中国人の彼女達よりずっと中国を旅行している。
「常に余裕をもって行動する」は私のモットー。とにかく何が起こるか分から
ないのが中国なのだから。
ところが今日は10月1日国慶節。
殆どの企業が休みでラッシュもなし工事もなし。
タクシーはオールノンストップ。ーー7時過ぎには着いてしまった。
姜さんが「早すぎる!」と鼻を鳴らす。遅れて文句を言われるのは分かるが、
順調過ぎて文句を言われるのは片腹痛い。ーー子供は待つことが苦痛だ。
この子達も汽車は動く時間に乗るものと思っている。
早いついでに朝食をと、駅前の凱来ホテル(四つ星一流)の前にタクシーを停
め、洋式のバイキングを食べる。ーーこれが又失敗だった。
お勘定の時、財布を預かり会計を担当している金さんが「ひえーっ」と悲鳴を
上げる。一人78元(日本円約1300円)は安くもないが、内容的には高くも
ない。
しかし彼女は、大連のホテルと「歯ブラシを持って行くから少しまけろ」と、
そこまで努力してくれているのである。この一食で全てを水泡に帰してしまっ
た。申し訳ない。
第二楽章は一転して荘重なムードで、始まった。
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┃私┃達が乗車したのは発車数分前。
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座席指定のグリーン車だが、例によって皆適当に座っている。
そして例によって、先に座った方が偉そうにしている。最近は私の中国に対す
る好き嫌いもハッキリしてきて、これはどうしても好きになれないひとつだ。
だが延々と座席の交渉をするのはもっと嫌だから、苦虫を噛み潰した思いで空
いている席に座る。今日もこのまま我慢をするつもりだったのだが、それを金
さんが交渉して、小池先生と並びにしてくれた。
向かいの席が、偶然だが沈陽テレビで経済方面の解説委員をしている劉豊慶さ
ん。車掌が「貴方は沈陽テレビの劉豊慶さんですよね」と語り掛けたので、私
も知った次第。マスコミ関係の人らしく話題も豊富。
遼東半島一帯、中でも大連近郊の農家は年収入が3万元。(日本円約50万円)
都市労働者の年収が約6千元=日本円約10万円)だから豊かといえる。
主産業の林檎と梨畑の間に点在する農家はスマートで裕福さを象徴している。
一般に内陸農家は貧困で、沿岸部と内陸部の貧富の格差が改革開放経済のもた
らした負の産物としてクローズアップされている。
ここはかつて超特急アジア号が時速140キロで長春=以前の新京)大連間の
千数百キロを約8時間で結んだ所だ。
全車鶯色のスマートな車体は「東洋の貴婦人」の愛称そのものだった。
いま"彼女"は沈陽南郊外蘇家屯にある蒸気機関車博物館に身を横たえている。
残念ながらその保存状態はあまり良くない。"露天"に"雨曝し"だ。
今日はダイヤ改正の第1日だそうで、この列車も平均時速100キロまでスピ
ードアップされた。予定通りなら12時5分に着くはずだったのだが、到着を
間近にした11時半、三十里駅という小さな駅に臨時停車する。
劉さんが先頭車両まで行って見てきてくれたところによると、機関車が故障し
たらしい。駅員が消火器を持って動いている。さっきからずいぶん煙りを吹く
と思っていたが、ディーゼル機関がオーバーロードで過熱したのだ。
何が起こっても不思議でない中国で、早くも第一のトラブルに遭遇した。
トラブル慣れしているのか、或いは列車はお上に乗せて頂くものと諦めている
のか乗客は皆落ち着いている。車内放送も無い。
さすがに一時間を過ぎると私も少しイライラしてくる。
「日本では考えられない。少なくともどうなっているのか車内放送をすべきで
す」と私が言ったら
「そう、我が国の一つの問題点は、透明度です」と、マスコミに携わっている
人らしい返事が返ってきた。
「民は知らしむべからず。寄らしむべし」
とは言っても経済が開放された今、民は知る権利も主張するはずである。
列車は一時間半遅れで大連に到着。車内放送で、遅れた理由とお詫びの言葉が
流れる。劉さんが「当然です」とニッコリ笑う。
中国鉄道局も、乗せてやる列車から乗って頂く列車に変貌しつつあるのだ。
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┃宿┃舎渤海ホテルは、大連駅を降りて左、30階の大型ビルである。
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この建物が目立たないぐらい、周囲には大型ビルが林立している。
更に新築中のビルが遠望できるのを含めて八つあった。劉さんが経済解説委員
