┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━┓
┃
┃ 中国ひとりぼっち: ―――――――――― by ブーザンさん
┃ ブーザンのホームページ(中国ひとりぼっち)
☆ 成都逮捕事件(3) ――――――――――――――――― 1995/05/26
−16
どれだけ待たされただろうか?
この部屋に入った時間を確認していない為分からなかったが、30分はゆうに
過ぎたと思われる頃、先ほどの刑事とは違う刑事が入ってきた。
肩から拳銃入れのホルダーを下げており、左脇に拳銃が見えていた。
その後から、一人の婦人警官と若い刑事が入ってきた。
まるで「太陽にほえろ」の一場面の様であり、また、「アンタッチャブル」の
ようでもあった。
−17
彼等のうち、婦人警官と若い刑事が椅子に座り、婦人警官は、手に事件調査表
のような書類とペンを持っていた。
若い刑事が椅子に座ってから、私の顔をまじまじと見ているのに気付き、素早
くそっちを向いて、ニタッと笑ってやったらビックリした顔で目を逸らせた。
拳銃を左脇に吊っている刑事は、立ったまま机の前を行ったり来たりしていて
落ち着きがないように思えたので「まー、椅子に座ったら・・・」と言ってみ
たが何の反応もせず、相変わらず行ったり来りを繰り返していた。
−18
その行ったり来りを突然止めて、いきなり
「今日の夜7時半頃、何処にいた!」と大きな声で聞いた。
この頃、簡単な中国語は聞き取ることが出来た。
私は夜7時頃から以降の出来事を順を追って話をした。
次に、
「アンタは中国人か?それともシンガポール人か?」と聞かれた。
この当時の私の中国語は、広東(地方)で覚えた中国語だったので、彼等が不審
に感じるのも無理はなかった。
−19
私は正直に「私は日本人です」と答えると、
「日本人が何故こんな時間に、一人で危険な場所をうろうろしていた?」
真にごもっともな意見である。
もし、うろうろしていなかったら、公安に誤認逮捕される事もなかった。
「アンタ本当に日本人か?」
「そうです」
「日本人なら、身分を証明するものがある筈だ!ここに出しなさい!」
しかしこの時、身分を証明するパスポートも中国居留証も持っていなかった。
−20
それは、2日後に広西省の桂林へ行く手続きの為に、全部旅行社に預けてあっ
た。この事情を彼達に話すと「ウソをつくな!」と、机を叩いて怒鳴られた。
身分を証するものを持っていないということで、彼等の疑惑に油を注ぐことに
なってしまったようだ。
その刑事はいったん外に出て、別の刑事を連れて戻ってきた。
その刑事の口の左側は異常に腫れ上がっていた。
「この刑事を、覚えているか?」
私は「覚えている」と言って、その刑事に手を上げ「やー!」と言った。
そのしぐさが、拳銃を下げた刑事の激怒を誘発してしまった!
−21
彼は、横に置いてあった椅子をいきなり持ち上げたかと思うと、思いっきり床
に叩きつけた。元々壊れかけていたような木の椅子は、大きな音を立ててバラ
バラになってしまった。
別の二人の刑事が、咄嗟にその行為を阻止した。
私は「日本語の通訳を、呼んで下さい」と、お願いしたが、
「こんな所に、日本語の通訳などいない!」と、また大きな声で怒鳴られた。
「弱い犬ほど、よく吠える」と日本語でぼそぼそ言ったところ、
「言いたい事があるなら中国語で言えー!」と、また大きな声で怒鳴られる。
以後、私は黙秘を決めこんで何も言わないようにした。
−22
目の前で、相変わらず刑事が吠え続けていたが、目を閉じて黙秘を続けた。
さすがの彼等も30分とは続かず出て行ってしまった。
しばし静寂の時間が過ぎ・・・・。
しばらくして「自宅待機をしていたのに・・何があったというんだ!」と、
ドアの外で声がした。
私には四川語は分からなかったが、説明でもしているような感じだった。
程なく、説明を聞き終わったのか、恰幅の良い50才くらいの年恰好の刑事が
部屋に入ってきた。そして、先ほどの刑事たちとは違って、実に丁寧な中国語
で話し始めた。
−23
「大体の事は、先ほど部下から聞いたのでその先に進みたい」
そこで私は質問をした。
「私はどうして逮捕されたのですか?」
後から分かったことだが、その人は刑事部長であった。
その刑事は私の質問には答えず、別のことを言った。
「実は、あなたと別れてホテルに帰った女性も別の部屋に連行してきてありま
す」「えっ!彼女も・・・?」
刑事は、彼女は只泣きじゃくるだけで話しを聞くどころではない、と言った。
「どうしてそんな事を・・なぜ彼女まで連行を・・?」
私は、驚くと共に彼女の事を心配した。
−24
街で絡まれていたのを助けて、一緒にコーヒーを飲んだだけなのに。。
刑事は彼女の泊まっている部屋に踏み込んで、彼女も私のように連行したのだ
ろうか? いろいろな想いが脳裏をかすめた。
刑事は、私が動揺しているのを察して、
「彼女は、事情を聞く為だけなので、婦人警官が行って手錠も掛けずに来ても
らっただけだから、そんなに心配することはない」と説明してくれた。
この刑事は、相当いろいろな事件を処理してきて、人の心が見抜ける人だと思
い、彼なら私の言う事を必ず分かってくれる筈だと感じたので話をすることに
した。
話をしている途中で先ほどの刑事が入ってきたが、刑事部長は
「私が呼ぶまで入ってくるな!」と彼等を追い返してくれた。
=つづく=
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――┘
└→ 感想や激励をよろしくお願いいたします。

|