の立場から元の切り下げは無いと断言していたが、アジア諸国が不景気の中で
中国といえども例外でないはずだ。
このビルラッシュは何処から来ているのだろう。
荷物をホテルに置くと、とにかく大連の街に出る。地図を買って、その上に幼
い日の古い記憶をなぞらせていると、姜さんが「そんなもの、後で見て」と私
の記憶の糸を引き千切ろうとする。
はしゃいだ子供が、周りの大人を自分の遊びの中に引き摺り込もうとするあれ
だ。
埠頭の楕円形の建物、
長崎通いの船、
アカシアの並木道、
卵石を敷き詰めた浜辺。
誰にもあると思うのだが、「前後の脈絡がはっきりしない、背景のかすんだ絵
の数々の断片」。ーーそれはその人の最も古い記憶。
絵が飛び散らないように、私は急いで地図を押さえた。
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┃大┃連は上海と並ぶファッションの街でもある。
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駅前広場の横に韓国系の服飾百貨店があった。これを彼女達が見逃すはずがな
い。ちょっと気に入ったセーターが見つかり、早速試着室に入る。
彼女達の一人だけのファッションショーを、私は丸椅子に座り所在なく待つ。
続いて小池先生を交え、しばし値段交渉。やっと終わったと思ったらまた次ぎ
に何やら見つけたようだ。
もう私も我慢できない。
「6時までには宿に帰るから」とタクシーに飛び乗った。背景のかすんだ絵の
断片を拾い集める時間は一時間も無い。
「星海公園と、埠頭と、理工大学。あとは6時まで渤海ホテルに着けるよう好
きに走ってくれ」と運転手に告げる。
星海公園前の広場を、運転手君自慢する。
確かに規模も大きく美しいが、新しい物にはあまり興味は湧かない。車を待た
せて浜辺に降りる。平凡な海水浴場に過ぎないここには卵石なんか無い。
ところがなんという奇跡か?!、、埠頭にあったのである。
それも歩道の敷石の上に..60年間..私が来るのを待っていたように。
ーー母が置いてくれたのに違いない。私は拾い上げるなり思わず頬ずりした。
軌道電車や大和ホテルを始め、古いものも大事に保存されている。
運転手君は、まさに神風のように市内を突っ走り、約束の6時2分前にホテル
に着けてくれた。
「しまった、この素晴らしい運転手君にチップを上げていない」と苦い気持ち
を抱いたまま慌ててエレベーターに飛び乗り、部屋のドアを開けたら
「1分遅れたから1元の罰金!でも負けときましょう」と暖かい歓迎の言葉
が待っていた。
小池先生は卵石を見て「そんな物の何処がいいの?」と不思議そうにおっしゃ
る。
ーーもう私には弁解する気力も、説明する気力もなくなっていた。
荘重なムードで始まった第二楽章は、いま私の心の中で暗く葬送曲を奏でてい
る。
= この稿つづく =
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┃★┃ 読後感アンケート結果。
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◇ 面白かった (^○^) -------------------------------- 15人 (79%)
◇ まあまあかな(゜.゜) -------------------------------- 3人 (16%)
◇ ツマラナかった(-_-) -------------------------------- 1人 ( 5%)
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┃★┃ コメントボードに頂きました感想。
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┌--------「気分は情報無限さん」
只今失業中の野郎が申し上げるのも恐縮ですが、ロマンチックなお話になって
きましたね。
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▼
┌--------「けんさんから」
それが申し訳ない、ロマンチックな結末にはならないのでありました。
ーー題名もセンチメンタル漫遊記。ご期待に沿えず申し訳ありません。
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┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。

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